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キングテレトリー  作者: フクツノタロウ
デサン村編
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ルークドの記憶Ⅲ ~デサン村の悲劇~

この話は「デサン村」の番外編となる話です。

(ワァーウルフ。あの日、デサン村に悲劇をもたらした危険種指定の魔物。

ウルフは基本群れで行動するがワァーウルフは単独で行動し、魔法も使える知能がある。

一説にはウルフが人の味を覚えた時に突然変異し、ワァーウルフになったと言われている。

黒い毛並みのウルフ・・・。今でも忘れない。

デサン村を襲って大事なものを奪い、そして女の子のアリーですら狩りをやらざるを得なくなった原因だ。

あれは確か、俺が10歳の時だったか・・・。)


ルークドは鮮明に回想し始める。






コンコン


「はーい!」


アントワネットがノックされた扉へ、食事の手を止め、開けに行く。


ガチャ


扉を開けると、そこそこ歳をとっていてキングテレトリー軍の兵士のアーマーを装備した人物が立っていた。


「あら、オーガさん。こんな夜中にどうしたんです?」


「ああ、アントワネットさん。突然こんな夜中にすいませんね。至急の用件なもんで・・。ドンゴさんはいらしゃいますか?」


「いますよ、今呼びますね。・・ドンゴさん!オーガさんが用があるって。」


アントワネットとドンゴが交代するように移動する。


「オーガさん、こんな大雨の中・・。とりあえず中に上がりますか?」


「いえ、すぐ終わりますので・・。ワァーウルフの件で少し・・。」


オーガは扉を半開きのまま、ドンゴに耳打ちするように小さな声で言った。


「オレ、少しオーガさんと話があるから、先に食べておいてくれ。」


ドンゴは食卓を囲んだアントワネット、ルークド、アリーに向け言い、大雨の中にも関わらず外へそのまま出て行った。


「ねぇ、今の人て誰?」


ルークドがアントワネットに聞いた。


「あの人は私たちの安全を守ってくれるおまわりさんよ。」


「へー、じゃあいい人なんだね。」


「えぇ!もちろんそうよ。ただ・・・。」


「どうかしたの?」


「ううん。なんでもないわー。さぁ食べましょ。あっ!お代わりする?」


「うん!するー。」


キングテレトリー軍デサン村治安部隊であるオーガが至急の用件でドンゴを呼んだことにアントワネットは何か不安を感じていた。

根拠はないし、確信もない。だが日が経つたびにアントワネットの不安は増していったのであった。



それから数日後。


「よーーし!今日は気合い入れないとな!!じゃあアントワネットさん、行ってきます!ルークドとアリー頼みます!」


「ドンゴさん。今日は森の深くに行って大人数で狩りを行うと聞きました。さらにその中にはオーガさん含む軍の治安部隊まで含まれていると・・・。何か私に隠していること・・とかありませんか?」


アントワネットは珍しく、いつもと違い真剣な表情だった。


「ガハハハハハ!!なーーに、ただの大規模狩猟てだけですよ!この時期、なんつってもウルフの繁殖期ですからね!心配いりません!ウルフ相手ならいつもと変わりませんよ!」


「そ、それならいいのですが・・・。何か嫌な予感がしてしまって・・つい・・。」


「大丈夫です!それにオレは頑丈ですからね!・・・それでは!」


「わかったわ。気をつけてね・・・ドンゴさん。」


ドンゴはいつものハンマーを持って、会釈して、狩りをしに出て行ったのであった・・・。



そしてその日の夜。

いつもなら狩りから帰っているドンゴが今日は夜になっても帰らなかった。

待ちくたびれ、おなかが空いたルークドとアリーは先に夕飯を食卓で食べていた。

アントワネットは不安で仕方がなく、食べることができなかった。


「それにしてもお父さん今日おそいねー。」


「ドンゴの事だし、どっかでそのまま寝てたりなー。」


「えーー。お父さんでもさすがにないでしょ。ねっ?アントワネットさん?」


アリーとルークドは気軽な会話をしていた。


「・・・・アントワネットさん・・?」


アリーは、反応がなかったアントワネットに心配そうに声を掛けた。


「・・・え、えぇ、そうね。私もさすがにそれはないと思うわ~。」


アントワネットは不安を押し殺し、無理矢理に笑顔を作り、アリーとルークドに見せる。


そしてその時だった。


ドンドンドンドン・・ドン!!!


扉がいつもより大きい音でノックされた。


「ほ~ら、噂をすれば帰ってきたわ!」


アントワネットはドンゴが帰ってきたと思い安心して、扉に向かい、ドンゴを迎える。


ガチャ


「ドンゴさん。今日は随分おそ・・・キャッ!」


その驚きの声にルークド、アリーも扉のほうへ向き、反応する。


ノックした人物はドンゴではなかった。

血まみれの村民だった。


そして血まみれの村民はそのまま大きな音を立て倒れ込み、虫の息の中、最後の力を振り絞って、驚きで硬直しているアントワネットに何かを伝えようとする。


「に、に・・・・げ・・ろ、・・う・・・・る・・ふ・が・・ぁ・・。」


村民はそこで息絶えてしまった。

家の中にいた3人はその光景を理解できず止まっていた。

そしてその時。


「きゃあああああああああああああああ!!!」


悲鳴が村中に響き渡った。

その悲鳴に3人は我を取り戻し、アントワネットは咄嗟にルークド、アリーの手を引っ張って、家の外へ出て確認する。


まず目に飛び込んできたのは村民が首に食らいつかれながら倒れ込む瞬間だった。

そしてその倒れた地面には血の海、死体が3人から遠い奥の方からすぐ近くの手前まで広がっていた。

1人倒れると、こちらへ逃げ、向かってくる人が、また1人・・1人1人と次々と毛並みが黒いウルフに殺されていく。

その度に血は広がり、鼻を血のにおいが刺激する。


そこでようやく3人は理解できた。

その瞬間、アントワネットは大きな声を上げた。


「逃げて!!!!」


今まで聞いたことがないほどの大きく、取り乱した声だった。

ルークドとアリーは反応し、ワァーウルフから遠くへ逃げる。

だが、たかが子供の足の速さなど知れていた。

すぐに追いつかれ、殺されてしまうのは明白だった。


そのことをわかっていたアントワネットは考えるより先に体が動いていた。

家の中へ入り、ドンゴがいつも支度している狩猟道具箱からタガーナイフを取り出し、そしてまたすぐに外へ飛び出す。

アントワネットは自分ではワァーウルフを殺せないことはわかっていた。

だがそれでも少しでも時間を稼げればよかった。たとえ命を投げうってでも・・・。



ルークドとアリーは涙目の状態で必死に遠くへ遠くへ逃げた。

体感的にはものすごく長く感じられた。


ルークドは思わず振り返ってしまう。


「ダメ!!!」


アリーは涙を流しながら、ルークドを制止し、手を引っ張て走ろうとする。


だがルークドは流れ落ちる涙の目で、それを見てしまう。

ワァーウルフがアントワネットに飛びつき、首を食らいついた瞬間だった。

アントワネットのきれいな肌が無残にも血で染まり、食らいつかれながら、アントワネットはそのまま押し倒され、持っていたタガーナイフは落ちた。

そしてワァーウルフはその死体をむさぼる。

血の池は広がっていき、アントワネットは見るに堪えない姿へとなっていく。


ルークドはそれを見て今まで、アントワネットと過ごした日々が走馬燈そうまとうのように思い浮かぶ。

そしてルークドの中にどんどん現実が迫ってくる。

その今見ている、光景だった。


「やめろおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!!!!!」


その最大の怒りの叫びでルークドの何かが覚醒した。

目は火の色になっていた。

その怒りをすべてワァーウルフにぶつける。


手のひらを広げ、思いのままに。


ファイアーインパクトがワァーウルフへ一直線に向かう。


ドオオオオオオォォォォン!!


轟音を上げ、衝撃が伝わり、爆発する。煙が舞い、ルークド自身その反動で後ろへ吹っ飛んだ。

アリーもまたその風圧、衝撃で吹っ飛んだ。


ワァーウルフは立っていた。

ルークドに対して激高し、鋭く威嚇しながら歯を食いしばる。

そして口を上げ、何かをし始める・・・。


アリーはすぐにルークドのそばへ行く。

アリー自身、体が痛んでいたが、それどころではなかった。


「ルークド!ルークド!しっかりぃ・・・!!」


涙が止まらない目で、ルークドを手で抱きかかえ、起こそうとする。

ルークドは薄れる視界でアリーの顔を見ていた。

アリーはなんとかルークドを引っ張って逃げだそうとするが、全身の痛みでできなかった。

ワァーウルフへと目をやると、口の中で何かを溜めているのを確認する。


どうすることもできないアリーは観念し、ルークドを少しでも守るように覆うように抱いて、涙あふれる目を閉じた。



そしてワァーウルフは無慈悲に魔法を発動する。

口から発射され、風の魔法が欠けたつき状に刃物のように水平へと飛んでいく。

2人に迫った時だった。


人影が現れルークド、アリーを大きく、ごつい体が2人を覆う。

2人は腕で囲まれ、胸の中へ入るようにすっぽり入った。


デゥシイイイィイィ!!


背中が大きく切られ、血が飛び散った。


「ぬぐっぅ!!」


そんな悲痛な声を上げる。

その声を聞き、アリーは目を開き、顔上げる。

するとドンゴの顔がそこにはあった。


「ガハハ!大丈夫かぁ・・?」


「お、お父さん!!!」


ドンゴはがっちりして動かなかった。

そしてワァーウルフは即座に、魔法を同じように放つ。

その時、別の声が響き渡る。


「ふううううんっ!!」


ドキイイィン!!


今度は盾に当たった。

オーガがドンゴたちの前へ介在し、魔法をガードしたのだった。

そしてオーガは即座に指示を叫ぶように言う。


「今だぁ!!バリスタを撃てえええぇぇ!!」


その指示と共に、キングテレトリー軍の兵士が三脚で地面に突き刺したバリスタを発射した。

それは高速でワァーウルフの体を側面から貫通する。

極太の矢が刺さった状態になった。


「ハンス!!」


「はい!!」


オーガは間髪いれず、指示を部下に送り、またその部下もすぐに反応する。

ハンスはワァーウルフの後ろから切りつけ、ワァーウルフはダメージのあまり倒れ込んだ。


「総員突撃いいいぃぃぃ!!」


さらに指示を送りワァーウルフを円のように包囲し、槍を持った兵士たちが長いリーチから突き刺す。

そのすばやい連携にワァーウルフは、為すすべなく死亡した。


そして少しの静粛の後、オーガは悔いるように言う。


「まさか村に降りてくるとは・・・本当に・・・・すまない・・!」


ルークドが聞こえていたのはそこまでだった。




(ワァーウルフはキングテレトリー軍の治安部隊によって死亡した。

でも、村はかつてのように戻ることはなく、人数は激減し、そして大切な人も・・・・。

二度とあんな悲劇を起こさないために俺は剣を手に取り、ドンゴから戦闘を教わり、狩りをするには幼すぎたが・・・それでも必死に鍛え、狩りをした。

それはアリーも同様だった。反対したが、狩りをすると言って聞かなかった。

残った村のみんなもそれは同じ思いだった。

皮肉にもワァーウルフの悲劇によって俺はこの力に目覚めた。

だからこの力で俺がみんなを守っていかなくてはならない・・・。)


ルークドはもの思いにふけりながら、支度を完了した。


「・・これで完了だな。忘れ物は・・・ないな。

さて、今日も狩りに・・行くか!」


ルークドはいつも以上に気合いを入れた。


そして扉を開けて、デサン森へ出発したのであった。




これにて「デサン村」番外編も終了です。


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