ルークドの記憶 I ~ドンゴから聞いた話~
この話は「デサン村」の番外編となる話です。
ルークドはある日の夕飯の時にドンゴに自分の過去のことを聞いたことを思い出していた。
ーーーデサン村ある日の夕食ーーー
いつものように食卓をルークド、アリー、ドンゴが囲む。
その時の夕飯はシチューだった。
「ドンゴちょっと聞いてもいいか・・?」
ルークドは真面目な雰囲気でドンゴに聞く。
「おう?どうした?そんなに改まって。」
「いや・・ちょっと自分のことが気になってよ。俺が赤ん坊だった時のことを知りたいんだ。
どうやって俺はこの村に来たんだ?」
「そいうえば私もルークドのこの村に来た経緯は聞いたことがないわ。」
「うーーん。まぁ話してやってもいいが・・・。ただオレもお前の両親のことはまったくわからねぇ。
なんせ拾ったんだからな。」
「ひ・・拾った!?なんだそれ・・。俺はてっきり親からドンゴが引き取ったのかと思ってたぜ・・・。」
「そうだな今から18年ぐらい前か・・。いつも使ってる薪割りの台の切り株があるだろ?あそこにまだ赤ん坊のお前が毛布に包まれて置かれていたんだ。」
「おいおいめちゃくちゃだな・・・。」
ドンゴは当時のことを鮮明に思い出すように語り始める。
ーーーデサン村ある日の朝ーーー
「よし!今日も仕事だ!・・じゃあアリー。行ってくるからオヤジを待っててくれよ!
ガハハハハ!!ほんとかわいい顔してやがるな~。」
赤ん坊のアリーに向け、そのようにしゃべりかける。
「じゃあアントワネットさん。アリーをお願いします。」
「わかりました。狩り、気を付けてくださいね。」
アントワネットは村、唯一の乳母でまだ若く美人で母性を感じられる温かい人だった。
「ガハハハ!大丈夫ですよ。今死ぬなんて、死んでも死に切れませんよ。その時はゾンビになっても帰ってきますから!!その時は死人の顔でも扉を開けてくださいよ。ガハハハハ!」
「もうドンゴさんたら。でもそこまで元気があるなら私もアリーちゃんも安心します。」
アントワネットは笑顔で返答し、ドンゴを送りだす。
ドンゴは森へ向かう道の途中、大勢の村民が何かを囲むように集まっているのを見る。
全員なにかを見ているようだ。
「あれこんなに集まってなにかあったんですか?」
「あぁ!ドンゴさんこれを見ておくれよ。」
一人の村民が抱きかかえたものをドンゴに見せる。
「・・・あ、赤ん坊?おっ!これはおめでたいですね。どなたの赤ん坊なんです?
みんなでお祝いしましょう!!もちろんハイドドスウで!ガハハハ!!」
その赤ん坊はぐっすり寝ていた。
すると困った顔で村民は言う。
「い・・いや実はこの子・・・誰の子でもないんです。
今日の朝ここの切り株の上に置かれていたみたいなんです・・。
はて・・一体誰がこんなことをしたのか・・・。」
「えっ!?じゃあ所謂捨て子ていうやつですか?」
「そういうことなんです・・。なんのつもりで置いたのか・・村としても誰の子かもわからない赤ん坊をどうするか決めかねているんです。育ててほしいつもりなのか・・・。
それに・・・これも見てください。」
そうすると村民は重そうに引きずりながら剣を持ってくる。
「これはこの赤ん坊と一緒に置かれていた剣なんです。同時に置かれているてことは・・この剣でいらない赤ん坊を殺して処分してくれ。て思いで置いたんでしょうかねぇ・・・。」
「ほんと最近の若いもんは作るだけ作りよって!!あとは知らんぷっりか!!けしからん!!」
「でも一体どうするのよ~。」「村で引き取るしかないだろ。」
「じゃあいったい誰が育てるんだよ!?お前誰かもわからない子を育てられるのかよ?」
「えっ?いや・・・俺は無理だよ。男一人身だし・・。(チラッ」
「私だって子供が2人いるのよ!!もう手いっぱいよ!!それに女に子供は任せておけばいいなんてやめてちょうだい!!」 「いや・・俺もな~」「ワシはもう年だから無理じゃよ。若いモンがやったらええ。」
「爺さん逃げんなよ!!」「そこまで言うんだからあんた育てる気あるんでしょ?」
「いや~このままにしておくのはまずいでしょ。」「いっそのことこの子の両親のご希望どおりこの剣で・・」「な!なんてことを・・そんな馬鹿な冗談やめてくれ!!」「この子のためを思ったらいっそ・・。」「そもそも両親が悪いんだよ!!両親を探し出してとっちまえよう!」「なんでこの村に・・」
「なんて不謹慎な!不謹慎だ不謹慎」「これは神が置いたものなんだよきっと・・あぁ神よ・・。」
「この剣ただの・・剣じゃないよな~。もしかして・・」「すげぇ!この赤ん坊起きないぜ!!」
集まっていた村民たちが個人個人に騒ぎだす。
もはや収拾がつかなくなっていた。
「まぁ!まぁ!みなさん落ち着いて!!とりあえずオーガさんにでも相談してみますから!!
もしかすると国が引き取ってくれるかもしれませんから。その答えを聞いてからにしましょう。」
だが騒ぎは収まらなかった。
「国?国が引き取ってくれるわけないだろ!?いいかげんにしろ!!」「そうよねぇ~わざわざこんな地方の子をねぇ~」「中央て遠いんだろ?」「オーガさんにそこまで権限があるとは思えないけどな。」
「仮に引き取ってくれてもその後を考えてみろよ!奴隷人生にしかならないぞ!」「そんなこと私たちには関係ないわ!」「そうだ!もとを言えば捨てるやつが悪いんだよ。この子の不幸は全部両親の罪になるんだ。俺たちには関係ねぇ!!」「そんな子供みたいな言い訳できるかよ。もう干渉してしまったんだ。
大人である分なんとかしてやらねぇと」「なんだと!そういうなら引き取ってやればいいじゃないか!?」
「それとこれは別だろ!!」「そういうのを偽善ていうんだよ!!この偽善者!!」「なんだと・・・!?
てめぇ!殴ってやろうか!?」「あん?来いよ?この偽・善・者!」「オラァ!」「おいほんとうに殴りやがったなぁ。後悔しろ!!」「おい・・おいやめろ!!」「若いねぇ・・・。」「けしからん」
「きゃああああああああ誰か誰か止めてーーー!!」「くそっ!うるせぇよ!叫ぶな!これだから女は!」
「おいおい喧嘩かよ。」「そもそもお前もとから気に食わないだよ!!」「二人とも落ち着けよ」「血よ!血!血!」「おぉ・・・神よ・・。」「まだ寝てやがるぜ!なんてタフガイだ・・・。」「関心するな。」
「ワシは関係ないわい」「痛てえぇなああ!」「おうやれ!やれ!」「見てねぇでお前らも止めろ!!」
「落ち着いて!!みーなーさーん落ち着いて!!」
ドンゴはその喧騒を聞いてなにかを思った。
「うるせええぇぇ!!!!!」
ドンゴの野太い声は村中に響き渡る。すごい迫力だった。
喧嘩をしていたものも動きを止め、村民は黙る。
その時、初めて赤ん坊は目を開ける。
そしてその静寂の中ドンゴは言う。
「オレが育てる。」
「えっ?でも・・」
「オレが育てる。って言ってるだろ!!」
「で、でもド・・ドンゴさん・・本当にいいんですか・・?」
「大丈夫だ。アリーと一緒に育てる。アントワネットさんもいるし平気だ!ガハハハハ!!
それに見たところ男だしな!!ちょうど男の子もほしかったんだよな。オレがたくましく、そして強く育ててやるからな!ほれ貸してみろ。」
抱いていた村民からドンゴに赤ん坊が移される。
「今日からお前の育て親はオレだ。お前も今日から家族だ。いいか?」
赤ん坊に語りかけるように言う。
その時、赤ん坊は笑った。
「ほーーら見ろ。赤ん坊も喜んでじゃねーか!これで決まりだな!ほーーれよしよし、よしよし。」
ドンゴはそんなことを言いながらあやす。
村民もそれを見て反省したようだった。
「悪い。今から狩りに行かなくちゃならないんだな。待っててくれるか?」
赤ん坊はまるで言葉を理解しているように笑った。
「よしわかった!・・・・・・じゃあみんな解散しろ。解散。解散。オレはこの子を家に置いてくる。それに知らせないといけないしな!」
そう言いドンゴは赤ん坊を抱えたまま家に戻っていった。
ドンドンドンドンドン!!
「はーーーい。誰かしら?」
アントワネットはアリーをベットに置いて扉を開けに行く。
ガチャ・・・バタン!
「・・・あらドンゴさん。どうしたの忘れ物?」
「アントワネットさん。・・・赤ちゃんできちまった!!ガハハハハ!!」
「・・・えっ!?」
ドンゴの腕に抱えられた赤ちゃんに初めて気づく。
「う・・・うそ!?あら・・やだ・・・////」
アントワネットは頬を赤らめて気絶してしまった。
「・・・とまぁこんなことがあったんだよ。」
ドンゴは語り終えた。
(おいおい最後なんだよ・・・。)
「へーー。でもルークドと私がちょうど同じ年なんてすごいねぇー。」
「だろーー!ガハハハハハハ!村のみんなも協力してくれてよ。そうやって育ったわけだぜ!」
「うーーん。もちろん村のみんなについてはありがたいが、出生については謎が深まっただけだなぁ。
わかったことは今、使ってる剣は両親が一緒に捨てたことぐらいか・・・。」
「なんだあ?不満なのか?ま!自分探しなんてこれからしていけばいいさ!お前はまだ若いしな!
いつか外の世界(村以外)で生きることもあるだろうよ!!ガハハハハハ!!」
「ルークドはルークドで私たちの家族!!これは変わらないからね!
さっ・・片づけるわよ。」
「フッ・・・あぁそうだな。って!二人とも、もう完食してたのかよ!?」
「おーん?ルークド。まだ食べてなかったのかよ。オレは既に食べたぞ!」
(話ながらいつ食べたんだよ・・・)
「じゃあ今日はルークドに後片付、やってもらおうかなーー。」
「くっ!やられた!罠だったか!」
家中にみんなの笑い声が響き渡った。




