気配
ルークド、ヤンの2人が洞窟で話をしている一方マリは、温泉に1人入っていた。
日もすっかり落ちて、月明かりだけが樹海を照らす。
「~♪~♪~♪・・・」
マリは上機嫌で鼻歌を歌いながら入浴していた。
温泉は湯気が濛々としていた。
「にしてもいい湯ねぇ~・・・今日の疲れが取れて満たされるわぁ~・・・にしてもどうしてこんなところにあるのかしら。
これが秘湯ってやつ・・?」
完全にリラックスしているようだった。
マリは背伸びをし、体を伸ばす。
美しく豊かな体が湯から、露わになる。
「はぁっぁ・・んぁっっ~・・・・・あいつらも入ったらよかったのになー。」
静かな時がしばらく続く。
マリの体はかなり温まり、顔が赤くなっていた。
そしてちょうどその時だった。
温泉に誰かが寄ってくる。
その気配をマリは感じ取る。
(誰か・・近づいてくる・・?)
マリは感覚を研ぎ澄ました。
温泉という水の集まりの近くなので魔法力も高まっていた。
(まさかとは思うけど・・・いや、そんなこと・・。)
マリはいろいろとあれこれと考える。
(ヤンはどうみてもそういうタイプじゃないからありえないし・・。じゃあ、ルークド・・?
あいつぅ、あんな澄ました顔で言ってたくせに、やっっーぱり!興味があったのねぇ~。
はぁ・・・そうよねぇ~・・この私が入浴することに沸き立つ衝動を抑えることなんてできないはずだわ。)
気配はかなり近づいてくる。
(気づいていないと思っているのかしら・・。いいわ、その度胸だけは認めてあげる。
でもルークド。あんたが私の裸を見ることなんて百年早いわ・・!)
こちらに向かってくる気配の方向にマリは向き、その時に備える。
そして茂みから人影が現れると、マリは手で体の隠すところは隠し、堂々と立ち上がる。
バシャーンと勢いよく、湯が飛び散った。
「ルークド!!あんたやっぱ・・・(違う!・・・ルークドじゃない!!)」
マリは咄嗟に体を隠していた手をその人影に向けてアイスクルを放った。
だがすでに遅かった。
マリは人影から放たれた高速の物体が自分の体に異変をもたらしたことを感じた。
視線を異変を感じる部分に向ける。
マリの眼に映ったのは自身の体の心臓部分に矢が貫いて刺さっている光景だった。
(・・!?)
それだけしか理解できなかった。
矢が刺さったマリの体は、そのまま後ろに温泉の湯の中へと倒れ込んだ。
ザアァーーン!!と大きく波が立った。
それは誰の目から見ても絶命した瞬間だった。
そしてそのフード付きのマントを着た人影は温泉へとゆっくりと近づいていく。
死体を確認するために。
温泉の石垣部分に立つと、マリが倒れ込んだ辺りを見る。
そこには胸に矢が刺さったマリの死体が浮かんでいた。
「・・・・・・・・・・。」
だがその人物はじっーーと浮いている死体を見ていた。
何かがおかしい。
自分の目の前に死体はある。心臓を貫かれ、確実に死んでいる。
それは明白。
だけど本来なら写るはずのものが自分の眼には映らない。
(・・・・!!)
ちょうどその異変に気づいた時だった。
ズウウゥザアアアアァァァン!!
温泉で突如、水が大爆発した。
石垣部分に立っていたフードをかぶった人物はそれを食らって大きく吹っ飛んでしまった。
土の地面へとドサッ!ズザザッ!と派手に転がる。
その衝撃により、フードが脱げ、顔が露わになってしまった。
吹っ飛んだ人物は何が起きたのか理解できなかった。
体に痛みが走る。
とりあえず急いで、手から落ちた弓を取ろうとした時だった。
「まさかこれでホントに現れるとはね。」
どこからともなく声が聞こえてくる。
周囲をキョロキョロと大きな動作で見渡す。
すると温泉のすぐ傍にある岩陰から姿が現れた。
それを視界へと捉える。
(・・・・!!!)
フードを脱がされた人物は驚きのあまり口を開けるしかなかった。
その岩陰から現れた人物は間違いなく、今さっき自分が矢で心臓を貫いて殺した相手。
見間違えるはずもない。
動揺のあまりその人物に向かってアイコンタクトをし、声を上げてしまう。
「どっ・・・どうしてっ!?」
そう岩陰から現れた人物、それはさっき死んだはずの・・・・・マリだったのだ。




