唯一の生存者
(あれ?ここは・・)
ルークドが目を覚ますと、よく知っている天井が視界に入ってくる。
それはルークド自身の家でどうやらベッドで寝ていたみたいだった。
ルークドは、とりあえず起き上がろうとして体を動かそうとする。
「いっ!!」
だが、全身に激痛が走り、起き上がれなかった。
それと同時にちょうど渋い声が聞こえる。
「目覚めたかね。」
その声のするほうへ痛む首を動かし、なんとか向けて確認する。
その声の主はノルスだった。
「ずいぶん寝ていたみたいだね。3日間まるごと寝ていたよ。」
それを聞いたルークドは状況が把握できず、浮かぶ疑問を手当たり次第にノルスにぶつける。
「・・・ザンギャクは!?ザンギャクはどうなった!?あれからどうなった!?それになぜあんたがここにっ・・・!」
ノルスはジェスチャーで制止する。
「うぬ。まだ混乱しているようだ。こちらから一つ一つ順番に話そう。」
ノルスの威厳のある言い方は、混乱状態にあるルークドをも落ち着かせた。
そしてノルスは事の次第を語る。
「まずザンギャクのことだが、それは私たちの方で始末した。かなり弱っていてあっという間だったよ。死体も森に捨ててきたから今頃はウルフたちの餌になっているであろう。」
ノルスはルークドの様子を確認しながら、話していく。
「覚えているかな。君は私たちが駆けつけた後、すぐに気を失ってしまった。・・・君もかなり弱っていて私たちは慌てて応急処置をした。それで君はなんとか一命を取り留めた。」
そこまでノルスが言うと別の声が挟まれる。
「フフフ・・・私が魔法で応急処置をしたんですよ。結構ぎりぎりでしたけどね。」
ルークドがその方向へ目線をやると忘れるはずもないスケルトン・・・いやオックス教授が前と同じロープを着て開いた本を持ち、立っていた。
「・・・・・・うぉ!あんたもいたのか。驚かすなよ・・・。」
オックス教授はなにかルークドの反応に対し、言いたげそうだったけれども黙っていた。
そしてノルスが咳払いをして語りを再開する。
「いいかね。そしてその後、我々の医師を呼びつけて君を治療してもらった。そのおかげで片手は辛うじて動かせるようになったがまだ安静とのことだ。」
ルークドは、その時初めて今の自分の恰好に気づいた。
頭に巻かれた包帯、顔にはガーゼや絆創膏が貼られていた。
さらに上半身は肌から直接包帯が巻かれ、片方の腕は骨折のためのギプスで固定されていた。下半身も同様に包帯だらけで薄着だけ着せられていた。
「そして負傷もそうだが、かなり消耗していた君は3日間寝ていたということだ。
ちなみにその間の看護はそこにいる彼女。ライネットがしてくれた。
彼女なりの罪滅ぼしというところかね。」
そう言われルークドは、その存在に初めて気づいた。
ライネットはすぐ横で丸椅子に座ってこちらを向いていた。
「・・・うぉ!気づかなかった。」
ライネットの姿は金髪に青い瞳をしており、没キングテレトリー軍の軍服を着ていた。
姿勢を正して手を膝において軽く組み、目線は少しルークドから横にそらしていた。
全体的な雰囲気は凛としていて美人系統の顔立ちではあったが、どこかに可愛らしさもある。
「私にできることはこれくらいしかないですから・・・。」
そう呟くように言うと、ルークドを見る。
「あの時は申し分けありませんでした。お詫びします。」
ライネットは罪悪感を感じながらルークドに軽く頭を下げて謝った。
「いや、あれは俺が反射的に動いてしまったのが原因だ。気にしないでくれ。・・・それに俺にとって得るものもあったしな。」
そしてノルスが話を再開する。
「・・・続けるかね。私たちがなぜここにいるかという疑問の答えはこれだ。」
そう言いながらノルスはルークドに近づくと、希望の羽を渡す。
それをルークドは見る。
「・・・これはアリーからもらったお守りだ。どうしてこれと関係が?」
「うぬ。そういうことか・・・。」
ノルスはなにか納得したような素振りを見せた。
少し間を置き喋りだす。
「実はその羽は私の方からアリー君にあの日、渡したものなのだ。君が気絶しているときに。」
ルークドは把握できないでいた。
「その羽は希望の羽といってね。持ち主の生命力が弱ると私たちのところへ知らせてくれるようになっているんだよ。いや、正確には死の猶予が確認できるといったほうがいいかな。
この終身時計によってね。」
ノルスは何か、時計のような物をルークドにちょっと見せると、すぐにしまった。
ルークドはノルスの言っていることがいまいちよくわからなかったが、気には止めなかった。
「あの日、君に渡そうとしたんだがね。あんなことがあった後だから渡せなかった。だから代わりにアリー君に渡したんだ。」
「・・・どうしてわざわざそんなことを?」
「うぬ。仮に君の生命力が弱ったらなにか村に異変が起こったということだからね。
でも君には渡せなかった。だからとりあえず、アリー君に渡して村に異変が起こってもわかるようにしておいたんだ。」
それをノルスが言い放った瞬間、ライネットとオックス教授がノルスを見る。
微妙な雰囲気が流れた。
そしてライネットが口を開く。
「ノルス総統・・・まさかアリーさんが彼に希望の羽を渡すことを見越して・・」
そこまで言いかけるとノルスが遮るように言う。
「さて・・・なんのことかね。それに私は今は総統ではなく総長だ、ライネット。」
「す、すいません。出過ぎました。」
ルークドは一体なんのやり取りをしているのかわからなかった。
「親切心で村のことをそこまで考えてくれてたとはな・・・。助かる。」
ルークドはノルスのデサン村に起こる異変を確信していたかのような口ぶりは気になったが、その時は、ただそう言うしかなかった。
「うぬ。・・・だが、結局アリー君は、君に渡したようだね。そのおかげで君の一命を取り留めることができたのだ。危なかったよ。」
「そうか・・・アリーのおかげなんだな・・・・・・そういえばアリーは!?ドンゴは!?村のみんなはどうなった!?」
ルークドは、またも取り乱す。
一気に重い空気に変わった瞬間だった。
ノルスはただ黙って首を横に振った。
「残念だが・・・私たちも応急処置や医師による蘇生を試みたのだが来た時には遅かったのだ。
アリー君、ドンゴさん含めてデサン村民は君を除き・・・・・。」
少しばかり間があった。
「死亡・・した。」
そのノルスの重すぎる言葉を聞いた瞬間、剣かなにかで刺されたような衝撃がルークドの体を襲う。
どんどんと汗が出始め、呼吸が上がり、顔が青ざめていく。




