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キングテレトリー  作者: フクツノタロウ
ゲンエイガハラ村編ーⅡ
133/282

行動する者たち

「・・・うんニャ!これで村のみんながいることを確認ニャ!」


メイヒールが兵隊たちを草原に誘導し、ルークドがヒドウと戦っている最中、キャアシーは何とかゲンエイガハラ村の村民たちを生存通路へと避難させ終えた。

その時ちょうど、全員が揃っているか数え終えたのだった。


「キャアシーよ、本当にゲンエイ街にくのか?」


通路に溜まっている村民たちの中から、魔物の特徴を持つ長老らしき人物がキャアシーに近づき、声を掛ける。


「ニャ、我が輩に任せるニャ!村のことは安心するニャ。」


キャアシーは元気な様子で答える。

集会所から飛び出した後、村中を駆け回り、村民たちを避難させた後であったが消耗は感じられない。


「・・・そうか。本当にすまないな、キャアシーよ。自分たちの村のことなのに、ワシたちは何もすることができない。こういう非常事態の時こそ、年寄りがしっかり導かなければならないのにな・・・。」


長老は、自分の無力さを嘆いた。

長老含めそこにいる村民たちはみんな、これまでのことを簡易的ではあるがすでに知っている。

メイヒールたちが、村を守るために戦っていて、さらには外からやってきたルークドたちも助力し戦っているということ。

キングリメイカーには、もはや信頼しかないというのは、村民たちの共通理解だった。


「別に気にする必要ないニャ。・・・それにニャ・・・」


キャアシーは、先ほどとは変わって、真剣な表情を見せる。


「村は確かに非常事態ニャ。・・・でも正直言うとニャ、ルークドたちがこの村にやってきてから我が輩は楽しいニャ!」


最後は笑顔を見せて言った。


「・・・ホホッ、そうか・・・。」


長老はそのキャアシーの笑顔を見ると、目を閉じてほほえましく笑った。

そして、目を開ける。

その目は、何か期待を秘めるように前を見ている。


「この村が大きく変わるときなのかも知れん・・・な。あの方々(ルークドたち)は村にとっての運命の救世主なのかもしれんや。なぁ、みなよ。」


長老のその発言は、重く含蓄がある。

閉じ込められた村で、長く暮らしたからこそによるものだった。

長老の問いかけに、村民たちは頷いた。


「よし!では、救世主の使徒よ、行ってくるがよい!頼んだぞ・・・!」


長老は気合い充分でキャアシーを見送る。

村民たちも長老と同じ思いであるということは、顔に現れていた。

非常事態の中でもその前向きな表情は、ゲンエイガハラ村が外へ一歩踏み出した瞬間だった。


「ニャ!!救世主の使徒!!かっこいいニャ!!全うして見せますニャ!!」


キャアシーは、その村民たちの見送りに応えて、託されたという思いで敬礼ポーズをする。

そして、自信たっぷりな表情で通路の先へと振り返り、四足歩行になって駆けだした。

直線距離にして、20キロメートル。

その先を上がれば、ゲンエイ街に出る。


「・・・・・・。」


走って行く小さい後ろ姿を、長老はじっと何かを思いながら見ていた。


「メイヒールといい、ワシたちは何とも勇気づけられることよ・・・。そう思わんか?」


長老は、横にいた頼りがいありそうな村民に声を掛ける。


「はい、長老の言うとおりです。こうした形でもありながら、かつての抱いていた私たちの理想を見ることができたような気がします。」


長老は前村長で、その頼りがいのある村民は、前副村長だった。

今でこそメイヒールに村長の座を譲ってはいるが、それまでは村の代表者として苦心に苦心を重ねた2人だからこその発言だった。

いや、2人だけではなく、ゲンエイガハラ村の過去から今のすべての村民の積もりに積もった心が外へとようやく解放される。

そんな瞬間ともいえた。


だが、そんな村民たちの心の解放は、”ある魔物”を変化させることとなるのだった・・・。


ーー「ぐっぉぉぉ・・・・・・こっっ・・・」


ヘッターレは、治まらない砂埃の中、うつぶせで倒れていた。

もはや気力ゼロといった様子で、立ち上がろうとしなかった。

その状態で、3分ぐらいは、ゲンエイガハラ村の敷地内の地面で伏していた。


「はあぁぁぁぁ・・・」


そしてようやくヘッターレは、怒りを感じているような、ため息を吐きながら、ゆっくり立ち上がる。

それと同時に、回想する。


ーー「ヘヘッ、この穴から、お邪魔しますとしますかねぇ!・・・よっこらしょっと。」


ヘッターレは、壊れた門の穴をくぐり、ゲンエイガハラ村敷地内に立ち入る。


「チッ、にしてもあいつらもういねぇぞ・・・まったく、戦闘する奴らってどうしてこんなに速いんだ?何食ってんだよ。」


独り言を言いながら、門から10歩ぐらい前に進んだ時だった。


「あれは、何だぁ?」


ちょうど、滞空に丸いものが勢いよくこっちの方向に向かってくる。


「・・・・・・?」


ヘッターレは、目を細めた悪い目つきで前のめりになって、そのボールのようなものを見つめる。


「・・・・・・。」


そして、そのエネルギー弾は、高速にヘッターレ頭上を通り過ぎていく。

その様子を口を開けたまま、じっと食いついて確認していく。

すると、次の瞬間だった。


ドオオオオオォォォン!!


ものすごい着弾音と共に、門すぐ傍の高台に命中した。

そこでようやくヘッターレは、理解した。


「・・・これってよぉ・・・」


バゴオオォォン!バギギギギィィ!!


倒壊する高台がよりによってヘッターレのほうへ倒れてくる。


「やべぎええええええぇぇぇ!!」


ドオオォン!!ドォン!!バギギギギィ!!


ヘッターレは、全力疾走でがれきを奇跡的に避けながら、そこから離れていく。

だが、高台の影がヘッターレを覆い始める。


「・・・!」


恐怖で足は止まり、恐る恐る涙目で後ろ上空を振り返る。


「ハっハっハっはああああぁぁっ!!!し、しぬううううう!!」


バギギギギギギ・・・ズドオオオオオォォン!!


そうしてものすごい衝撃と砂埃を上げて、高台は遂に倒壊した。

ここからヘッターレの記憶がないのは言うまでもなかった。


ーー「頭脳職の俺様がなんでッ!!こんなァ!!死にかける思いばかりするんだよおおぉぉぉ!!クソッタレがあああッ!!」


立ち上がりと同時に、ヘッターレは、ぶち切れて大声で叫んだ。

怒りの再起だった。


チュンチュン


返ってきたのは、小鳥のさえずりだけだった。

とても静かなもので虚しさすら感じる。


「・・・・・・ホントッ、世の中狂ってんなアァッ!!」


タンタンタンタン


奇跡的に無傷で済んだヘッターレは、そうキレながらも体についた砂埃をはたいて落とす。

それも念入りだった。

何度も死にかけるが悪運は強いようだった。


「・・・。」


はたき終えると、門の方を確認する。


「・・・(まずったな・・・)」


穴は完全に倒壊した高台にふさがれ、もう後戻りはできない。

悲しく空を見る。

その時、ルークドが門前で早々ヒドウに攻撃を放った光景を思い出す。


(・・・にしてもあのガキ、ただもんじゃねぇなァ・・・。噂には聞いてたが、もしかしてキングリメイカーの期待の大型新人ってアイツのことだったのか・・・?)


ヘッターレは、敷地内を進んでいく。


(ああいうのが、騎士ナイトってやつか・・・こりゃあ、帰ったら速攻で調べねぇとなァァ・・・。)


ヘッターレの顔は、とても思惑に満ちた表情に戻っていた。







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