戦闘訓練Ⅴ ~真剣勝負~
訓練最終日、いつも通りに和風の剣士の服を着て、ルークドとライネットは道場にいた。
まだ訓練が始まる前だった。
「少し早いかもしれないけど・・・ルークド、この3ヶ月間よくがんばったわ。まさかやり遂げるなんてね。」
ライネットは軽く笑みを浮かべた。
「ヘヘッ・・そう言われるとうれしいな。」
「そして今日が最後。最後の訓練は私と真剣勝負をしてもらおうと思うの。」
「んじゃあ・・今までやってきたことの復習て感じか・・。よし!いいぜ!」
「いえ。魔法を使わないことを除けば、今までみたいに戦闘スタイルは問わないわ。だからあなたの得意な”力”も使ってもけっこうよ。」
「魔法を使わない以外は自由ってことか・・・わかった。」
「じゃあ、準備はいい・・?ルークド。」
ライネットはそう言い、木刀を構える。
「どれだけ成長したか見せてやるよ・・。ライネット!」
ルークドもまた木刀を構える。
そこで道場の空気が変わり、静まりかえる。
先に動いたのはライネットだった。
ルークドとの距離を一瞬で詰め、最小限の動作で突きを繰り出す。
それは見かけによらず、すさまじい威力で軽く風圧が発生する。
ルークドは不意を突かれたが紙一重で避ける。
(い、一段と速い!)
ルークドは避けた後、すぐに切り払うようにライネットを攻撃しつつ、後方へステップする。
ライネットもルークドの攻撃を身軽に避けた。
両者は、ほどよい距離を取り、構え直す。
ピタッと動作が止み、とても戦闘とは思えないほど静かだった。
だがそれは決して、お互い手を抜いているわけではなかった。
相手の動きを読み、自分の次の動きを決める。
どのように攻撃をし、どのように避け、どのように受けるか。
動いた後に展開はどのように流れるのか。
スキはあるか。呼吸はどうか。筋肉の動きはどうか。
その1つ1つを頭の中で展開し、思考する。
それがこの時間が止まったような間の正体だった。
ルークドは今までのように直感的に動かなかった。
戦闘における達人の剣士の思考を今までの訓練により、無意識のうちに会得していたのだった。
思考し、お互いに先を読む。
早く読めたほうが先に動けるのは明白で、盤上における対局そのものだった。
「スウウゥゥゥ・・・ハアァァァァ・・・。」
ルークドは深呼吸をすると、ライネットとの距離を一気に詰めた。
そして木刀でスッスッスッスッと素早く、流れるように、スキがなく攻撃する。
だがライネットはすべてかわした。
ルークドは両手を高く上げ、大きく垂直切りを試みる。
ルークドの胴体ががら空きになったのを確認したライネットは水平に切りつけようとする。
ルークドの読みどおりだった。
頭より高い位置に木刀を持ったまま、足をうまく使い、水平に入る木刀を紙一重でかわせるぐらいに後方へスライドするように移動した。
しかしライネットもまた、水平切りに入った動きを戻すように変え、木刀を下から上に、切り上げるように攻撃を繰り出す。
カアァン!
ルークドの頭上からの振り下ろし最中だった木刀に当たり、木刀はフゥン、フゥン、フゥンと回転しながら空中へ飛ばされた。
(ライネットの速さが俺の読みを超えたか・・・!)
勝負ありと思われたその瞬間、ルークドの中で訓練で培った”変化”と、これまでの”力”が交わり、電撃が走るような感覚を覚える。
それは極限の集中状態がもたらしたものだった。
(・・・・いや!!)
ルークドはライネットへ足蹴りを繰り出す。
「・・っ!?」
ライネットは胴体を蹴られ、後ろへ吹っ飛んだ。
そしてルークドは即座にジャンプして、木刀を空中で掴む。
着地と同時に全身に力を込める。
立ち上がったライネットとの距離を滑空するように詰め、全力の一太刀をお見舞いする。
ブゥゥオオオォォォン!!!パキキッ!
木刀と木刀がぶつかり、ものすごい風圧が発生する。
2人は鍔迫り合い状態になる。
ルークドはそこからさらに力を込める。
バッッキィィ!!
ライネットの木刀が耐えきれず、割れて、折れる。
ルークドは折れた木刀へと目線を移した。
「続けて!」
ライネットの声を聞きルークドは目線を戻し、そのまま切り下ろした。
だがライネットは受け流すように後ろへステップしたため、ダメージはなかった。
ライネットはそのまま壁に掛けてあった木刀を手に取り、前に向き直す。
取ったと同時ぐらいにルークドは突き刺しで突進をする。
ドゴゴゴォン!!
ルークドの木刀が勢い余り、壁へめり込んで刺さった。
ライネットは紙一重でよけ、ルークドの側面へと移動した。
だがルークドはそのまま壁に突き刺さった木刀を、壁をゴゴゴゴゴゴ!!と削り取るように動かし、そのままライネットに水平切りをする。
がれきや石が同時に飛んだ。
すでにルークドは遅かった。
ルークドが見ていたのは残像だったのだ。
その残像は本当にそこに実体があるように見え、スピードから生まれた残像ではないことが、ルークドはすぐに理解できた。
ルークドの水平切りはその残像を切りつけ、ブワァと消える。
(い・・今のは・・!?)
そう感じた瞬間、首に痛みを感じる。
「勝負あり。そこまで。」
ルークドの首に擦れたような切り傷があり、手で触ると血がべったりついていた。
「・・・・はぁ~まいった。まいったよ。」
ルークドは笑みを浮かべながら言う。
緊張の空気から和やかな空気へと変わる。
「お疲れ様、ルークド。訓練の成果しっかり見させてもらったけど十分、合格ね。」
「やっぱり実力試しも兼ねていたんだな。今までと全然違うから焦ったぜ~。はぁ~疲れた~。」
「えぇ。訓練の時よりは力を出させてもらったけど、ちゃんと対応できていたわ。」
「にしても、ライネットは強いな。俺では勝てる気がしないぜ。」
「いえ・・・・私なんて・・姉さんに比べたら・・。」
ライネットは目をそらし、呟くように言った。
その時だけ、何か雰囲気が違ったようにルークドには見えた。
「へぇ~ライネットに姉がいたんだな~。やっぱり強いのか・・?」
「・・・・えぇ・・まぁね。・・それより明日からは1週間は休暇だから、しっかり体を休めて。
休暇が終わった後は、早速、実動としての指令があるからノルス指令のところに来て。」
「おぉ!いよいよて感じだな・・。」
「私はここの、後始末のために呼んでこなくちゃ・・・。それじゃあね。
それとルークドは絶対、私より強くなれると思う。」
それだけを言い残し、ライネットは道場を出て行った。
ルークドは1人になりさっきの戦闘を振り返っていた。
(木刀で皮一枚切るような精密さ。そして・・最後の残像。魔法抜きだし、さらにまだ余裕がありそうだったな。)
ルークドは心底、12の有識の強さを思い知る。
(にしても・・・ライネットの姉かぁ・・・。姉を口にした時の、どこか遠くを見ているような感じ・・。)
「・・・まっ、今考えても仕方が無いな。とりあえず、飯にするか!」
ルークドは道場を後にした。
ここまで読んでいただきありがとうございました!
これにて「エングランド訓練所ー訓練編」は終了です。
番外編は書こうかなと思っています。




