夜明けの対峙
「来たな・・・。」
ゲンエイガハラ村の門の前でただ1人たたずんでいるルークドは、そう呟いた。
もちろんあれから修復する時間など無く、後ろのその門は、下半分はスッポリ穴が空いている。
ザッ、ザッ、ザッ・・・
気迫のある門番となったルークドにヒドウを先頭にした200人以上の隊列が、一歩一歩踏みしめる音を立てて、近づいていく。
その隊列から後光が刺すように、朝日が昇ってきており、ルークドの顔を照らしていた。
まるで朝になったのを合図とするように、両者互いに存在を認識する。
目の前に敵がいるという緊張感が、その一帯を包み込んでいた。
ーー「ヒドウは・・・俺、1人にやらせてくれ。」
ルークドは、その場にいる全員に言い放った。
「・・・ちょっ、ちょっと!冗談よね・・・?」
真っ先にマリが反発を見せた。
「いや、俺は本気だ。」
「ルークド殿、なぜそのようなことを?よかったら理由を聞かせてくれないか。」
いつもは、ルークドに肯定的なヤンもその時ばかりは、疑問を呈せざるを得なかった。
「・・・2人してそんなに真剣な顔すんなって!ただ単に俺1人でヒドウと戦って、力試しをしたいってだけだ。ちょうど仮想敵にいいしな。」
ルークドは、軽い感じで返す。
「・・・さっきアンタ『冷静だ。』って言ってたけど、全然そんなことないわね。さすがに今、力試しはないんじゃない?少し、落ち着いてよ。」
マリは、ルークドの言い分を理解できないといった様子で、冷たく苦言を呈す。
「う~ん・・・。」
ヤンも腕を組んで、渋い表情をしている。
マリとヤンはルークドの過去話を聞いて、心情を理解しているからこそ、今回の反応だった。
戦いに私情を持ち込むのは危険というのは、当たり前の鉄則だった。
「ルークド。あなたの提案を尊重したいところですが、今は連携したほうが、迅速に済むと思います。」
メイヒールも、やはり反対の意見を示す。
「・・・その意気込みと自信は見習いたいぐらいだが、賛同はできない。いくら脅威が低くても実戦である以上、最善の選択をするべきだと俺は思う。」
ファイも納得はできない様子だった。
自分含めてヤン、メイヒール、ファイと4人の意見が揃ったのをマリは受け取ると、ルークドの方を見る。
「・・・ほら、みんなの意見は明白!!一騎打ちとかそんなバカなことしないで、一斉に全員でヒドウをボコって、後はザコをテキトーに蹴散らして終了でいいじゃない。少しはこの村のことも考えることね。」
「・・・ぐっ(ここまで反発されるとは・・・ボコボコだな、俺・・・)」
マリのそのまとめの言い分で、ルークドは気まずい表情を見せる。
完全に出端を挫かれた。
「・・・・・・。」
少し沈黙が流れ、ルークドが、もう折れるしかないと考えていた時だった。
「・・・我は、こいつの提案にのってやろう。」
そう言ったのは、なんとグールフだった。
その場の全員が驚いて、グールフを見る。
「フン、勘違いするなよ、小僧。あくまで疫病神の責任をとって貰おうというだけだ。・・・ヒドウとかいうやつはお前1人で片付けろ。」
「・・・で、ですがグールフ・・・」
メイヒールが、異議を唱えようとするとグールフはわかっているという風な表情を見せる。
「あぁ、もちろん・・・こいつ(ルークド)1人に任せると碌なことはないし、頼りにもならない。」
「・・・(言われ放題だな・・・俺・・・。)」
「だから、あくまでこいつの自由時間を設けてやってもいいというだけだ。・・・最初に我含む、5人でザコ共を殺す。このザコ共を皆殺しにするまでが、こいつの自由時間だ。」
「それってつまりお前らが200人の相手をしている間、俺はヒドウと一騎打ちで戦えるってことか?」
ルークドは活気を取り戻すようにしてグールフに聞く。
「あぁ・・・十分すぎるぐらいだ。もし我たちがザコ共を殺し終えても、お前がそいつを殺せていないなら、その時は、多勢に無勢でヒドウとかいう、しょうもないやつを殺す・・・!これだけは覚えておけ。」
殺すと言った時、グールフの目が見開いた。
グールフのその発言を聞いて、ルークドはニヤリと笑った。
「・・・ハッ、今回ばかりはお前に助けられたな。いいぜ・・・決まりだ!」
「いやいや、決まったわけないでしょ!!この状況で2人揃って戦闘バカを発揮するのは勘弁してよ~。ねぇー!メイヒールー!・・・グールフに言ってあげて。」
マリが、速攻反発する。
メイヒールは何やら困惑した表情をしていた。
「・・・私、個人としては・・・とても・・・その、賛同はできないのですが・・・グールフがルークドの提案に賛成するなら、仕方ありませんね・・・。マリ、ごめんなさい・・・。」
メイヒールは、苦笑いでマリに返答する。
渋々賛成するしかないといった感じだった。
「そんなぁ~・・・。」
今度は、マリ側が不利になってきた。
「では、拙者も流れに乗ろう。ルークド殿の提案は決して1人よがりではなかったようだ。」
間髪入れず、ヤンも賛成側に回る。
「ちょっ!うそ、うそ、うそ!」
ドミノ倒しのように賛成が増えていく。
マリは、その現実に頭を抱え始める。
「なるほど・・・最善の選択というのは、そこにあるのではなく、自分たち次第なのだな・・・。俺は視野が狭かったようだ。・・・実力を発揮できる方というなら、俺もルークドの提案に賛成だ。」
続けてファイも、賛成した。
「全員一致ッ!!」
ルークドが、勝利のかけ声を発した。
「・・・あーーー!!!もう知らない!!好きにすれば!!ヒドウに殺されても、文句なしよ!絶対、供養してやんないから!野垂れ死んじゃえば!」
マリも遂に折れた。
いや、折れるしかなかった。
「おっ?負け犬の遠吠えが聞こえるぞ?」
ルークドは、ほくそ笑みながらマリを煽る。
「調子に・・・乗るなァ!!」
ズゴン!!
マリは、そう叫びながら、ルークドの頭にげんこつをぶちかましたのだった。
ーーそして、ついにルークドと対峙するようにして隊列が止まった。
「・・・・・・。」
ルークドは、緊張感を漂いわせ、その先頭にいる全身鎧、すなわちヒドウをじっと睨みつける。
一目で他のやつらと違うとわかるほどのオーラを放っている。
「はぁ、なんだよ。こいつは・・・よぉ。」
それと同時にヒドウがバイザーを上げて、目の前のルークドを確認する。
「・・・!(間違いねぇ・・・)」
ルークドは、ヒドウの顔を見て、確信する。
それは、ルークドとヒドウのファーストコンタクトだった。




