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キングテレトリー  作者: フクツノタロウ
ゲンエイガハラ村編ーⅡ
132/282

ヒドウ戦Ⅰ ~精鋭~

ゲンエイガハラ村、敷地内上空は東からの雲に覆われて、冬の曇り空のようになっていた。

険しい雰囲気を感じさせる。


(ここなら・・・!)


ルークドは、その畑一面が広がる場所まで来ると、後退をやめてヒドウの方を向く。

鳩尾みぞおち辺りまで高さのある作物が生えており、それが広々と雄大に広がっている。

居住地域よりもさらに浅い場所で、門からはそれほど遠くない。


(・・・余計な物が付いてきたが、分断は間違いなく成功したはずだ。状況は、ほぼ一騎打ちッ・・・!やってやる・・・!)


キィィィ・・・


ルークドは、気合いを高めながら剣を抜き、前を見る。

あの後ヒドウが敷地内に入るのを、後退しながら確認したルークドは、門のそばに建っていた高台にファイアーインパクトを飛ばし破壊した。

そのおかげで、崩壊した高台がちょうど門の穴をふさぐような形になり、ゲンエイガハラ村の敷地内に入ることは困難になっていた。

機転を利かせて、道を絶ったからこそ分断を確信していた。


「・・・よぉ~し、死ぬ準備ができたようだな。」


それと同時にヒドウがやってきた。

ヒドウの大型鎧の後ろに隠れて、バリスタの運搬2人と斧の運搬1人のザコが随伴している。


「・・・・・・。」


ルークドは、真剣な表情で剣を構えて、ただヒドウだけを捉える。

一方、ヒドウは準備を試みる。


「まずは、フリン嬢(斧)の欲求不満を解消してやらねぇと・・・なぁ。オイ、持ってこい。」


ヒドウは、後ろにいる部下に指示すると、部下は巨大な斧を両手でヒドウに手渡す。

その部下の腕はムキムキの極みで、フリン嬢を運搬する担当といえた。

だが、その肉体でもフリン嬢を運搬するのが精一杯で、武器として扱えるのはヒドウだけだった。


「・・・フリン嬢、お前の欲求不満・・・しっかり感じるぜぇ・・・。今、オレが愛の力で解消してやるからな!」


ヒドウもまた、両手で受け取って構えるとフリン嬢に向けてそう独り言を言う。

手渡した部下は、悪趣味な顔面マスクをつけて、顔を隠した。

両目だけが確認できる。


(一体、なんだ・・・)


ルークドは、その異様な2人をじっと見ていた。

それは、今から何かが始まるような段取りを醸し出していて、思わず意識をとられる。

そして、両手で斧を構えたヒドウにチラッと視線を向けた時だった。


(・・・きっ、消えた・・・!?)


なんとさっきヒドウの横にいた部下が、いなくなっていた。

ルークドは慌てて視線を、左右に動かして探るが、やはり部下の姿は見当たらない。


「さぁ~てと、そろそろ始めようかぁ・・・全自動殺戮ショーの開演だぁ・・・。」


ヒドウは不気味に言い放つ。

ルークドは、動揺しながら汗を垂らして、横目で探る。


(それに・・・何だ、この気配・・・10人はいる・・・。俺の周りに、点在しているッ!いつのまッ・・・!?)


ルークドが、かろうじて剣士の思考でザコの気配を把握した瞬間だった。


「嫉妬のように炊けぇぇぇぇぇッ!!!」


「っ!?」


ヒドウがそう大声で叫ぶと、畑の中からザアァッ!と音を立てて立ち上がり、さっきと同じ顔面マスクをした者たちが姿を現した。

間髪入れず、高性能なクロスボウでルークドを撃つ。

トゥッフッ!トゥッフッ!といたる方向から、クロスボウの発射される音が発生し、唖然としているルークドに矢が飛んでいく。


「くっ!」


ガキィン!


ルークドは、反射的に反応し、最初の矢を剣でガードして、激しい火花を発生させながら防いだ。

少し反応に遅れていれば、完全に刺さっていた。


キィンキン、キン・・・!!


そこから何とか反応を取り戻したルークドは、狙ったような僅差で飛んでくる矢9本すべてを高速動作で切って、弾く。

矢は、地面に落ちた。


「クソッ!」


先制されたルークドは、思わず焦った表情で、半ば躍起になってザコのほうへと視線をやる。

だが、その時にはすでに誰もおらず、気配すら掴めない。

目の前には、ただの畑風景が広がる。


「オラアァァッ!!」ズドオォン!!


その時、ヒドウが勢いよくルークドに突進し始める。

風圧を発生させ作物を揺らす、その重量の鎧ながらの力強い動きは、いちいちパワフルだった。

だが攻撃を仕掛けるタイミングはよくても、スピードが遅いため、ルークドがその状態からヒドウに反応するのは余裕だった。


「チッ!(・・・ひとまず、ザコは後だ!)」


ルークドは、とりあえず、風圧を伴って突進のごとく向かってくるヒドウに体を向け、対処しようとする。

剣で見切ろうとした時だった。


ブシュウウウウウウウ・・・


「なにッ!」


さっき弾き落とした、足下の矢から勢いよく白い煙が噴出し、瞬く間にルークドの視界を遮る。

そのおかげで、ヒドウが見えなくなってしまった。

散布するスピードも速く、畑の何百坪かは白い煙のドームと化す。


(仕込み矢かッ・・・!しかもこの煙、催涙だ!)


ルークドは、片目だけを開けながら、息を止める。

そして、バックステップして範囲から離脱しようと試みる。

その時だった。


ブオォン!


「しまっ・・・!」


何と突如ルークドの目の前に、ヒドウのあの鎧が現れた。

その煙の中で直面する鎧は、いっそう恐怖感を煽る。


「・・・ダンザイスラッシュゥゥゥゥゥ!!」


ヒドウは、ぶん回すように両手で斧フルスイングを繰り出す。


ガキキキイイィン!!・・・ダアアアアァァン!ドドドドドッ!!


ルークドは無理な体勢で、かろうじて剣でガードしたが、受け止めきれず煙を抜け何十メートルもぶっ飛んだ。

地面を削りながら、激しくぶっ飛び、生えていた作物を巻き込んで荒れ地にさせる。


ドサッ、ドサアアアン!!


最後は、体を地面に打ちつけ、引きずる。


「コホッ、コホッ・・・!」


ルークドは、残る催涙に咳をしながら、何とか起き上がろうとする。

体中に土がつき、作物が絡まっている。

少ないダメージではあったが”泥だらけの姿”になっていた。


「コホッコホッ・・・コホッ・・・」


ルークドは、頭に絡みついた作物を取りながら、立ち上がる。

視線を煙の中からゆっくり歩いて出てくるヒドウに向ける。

その姿は、余裕すら感じさせる。


(今のは、完全にしてやられたッ・・・!何とかこの程度で済んだって感じだなァ・・・。)


ルークドは、視線を畑に移す。


(・・・それにあのザコ共・・・ただのザコじゃねぇ・・・。緻密かつ高水準に練られた連携力・・・。キングリーパーにもあんなのが居やがるとはなぁ・・・しっかし、いくら気配を探っても、ヒドウの気配しか感じねぇ。まずいなッ・・・!)


ルークドは、動揺するしかなかった。

マスクをつけ、高性能なクロスボウを持った兵たちの位置どころか気配もまともに掴めなかった。

唯一、いると明確に掴めたのは、攻撃の瞬間だけで、それ以外は、まったくだった。

畑だから姿が見えないといったレベルではなく、気配そのものを消す透明人間のレベルといえた。

実際には透明人間ではないが、それほど探知するのは困難とルークドは思えた。


(・・・だが、今のでわかった・・・。ヒドウやザコ自身が強いわけじゃねぇ・・・。脅威なのは、連携と規格外の武具だ・・・ッ!)


ルークドが冷静に分析をしていると、ヒドウは立ち止まる。


「田舎のガキらしく顔に出てるじゃねぇか・・・とてもびっくりした!ってよおぉ?グハハハハハハハ!!いいぜぇ最高だァな、オイィ!!」と大声でルークドに言い放つ。


「・・・。」


ルークドは、黙って鎧を見つめる。

ヒドウは、続ける。


「・・・バカ共(部下)には、オレの偉大なる父の愛で256通りの展開フォーメーションをたたき込んである。地形や状況に対応させると1024通り・・・マイナーチェンジを加えると、10010通りなんだよぉ!!オラァッ!!テメェに、この膜を破れるかァ!?」


ヒドウの部下は、この間も畑のどこかで片膝をついて命令待ちしている。

1発撃つごとにスクランブル交差点のように移動し、それぞれに場所を変えていく。

不気味なまでに、気配を消し、両目だけを見せ、クロスボウを構える姿は、異様だった。

キングリーパーきっての精鋭部隊といえた。


(考えても仕方ねぇ・・・こうなったら、力押しだァ・・・。)


ルークドは、前に出て、歩いてヒドウに近づいてく。

いつまでも向こうのペースのままでいさせるわけにはいかなかった。

そこで切っ先が地面に向いている剣が燃え出し、炎が刃を包んでいく。

そう、ヴォルケーノソードだった。


「・・・ニヒィ」


それを見たヒドウは、そのバイザーの中で不敵な笑みを見せる。

戦闘モードにおいて見せるその顔は、もはや気持ち悪い。


「圧倒的な仕組みの前に屈したヤツは、次は力でぶち壊そうとする・・・田舎のクソガキィもその1人だったなァ!!オラァ!!こうやって、オレの論理の中ですべてが回っていく。グハハハハハハハ!!・・・こい。」















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