捜索
「おかしい・・・・。いくら何でも遅すぎる。」
ヤンはマリがいつまでも温泉から帰らないことに異変を確信していた。
ルークドはあれからまだ爆睡していたが、いびきは止まっていた。
そんなルークドをヤンは一瞥する。
(今のルークド殿なら仮に襲われても反応できるはず。まず、マリ殿の安否を優先するか。)
ヤンはそう思うと、走って洞窟を出て行った。
たき火はすでに消えていた。
ヤンはまず、温泉を探すことにした。
(洞窟からすぐ近くとは言っていたが・・・。)
ヤンは洞窟の周りをくまなく探す。
するとしばらく探していると何かが落ちていた。
ヤンはそれに歩いて近づいていく。
「・・マント?」
手で拾い上げ、より詳細に確認する。
(・・・この破れ・・何か勢いよく切られた後だ。)
それだけしか情報が得られず、地面にマントを置いた。
(・・・にしてもさっきからどこか遠くから音が聞こえるような・・。魔物たちが争ってでもいるのか。)
そして何気なく周辺を見渡す。
「はっ!!この矢は・・!」
複数の矢が地面に刺さっていた。
その矢を1本、1本確認する。
(間違いない・・・昼間のと同じ矢だ。やはりここで戦闘が・・!)
ヤンはそこで顔を正面にあげると、温泉も発見した。
「これか!」
ヤンは急いで温泉に走っていく。
「マリ殿!・・・マリ殿!無事か!」
ヤンは大声で響かせるが、なにも反応はない。
(いないのか・・!?では一体どこに・・!)
温泉にも誰も入っていなかった。
ヤンは岩陰など温泉の周囲をくまなく確認する。
「マリ殿!・・・マリ殿!・・・いたら、返事をしてくれ!」
ヤンの声がむなしく響く。
その時、木に刺さっている矢を発見する。
「ここにも矢が・・・!」
ヤンは急いでその木の近くに行き、確認する。
その時だった。
ヤンの後ろの遠くの森で発光した。
ヤンはちょうど木に刺さった矢を見ていたので、そっちの方向には背を向けていた。
(ここにこの方向で刺さっているということは・・・。放った人物の向きはおそらく拙者が立っているのと同じ。
では逃げるなら逆!・・・マリ殿はこの先の森林をまっすぐ逃げた!)
ヤンがそう推理したのは実際マリがいる位置の正反対の方向。
東に対する西だった。
「持ちこたえてくれマリ殿!・・・」
ヤンはそのまま逆の森に急いで入っていく。
それはマリとの距離がどんどん離れていくことを意味していたのだった・・・。
「ハァ・・ハァ・・ハァ・・ハァ・・ハァ・・・・。」
ヤンは全力疾走していた。
何も手がかりも見つけられないままずっと走って行く。
マリが逃げた方向と確信して。
走り続けていると夜が明け、朝日が昇り始めていた。
走り続け、遂にヤンは止まって膝に手をつき、大きく肩で呼吸する。
汗だくだった。
(あれからまったく何も見つからないし、感じられない。本当にこの方向で合っているのか・・。)
ヤンは必死に考える。
歩きながらさらに進む。
もはやルークドのいる洞窟からも離れすぎたため、洞窟にも戻れなくなってしまっていたのだ。
しばらくするとその森林地帯を抜け、開けた川辺に出た。
大きな川に川砂利で空が広がる。
日はもう上がっており、朝になっていた。
ヤンはとりあえず、落ち着くために川で汗まみれの顔を洗う。
(もしや・・さっきの矢は関係がなかったのかもしれん。狩人や村民が獲物を捕らえるために放った・・。
落ちていたマントも仕留めそこねて反撃を食らってしまった時に・・。
そう考えると、昼間のあの襲撃も拙者たちを獲物と間違えて放ってしまったものだったのかもしれんな。
そしていざ、確認してみると人だったので、その罪悪感から立ち去った。
これならすべてに納得がいく。最初から敵など・・。拙者たちの勘違いであったとケリー殿にも報告しなければ。)
川の水を手で汲んで飲む。その動作を6回ほど行う。
(じゃあマリ殿・・は。・・・そうか!拙者たちはあの時、マリ殿を怒らせてしまった。温泉に入った後マリ殿はそのまま1人単独行動を取ったのかもしれん。そしてそのまま、村に向かったと。)
ヤンはそう考えながら喉を潤す。
(ここまで来てしまった以上、ルークド殿のいる洞窟に戻ることは困難か・・。
戻っても大幅な時間を食う。それにハンス殿が言っていた川はこれだろう。この川を沿って歩けばゲンエイガハラ村に着く。)
ヤンは立ち上がり、何かを決める。
(はぐれてしまった以上、この樹海で合流するのは難しい。だが目的地は同じだ。
その目的地にいけばかならず会える。きっとルークド殿もそう考えるはずだ。)
ヤンは地図とコンパスを出して1度確認してから、またしまう。
(ルークド殿を驚かせてしまう結果になってしまったが、拙者もこのまま1人で目的地に向かうとしよう。
やれやれ、マリ殿にも後で会ったら注意しなければならんな。
すまん!ルークド殿も何とか村にたどり着いてくれ。)
そしてヤンは川沿いに歩き始める。




