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キングテレトリー  作者: フクツノタロウ
エングランド訓練所ー実戦編
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ハイコング戦 ~力の誇示~

ルークドが勢いよく前に一歩足を踏みしめた瞬間だった。

ウガアアアァァァ!!という大地を揺らすような咆哮を上げ、ハイコングは高く上空へ飛んだ。

いや、正確にはジャンプだったが、巨体が考えられないほど高い場所まで到達したので、ルークドには飛んだように見えたのだった。

その高さに到達するのも速く、運動能力は尋常ではなかった。


(あの巨体で・・なんて機動力だ・・!!)


ルークドは呆然とそれを見上げることしかできなかった。


ハイコングは高いところから両腕を上げて、脇を見せた。

そこから前回転を何回かして、回転の勢いをつけ、ルークドに向けてそのまま落下する。


ルークドは迫りくるハイコングに少しおののいていたがハッと我に返る。

後ろに大きくバックステップする。

ハイコングは落ちてくる途中だったのでその動きには対応できない。


ハイコングが両腕を地面に叩きつけると、ズドオオオオン!!という轟音と揺れ、風圧が発生した。

地面は破壊され、岩やがれき、砂などが周囲に飛び散った。


(こりゃぁ・・聞いてた以上だな・・・・即死級だ!)


ルークドは、その威力に圧倒されていた。

だがそれでも頭の中は冷静をなんとか保っていた。


ところがハイコングはただ上空から両腕を叩きつけただけではなかった。

衝撃波のような風がルークドのところまでズゴゴゴゴゴゴ!!という音を立てながら地面を削り、岩の波と共に一直線に向かってくる。

おそらくそれは土、風属性の複合魔法だった。


(!?)


その攻撃は範囲が広くサイドステップしても避けるのは不可能だった。

ドオオオオン!!という轟音と共に、ルークドに直撃した。

当たった時の衝撃、風圧でルークドの後方にあった森の木が数十メートルほどの距離まで縦ライン上に粉砕、倒木した。


ハイコングの攻撃で辺りは大惨事となった。

とてもたった一撃の攻撃とは思えないほどに破壊されていたのだ。

砂埃が大きく舞い、ハイコングは煙の中をじっと四足歩行の状態で見つめていた。


しばらく後に煙からぶわっと高い位置にあるハイコングの顔の前に何かが飛び出した。

炎の眼をしたルークドだった。

ルークドは直撃の瞬間、ファイアーメガインパクトをその衝撃波にぶつけて相殺したのだった。

それでも完全に相殺できず、ルークドはダメージを負っていた。


ルークドは高くジャンプした状態からハイコングの目を切りつけようとする。

だがハイコングの反応も速い。

片手でルークドをはたき落とそうとする。


その時、ルークドは切りつける動作をやめ、空中で体勢を立て直し、スモークスパークスを使って地面に着地する。

切る動作はフェイントだったのだ。


ハイコングは目にスモークスパークスを食らったため、二足歩行になり両手をブンブンと大きく払って、悶えていた。

また「ウガウガアアァァ!!」と鳴き声を上げており、苦しんでいるのは明白だった。

軽い催涙状態になっており、そこでかなりの隙ができた。


ルークドは、すかさず、スモークスパークスを放った位置に的確にファイアーブロウを放つ。

煙りに大きく延焼し、ハイコングの目の付近は火事になる。

ハイコングは、さらに苦しんでいた。


ルークドはダメージをある一点の箇所に集中させることを考えていた。

あくまで倒すことではなく、戦意喪失させることに徹底していた。

そしてできた隙に、ルークドはハイコングの足元に滑り込むように移動すると片足をシュシュシュ!と高速で切りつけていく。

血が飛び散り、剣の反射光が残像となって見える。

軽い攻撃に見えても、その一太刀はウルフなら真っ二つになるほどの攻撃だった。

それだけハイコングの肉厚さがあったのだ。


(これだけ切っても、皮を薄く切った程度にしかならない・・!!)


ルークドは、まったく手応えを感じなかった。

何十と切っても、ちょっとした切り傷程度にしかならないのだ。


ハイコングは目の付近の火事を両手でパタパタと重さで鎮火した。

目の周辺の体毛は焼けて、変色していた。

するとハイコングは、足下のルークドを踏みつぶすように軽くその場でジャンプした。


(・・・くっ・・限界か・・!)


ルークドはジャンプに気づき、足元から高速に抜け出した。

抜けたとほぼ同時にドスウウウウウンと重い巨体が着地し、衝撃と風圧、砂埃、煙を発生させた。

ルークドはその衝撃で吹っ飛ばされて、地面にドサッ!・・・ドサッ!・・ザアアァァと2回ほど地面に叩きつけられて転がった。

すぐに立ち上がるが、服のよごれが戦闘の激しさを物語っていた。


(足の筋を切断できると思ったが、固すぎるな・・ならどこを狙う・・。)


ルークドは目を動かし、ハイコングの体をなめ回すように見ていく。

その間も、ルークドの頭の中は常に先を読んで予測していた。


「もっとも目立って・・もっとも狙いやすく・・もっとも戦意喪失させやすい部位があるじゃねーかよ。」


ルークドは突破口が見いだせた喜びで思わず笑いながら言った。


そして砂埃が完全に晴れると、ハイコングは動き出した。

ハイコングはその巨体ゆえに、小さいルークドを捉えずらかったのだ。


(そうだ・・一瞬でいい。一瞬の隙を作れるなら猿まねでもやってみる価値は・・!)


ハイコングがルークドに向けて、拳を作り、トンカチのように上から叩きつけた。

ハイコングは拳がルークドをつぶしたと思い、達成感からわずかに硬直していた。

だが拳につぶされたのはルークドの残像だったのだ。

その時、すでに実体のルークドは腕を走って駆け上がっていたのだ。


(よし!うまくいった!)


ルークドは訓練最終日のライネットの最後の残像の猿まねをしたのだ。

完成度は低すぎるが、魔物相手だからこそ通用したのだった。


ルークドがハイコングの肘関節より上に来ると、高くジャンプした。

その時、ちょうどハイコングは、パチン!とハエを叩く時のように自分の腕を駆け上がってくるルークドを片方の手で叩いていた。

だがルークドはすでに滞空中にいる。

これが意味することはハイコングのすべての動作がワンテンポ遅れていた。

やはりこれは残像の効果だった。


「もらったぁぁぁ!!」


ルークドはその勢いのまま角を切る。


ガキンィン!!


「くっ・・!!」


しかしまったく切れず、弾かれてしまう。

その瞬間、ルークドは極限の集中状態に達した。

ルークドの眼はより強い炎のように色が変化し、やや光っていた。また体も熱を帯びていた。


(切ってだめなら・・・)


ルークドは空中で体勢を即座に立て直し、ブゥンブゥンと2回転ほどすると再度攻撃を試みる。


「叩き切る!!」


ルークドは渾身の力で、振り下ろした。

するとスパァァン!と角をいとも簡単に、切り落とした。

ドオォン!!と角が落ちると同時にルークドは地面に着地すると、すぐにステップでハイコングから距離を取る。


すると戦闘を始める前みたいにお互いにらみ合いが続き、ちょっと前では考えられないほど静かになった。

ルークドは構えており、汗が流れ落ちる。


10秒ほど後、ハイコングは四足歩行に戻り、ルークドにケツを向け、ドン・・ドン・・ドン・・と立ち去って行った。


それを見たルークドは力が抜けるように剣を手放して、ドサッと後ろへ倒れた。

眼の色も戻っていた。


「ふぅーー危ねぇ、危ねぇ・・。さすがに今のはやばかったな・・・。」


ルークドは大の字になって空を仰いでいた。

ハイコングが立ち去ったしばらく後、勢いよく、跳ね起きをする。

剣を拾い、鞘に入れる。

ハイコングの姿は消えていた。


「さて・・どうするか。マリとヤンはどこに行ったんだ?」


ルークドは少しの間、考える。


「まぁ・・目的地は同じだし、そこに向かえば会えるだろ。さぁ・・・メシメシ。あの鳥でも焼き落とすか。」


ルークド、マリ、ヤンの3人の考えることは同じだった。

それだけ一体感が芽生えている証拠だったのだ。




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