速攻
ヒドウとルークドは、じっと互いを睨んだまま凄んでいた。
ルークドは、もちろん戦闘態勢に入る直前として、ヒドウもそれに応えるかのように眉間にしわを寄せて気迫を出していた。
その嵐の前の静けさの雰囲気の中、それぞれは考えていた。
(チッ、ここに人間がいるってことは、もうキングリメイカーが確保した後かよッ!クソッ、ちょっと遅かったかぁ~!・・・まっ、こういうときのためにヒドウを連れてきてやったんだ。精々働けよ、ヒドウよぉ!!俺様の仕事はもう終わりだ!観戦させてもらおうか・・・)
ヒドウのすぐ傍にいたヘッターレは、そう思いながら、最後はヒドウに視線を送った。
その事からヘッターレは、ヒドウよりも数段情報を持っていることがわかる。
キングリーパー幹部の端くれとはいえ、ヒドウよりも情報通であるということは、小者に見えて以外と、もっと上あるいは他の組織と繋がりがあることを臭わせる。
そしてヒドウは、ついに口を開く。
「お前・・・よく見たら、人間じゃねぇか!!・・・にしてもよぉ、いかにも田舎出身のクソガキですって感じだな~はぁ。迷子は、さっさと帰れオラァッ!オレが進んできた方向を進めば、森を出られるぞ。・・・とっとと失せろッ!!モブガキィ野郎ッ!!そこ邪魔なんだよォックソ野郎!」
ヒドウは、そうルークドに言い放つと、バイザーを閉じてゲンエイガハラ村へと進もうとする。
対峙している雰囲気にも関わらず、ヒドウは目の前にいるルークドを敵と認識していない様子だった。
もちろんルークドを敵と認識していないのはヒドウだけで、場の雰囲気を掴んで、常識を持っていれば、普通はルークドを敵と認識する。
現にヒドウの後ろにいる兵隊たちは、戦闘態勢に入っており、後は指示待ちだった。
「・・・・・・。」
ルークドは、ヒドウにそう浴びせられると、目を軽く閉じ、音を出さずに深い呼吸をし始める。
剣は抜いておらず、ただその大群の前に立っている中、行う。
時間がゆっくり流れる。
ーー「では、まず分断するところから始めましょう。」
メイヒールは、そう言った。
「ヒドウと200人の兵隊を分断するってことか・・・それって結構難しくね?」
ルークドは、呟く。
「フッ、簡単なことだ。お前1人が門の前に立って、一騎打ちの申し込みでもすればいい。まぁ、相手がノってくれるかは知らんが。」
グールフは、小馬鹿にする感じでルークドに言った。
「いやいや、少しは真面目に考えてくれ。」
ルークドは、呆れるような目でグールフに返した。
「とはいっても、やはり場所の確保が問題になってくる。門をくぐって村の敷地内にそいつらを呼び寄せるか・・・それか、俺とヤンが戦ったみたいに門の前で戦うか。まぁ、いずれにしろ門には穴が空いたままだ。」
ファイがそう言う。
「あ~めんどくさ。何でこんなこと考えなくちゃいけないのよ・・・こうしてる間にも迫ってるっていうのに。」
マリが不満を漏らす。
「う~ん・・・相手の人数が人数でもあるし、乱戦はある程度、避けられないか。」
ヤンがそう言う。
中々段取りがまとまらない様子だった。
「私に考えがあります。・・・これを見て下さい。」
そう真っ直ぐ言い放ったのはメイヒールだった。
メイヒールは、手元のゲンエイガハラ村の周辺地図を指差す。
「まず、グールフの案を少し借りたいと思います。・・・とりあえず、ルークド1人で門の前に立ってもらいたいと考えます。どうですか?」
メイヒールは、ルークドを見て聞いた。
「・・・まぁ、俺が言い出したことだし、仕方ねぇよな・・・。わかった。」
「ありがとうございます。・・・そして私は、ここ。川を挟んだ対岸に位置取りしたいと思います。この位置は、ちょうど門の前にいる者からは側面に当たります。方角でいえば村の方向は北なので西ですね。」
「メイヒール殿。拙者は川に沿って、この村までたどり着いたからよく知っているが、対岸までは何一つ障害物がなく見通しがいい。それで大丈夫なのか。」
「はい、その点は問題ありません、見つかることが目的なので。・・・で、私はタイミングを見計らって、きっと目の前のルークドに視線を向けているであろう隊列に向けて、矢を放ちたいと思います。」
「奇襲ってこと?」
マリが聞く。
「そういうことになりますね。・・・そして、そこから私に気づいた隊列は、この川は渡れるほど浅いので横断して追ってくることができます。」
「なるほど、おびき寄せるということか。」
グールフが、そこまで聞いて納得した。
「えぇ、そして私は対岸から後退しながら、ここの草原まで誘導したいと思います。」
メイヒールは、トントンと指で指し示す。
「そこから、私たちの出番ってことね。」
マリがやる気を見せるように言った。
「はい。この草原で、私が引っ張ってきた兵隊たちと総力戦ということになります。なのでそれまでは、マリ、ヤン、グールフ、ファイはこの草原で待機ですね。」
4人は頷いて了解した。
「で、俺は残されたヒドウと戦うと・・・そこまでうまくいけばいいけどな。」
ルークドは、微妙に納得仕切れていない。
「・・・兵隊とヒドウという者の距離を離すことが重要です。ルークドは、門をくぐってゲンエイガハラ村の敷地内に呼び込んで下さい。こうすれば、門の穴からしか出入りできませんし、状況的には、一騎打ちに限りなく近づくと思います。」
「ゲンエイガハラ村の敷地内でお前 (ルークド)がそいつ(ヒドウ)と、敷地から離れた場所で我たちがザコ共と(兵隊たちと)殺り合う。ゲンエイガハラ村を基軸とした内と外で分断というわけだな。現実的にこれしかないだろう。」
グールフがまとめた。
「そうですね。後は、臨機応変に対応っと言ったところでしょうか・・・。不安定なものですが、うまくいくことを祈ります。」
メイヒールは、うまくいくかは確証がないといった表情を見せる。
だが、これ以外に一騎打ちの状況を作り出す手段が思い浮かばなかった。
「・・・・・・わりぃな、俺のわがままを聞いてくれて。・・・ヒドウは、俺に任せてくれ。」
ルークドは、全員の目を見て、気合い充分で言ったのだった。
ーールークドは、ピタッと止まった状態から目を閉じたまま動き出す。
スタッスタッと一歩二歩前に出る。
(・・・実際のところ、俺がヒドウを一撃で終わらせればいい話だ。残りの200人もバカ犬共も俺がすべてぶっ殺す・・・!)
ルークドは、ヒドウのバイザーを見ながら、半笑いでしゃべり始める。
「・・・あぁ、そうだ。俺は、田舎出身のクソガキだ。」
「あぁん・・・なんだぁ・・・?」
ヒドウは、立ち止まる。
「・・・でもな、それだけじゃないな。」
「・・・・・・。」
ルークドは立ち止まった。
ヒドウもさすがに何かを察知する。
「・・・今からお前を殺す、クソガキだァッ!!・・・」
ルークドは、大声で言い放つと同時に目を開け、両手を前に向ける。
その動作は速く、眼の色は炎の色に変わっている。
「速攻で終わらせてやるッ!!フレイムインパクト!!!」
威勢のいい叫びをすると、手の平から高エネルギー球体を放つ。
溜めた時間は1秒ほどで、それは無意識ながら没落の力が最大限に解放されていた。
ドオオオオオオオオオオン!!!
見事に先頭のヒドウに直撃し、大爆発が起こる。




