高みの見物
ルークド、マリ、ヤンの3人に指令が下された日、3人は指令室を出ていった。
部屋にはノルス、ライネット、イーサン、ケリーの4人が残った。
ノルスは椅子に座ったまま、机に肘をたて、手のひらを組む。
重々しい空気だった。
「ケリー君、他の勢力の状況はどうかね?」
「(キング)シールドは依然動きがありません。(キング)ソードはうちと同じように戦力を増やしており活発的です。ブラックヤードは相変わらず動きが掴めず、そして(キング)リーパーはやりたい放題といったところでしょうか。幹部、兵隊にかかわらず好き勝手に行動している模様です。」
ケリーのいつものテキトーさはなく、真面目な雰囲気で伝える。
「わかった。引き続き調査してくれ。」
「はっ」
「・・・にしてもシールドの動きの無さは、やはり戦力差の余裕によるもの・・か。」
イーサンが呟くように言う。
「まぁ・・無理もないかね。シールドの戦力は我々とソードを合わせても、数十倍以上。
おそらくこちらから仕掛けない限り、傍観し続けるだけだろう。
何もしなければシールドの不戦勝ということだ。」
「しかし・・何かをこちらが仕掛ければ圧倒的な物量で潰される。
何か策・・例えばこの際、ソードと同盟を組むというのはどうだ。」
ノルスとイーサンの会話は続く。
「私はかまわないが、”やつ”は私を嫌う。
元キングテレトリー軍総統であるというのはまさに保守の象徴、つまり革新とは遠い。
それに、ソードはキングテレトリーが侵略されたことに関して無関心だ。
いや、そもそも、もう一つ世界があることすら半信半疑だろう。」
「・・確かにそれはそうだ・・・な。」
イーサンは腕を組んで、珍しく困った素振りを見せる。
それを見たノルスは前のめりになって改まって言う。
「・・・・・だが全く方法がないわけではない。」
そう言うとノルスは椅子から立ち上がり、背を向け大きい窓から景色を見る。
「話は変わるが、3人とも随分いい感じに仕上がったのではないか。」
「私の教育もあったもんです。感激もんです。」
ケリーがさっきの真面目な雰囲気からいつもの感じでユーモアを含んだ言い方で返す。
「あの様子なら実力的にも申し分ないだろうな。後は実戦での成長を期待といったところか。
ただ、まずこれを乗り切れたら、だが・・・。」
イーサンが付け足すように言う。
「乗り切らなければ、いずれにしろ死ぬだけだ。
ここで3人の実力、存分に見させてもらおうかね。君たちも手出しは無用だ。」
「やっぱり今回の指令は3人を試すものだったんですねぇ~。ゲンエイガハラ村の保護下はそんなに重要じゃない案件でしたから。」
ケリーが言う。
「うむ。そういうことだ。」
「ノルス指令。だからルークドたちにこの案件を下したのですか。罠である可能性が高いのでは・・!」
ライネットが突然、口を挟んだ。
ノルスが顔をライネットのほうへ、やや向ける。
「うむ?急にどうしたかね。君らしくもない。私もそれぐらいはわかっている。
ただ何度も言うがこれぐらい乗り越えなければこの先も無い。そうじゃないかね?」
「そ、それはそうですが・・・ただ・・。」
「情が移ったか、ライネット。心配か?」
ノルスの視線は鋭く、気迫があった。
「・・・・・・・。」
ライネットは何も言うことができなかった。
「ルークドがここで死ぬようならば、新たにナイトの血を引くものを探すだけだ。
ここで死ぬようならば・・・・な。」
ノルスはそれだけを言うと、また窓のほうへ顔を向けて遠い景色を見る。
そのノルスの茶色いコートの後ろ姿を見て、ライネットは物思いにふけていた。
(大きな目的を為すためなら犠牲をいとわず、必要ならば悪そのものにもなる。
その性格は幼い私を訓練していた時から変わらない。
ノルス総長・・いえ、ノルス総統。あなたの強すぎる力に私は・・・・時にどうしていいかわからなくなってしまう・・・・。)




