夜明けの出発
ライネットは、一頭の馬の手綱を引きながら、エングランド訓練所の正門へと向かっていた。
オックス教授の研究室を出た後、さっそくルークドのもとに向かうため、その馬を連れていた。
(・・・ひとまずは、ゲンエイ街に行ってから・・・)
ライネットは、正門まで向かう途中、行動を考えていた。
最初は、ゲンエイガハラ村を囲う森を単独突破して村に直接向かうことも考えたが、目的地が目的地なので慎重になることにした。
その慎重とは、自分の身に危険が及ぶリスクといったことではなく、ゲンエイガハラ村という場所が、魔物の特徴を持つ人々の集まりで自衛しているという点にあった。
下手に刺激してしまえば、保護下の交渉に影響を及ぼしてしまうかもしれないといったことや、脅かしてしまうという考慮。
あるいは、すでにルークドたちは無事目的を果たして、ゲンエイ街の駐屯所に帰還しているかもしれないと考慮した結果だった。
もし、そうならわざわざ出向く必要もない。
いずれにしろ、先にゲンエイ街の駐屯所に行って、情報を集める必要があった。
そして、行動が決まったと同時に、正門の前についた。
正門の傍に、堅牢な小さな建物があり、そこに警備兵が溜まっている。
「・・・おはようございます、お早いですね。お出かけですか。」
ライネットの姿を確認した兵士が出てきて、愛想良く声を掛けた。
「うん、ちょっとね。」
ライネットがそう返答すると、ちょうど馬も鼻息を出して反応を見せた。
「わかりました。では今、開けますね。」
兵士は、正門のすぐ横にある鉄格子の扉に近づいて、鍵を使い開ける。
余裕のある作りで、馬も楽々通れる。
ライネットは、そこを通ってエングランド訓練所の敷地内から外に出た。
そして、いつのまにか兵士がもう1人出てきていて、合わせて2人の兵士がライネットを見送る。
「・・・お気を付けて。」
ライネットは頷いて返す。
キィィ・・・ガチャン!
鉄格子の扉が閉まると、ライネットは振り返って、正門と反対側の先を見る。
ちょうど朝日が差し込んで、ライネットを照らす。
いよいよ朝になってきたという景色だった。
「・・・。」
ライネットは、まぶしい朝日の光を手の平で遮る動作をして、立っている位置から一歩、二歩と前に出る。
道が続いてる先を見ながら、慣れた様子で乗馬する。
その時、ちょうどペンダント部分が刀の柄を通して、鍔で止まって掛けられている終身時計が照らされ光った。
「ここに、ぶら下げておくのは良くないかな・・・。」
ぶら下がったままでは何かあった時に壊れるし、何より刀を抜くときに邪魔になるのでライネットは、終身時計の場所を変えることにした。
ペンダント部分を掴んで、刀の柄から抜き取ると、そこから自分の頭を通して、首に掛ける。
ちょうどネックレス状態になった。
「・・・。」
そして、ぶら下がった終身時計を何気なく見るが針は動いていない。
つまり、ルークドの身に特に何も起こっていないということだった。
それを確認したライネットは、ぶらさがった時計を服の中へ入れて、しまった。
こうすれば動いても、胸元で時計が暴れることはないし、外に露出しない分壊れるリスクも減る。
「・・・うん。」
ライネットは、しっくりくるのを実感して頷くと前方を見る。
パァン!
手綱の音を合図に馬を走らせる。
スピードは速く、タタタ、タタタ、タタタ・・・と馬の走るリズミカルな音を立てながら、どんどんとエングランド訓練所から離れていく。
ライネットは、目的地であるゲンエイ街駐屯所へと向かう。




