総評
次の日、ルークドたちはイーサンに言われたとおり、大講義室に集合した。
ルークドたちは席に座り、イーサンは壇の上に立っていた。
「ではこれからのそれぞれの訓練プログラムを、俺の分析と共に言おうと思う。
まずロウ=ヤン。」
イーサンはヤンに視線を向けて話しだす。
「すでに闘気の完成度は高く、闘気自体については完璧と言えよう。
さらに闘気を使った攻撃の型、すなわち自分のスタイルもすでに確立しており、技も文句なしだ。
さすがにずっと修行していたことだけある。」
イーサンは淡々とした口調で話す。
「だが、組み手感覚がまだ抜けておらず、実戦向きの戦い方ではない。
例を挙げるなら闘気の使い方、配分など考えられるな。
さらに付け加えるなら闘気を使った飛び技がないことも挙げられる。」
ヤンは粛々と受け止めて、頷いていた。
「今後の訓練は野外演習場で俺とひたすら戦い実戦経験を積んでもらう。
その中で闘気を使った飛び技も、自分で編み出し習得してもらう。いいな?」
「押忍。」
ヤンは気合いが入った返事をする。
「次にマリ。」
イーサンはマリへ視線を向ける。
「複数の武器や道具を使い相手を翻弄する戦い方は中々よくできている。
十分実戦でも通用するだろう。
動きも滑らかでしなやか、なのも評価できる。」
マリはルークドのほうを見て、何か自慢げな表情をする。
(・・・なんだ?)
ルークドには伝わらなかったようだった。
イーサンは話を続ける。
「ただ水の魔法は一般的にはもっとも幅広い扱い方ができ、柔軟性がある属性だ。
魔法の扱いにはまだ一歩足りない。
さらに水の属性から派生する氷の魔法を習得していないのは問題だ。」
それを聞き、マリは微妙な表情をする。
「今後の訓練はオックス教授から教わり、魔法への理解を深めてもらう。
簡単に言うなら勉強だな。いいな?」
「わ、わかったわ・・・。」
そしてイーサンはルークドに視線を向ける。
「最後にルークド。・・・正直に言おう。
お前はこの中で一番強い。」
「拙者も同じくそう思う。」
「ぐっ・・!!」
そのイーサンの言葉にヤンとマリは反応する。
だがルークドは冷静だった。
「爆発的な攻撃力に圧倒的な魔法力。相手を押し切る力。お前の誇るべき強みだ。」
イーサンは続ける。
「そう、それ自体はすばらしい・・・圧倒的な力で相手をごり押しする。
だがこんな戦い方ばかりではこれから先、命がいくつあっても足りない。
いつもギリギリで綱渡りのような戦い方では駄目だ。
それは自分自身が一番わかっているんじゃないか?」
ルークドはそう聞かれ、過去の戦いの記憶がフラッシュバックする。
「訓練でお前には別の視点から戦闘を把握してもらう必要がある。
そのために訓練中は一回、今の力を封印して、別の戦い方も学んでもらう。
他のものを知ることで今の自分をより深く理解できるようにするためだ。」
イーサンは続ける。
「今後の訓練はヤンと同じく俺と戦い・・・・と言いたいところだが昨日ちょうどライネットから申し出があってな。
ライネットが担当だ。なので後はライネットに任せてある。」
「わかった。」
イーサンは正面を向き直す。
「明日からは各個人の課題と向き合うことになる。お前たちはもっと強くなれるはずだ。素直に弱点を認め、引き続き精進しろ。・・・・よし!では今日は解散だ。」
その後、珍しく3人とも喋ることなく、それぞれ大講義室を後にした。
3人とも自分の指摘された点について考えていたのだった。
午後の学科はケリーの声だけが響き渡った。
その日の夜、ルークドは入浴を済ませて部屋に入る途中にちょうど、ライネットに会った。
「ルークド。どう?ここにはもう慣れた?」
「あぁ、みんなとうまくやってる。」
(ある1人を除いて・・・な。)
「そう。それならよかった。」
「あ、そうだ。明日からライネットが俺の訓練担当になるんだよな?頼むぜ。」
「えぇ。・・・・・明日は道場に集合して。場所はわかる?」
「最初の時、案内してもらったところだな。そこに集合だな。わかった。」
ライネットは軽く会釈する。
「じゃあまた明日ね。おやすみ。」
「あぁ・・・おやすみ。」
そう言うとライネットは自分の部屋へ入っていった。
ルークドは今日のイーサンの指摘で昨日、ライネットが言っていた力ではなく変化という意味が少しわかったような気がした。




