「生きろ・・・」
落下した鉄球をザンギャクは重い足取りで拾いに行く。
ザンギャク自身かなりダメージが蓄積し、またマッスル対空砲を使ったためかなり消耗していた。
なんとか体を動かせるぐらいで、余裕はなかったがロックモンケンが破壊されたのを見て、ルークドに止めをさす必要があると考えていた。
「・・・よっこらしょ・・と・・。」
ザンギャクは鉄球を拾いあげるとルークドが落下したであろう民家の方を見る。
リードを手に巻き付けるとその民家の壁に向けて、鉄球を軽く飛ばした。
鉄球は壁に直撃し、その一面は崩壊した。
「おう・・・いたいた。」
民家は外と吹き抜けになり、壁にもたれているルークドの姿が視認できた。
「バレット・・・シュート!」
そしてザンギャクはトドメの一撃を繰り出したのだった・・・。
ルークドは全身ぼろぼろで消耗しきって、頭と口からは流血していた。
もはや考えることもできなかった。
だが、それでも生存本能で、仰向けの状態から体を床に引きずり、壁に上半身をもたれさす。
床に血をこすった後が続いた。
そこから立ち上がろうとするが、動かない。
その時だった。
ドゴオオオォォン!!
ルークドの目の前の壁が破壊され、飛散した石などがもたれているルークドの顔に当たった。
民家の中からも外が見える状態になり、ルークドはザンギャクを片目でうっすらと視認する。
そこから閉じるのが長い、瞬きが始まる。
数秒の暗闇の後、開けるとザンギャクは鉄球を手元まで近づけている最中だった・・・。
次に開けるとザンギャクはバレットシュートの動作に入っていた・・・。
そしてまた暗闇になり、開けると・・・
勢いよく鉄球が迫ってくる。
(・・こ・・こ・・・・まで・・・か・・・・。)
ルークドは覚悟し、目を閉じ、暗闇となった。
今度の暗闇はとても長く、ルークドは自分は遂に死んでしまったのだろうと感じた。
だがまだ肉体の感覚が残っていた。
その肉体の感覚がルークドの目を無理矢理に開けさせる。
ルークドが目を開けると人影が目の前に立つのが見えた。
意識が朦朧とする中、その人影の後ろ姿を見る。
その人影はルークドに背中を向けていたのだ。
(・・だ・・れ・・・だ?・・)
その人影は何かを守るように鉄球を自分の体で受け止める。
すごい衝撃で風圧が後ろにいるルークドにも伝わる。
(あ・・れ・・・俺を・・庇った・・のか・・。)
そう分かった瞬間、ピントが合っていくように視界がくっきりしていく。
見ている後ろ姿がどんどんと鮮明になっていく。
その後ろ姿はよく知っている。
「ド・・・ドンゴ!!」
そのルークドの一声に気づいたドンゴが顔を少し横に向かせ横目で見る。
「おう!もう起きたのか!もうちょっと寝ててもいいんだぞ!ガハハハ!オレが鉄球をすべて受け止めてやるからなぁ。」
ザンギャクはお構いなく、リードを引っ張って鉄球を手元に寄せていき、バレットシュートの体勢に入る。
突然現れたドンゴに反応するほどの余裕はなかったようだった。
ルークドはドンゴに反応する。
「・・・おおぉぉい!!・・・・おい!何してんだよっ!!」
ルークドはドンゴに逃げろと言いたかったが、言葉がでてこない。
ドンゴが瀕死の自分を身を挺して守ろうとすることに動揺し、その動揺のあまり、怒りすら湧いてきていた。
そしてバレットシュートが繰り出され、ドンゴの体に直撃する。
「ぐっっっ!!」
ドンゴの堪えは尋常ではなかった。少しのうなり声ではあるが、その中には恐ろしいほどの痛みが含まれているに違いなかった。
そして顔をルークドに向ける。
その顔は血まみれだった。
「・・・あきらめんじゃねぇ。・・・俺はお前を守るぜ。」
その言葉はもう死を受け入れているルークドに対し、叱りつけるようだった。
ザンギャクはリードをひっぱって鉄球をたぐり寄せ、またバレットシュートの体勢に入る。
ドンゴはチラッとザンギャクの方を確認する。
「いろいろ言いたいことはあるが言えそうにねぇなあ。これだけ言わせてくれ。」
「生きろ!・・ルークド。じゃあーな。」
それだけ言って、ドンゴは前を向きなおした。
ルークドは何も言うことができなかった。
そしてバレットシュートが放たれ、鉄球が飛んでくる。
ものすごい衝撃と共にドンゴはそれを全身で受け止めた。
さらに受け止めるだけでなく、今度は太い手で鉄球を抱えるようにして放さなかったのだ。
ザンギャクは鉄球を引き戻そうとするが戻らない。
「ぬん!・・ぬん!・・どうなってやがんだ。ピクリともしねーぞ。」
ザンギャクは力いっぱい戻そうとするが戻らないので鉄球のリードを放してルークドのほうへ歩いていく。
ルークドは鉄球を抱え、石像のようになったドンゴの後ろ姿をただじっと見つめていた。
死を感じ取った瞬間だった・・・。




