エルード家Ⅱ ~血の判別~
「・・・私のような者に聞かせて頂いて、ありがとうございます。」
ケリーは、両目を軽く閉じて、話を聞かせてもらったことへの感謝の意を述べた。
ノルスは、深海色になってきた空を、その窓から見ている。
「何々、別にかまわんよ。・・・過去を振り返って手がかりに、未来を考えていくことは必要なことでもあるしね。」
ノルスは、そう言って紅茶をすすった後、ケリーのほうを向く。
「それを、執務室でただ1人籠もって行うのも、孤独なものだ。・・・私の方こそ、聞き手になってくれたことに感謝しなければな。」
ノルスは、カップを机の上に置くと、また窓の位置に戻った。
そこで、ケリーはタイミングを見計らった末、ノルスにあることを聞く。
「・・・ところで一つ気になったのですが、『血の判別』とは一体?」
「あぁ、その事か。」
ノルスは、言い忘れていたというような反応を見せると、説明し始める。
「・・・『血の判別』それは、エルード家の環境を端的に現す”儀式”のようなものだよ。」
「儀式・・・ですか・・・。」
「先ほど話した通り、エルード家は、名家でありながら・・・いや、名家だからこそ普通ではない。それは悪い方にも振り切れるということで、外から見れば異常とも捉えられる。」
前置きを言うと、本題に入り始める。
「・・・エルード家に生まれてくる子ども全員が全員、決してその優秀な血を受け継いで生まれてくるわけではないといえばわかるかね?」
ケリーは、そう投げかけられ、納得する様子を見せる。
「つまり、遺伝の個体差というわけですね?・・・同じ親から生まれた兄弟に差がでるように。」
「うむ。その通りだ。・・・エルード家の血が流れていても、生まれてくる子どもには、どうしても上限と下限の幅が出てくる。・・・その幅を見極めようというのが、エルード家の『血の判別』なのだ。」
ノルスは一拍子置いて、話す。
「・・・生まれたその日から一年間を経た後に行われるものでね。つまり一歳の赤ん坊の時に、判別される。」
「一歳・・・?」
ケリーは怪訝な表情を見せる。
「その判別方法はこうだ。一歳の赤ん坊の前に、キングテレトリー軍の一般兵士を棒立ちにさせる。そして、赤ん坊を無理矢理に促して、雷の魔法を出させる。」
「い、一歳でもう魔法が使えるんですか。」
ケリーは困惑の表情を見せる。
普通なら、一歳の赤ん坊が魔法を使えるのはありえない事だった。
「あぁ・・・とは言っても、まだ一歳ではあるから一筋の電撃にすぎないがね。」
ノルスは話を進める。
「その電撃を兵士にダウンさせるまでぶつける。そして、ダウンに至るまでの電撃を出した回数によって判別される。1発なら完璧な血、2、3発なら優秀な血、4発なら許容・・・というふうに。私が調べた限りレーナは1発、ライネットは2発だったみたいだね。」
「いや~一歳で兵士を倒せるのですか。恐ろしいですねぇ・・・。」
「いやいや、本当に恐ろしいのはここからだよ。・・・5発目で兵士をダウン出来なかった場合だ。その場合はエルード家の不良な血として、その赤ん坊は処分される。」
「エルード家から捨てられるというわけですか。」
「いや、それならまだよかったんだがね。・・・実際は、即刻殺される。」
そのノルスの一言で、執務室の空気が重くなる。
「・・・自分たちの子ども、なのにですか。」
「あぁ、4、5発目あたりから、エルードの名を与えるかどうかと検討されるレベルだ。それを超えれば・・・という感じなのだろうね。」
「でも、さすがに残酷ですねぇ。・・・生まれたと思えば、勝手に判別され、その結果で殺される。中々なもんです・・・。」
「どうして、そこまでするかは・・・定かではない。だが、私はこう見ている。・・・認められない劣等な血であっても、それはエルード家の血で違いない。だから下手に生かしておくのも、捨てるのも、世俗にエルード家の血が流出してしまう。それを危惧した結果だろうね。」
「私たち名家の血を下流に流すわけにはいかないというわけですか。・・・確かに、総長が始めに言っていた通り、そこまで極まると、もはや呪われていますね、”家”に。」
「そのおかげで、エルード家は、名家中の名家という地位につき続けられた、っといったところかね。」
「・・・・・・。」
少しの間、沈黙が続いた。
その沈黙を破るように、ノルスは、口を開く。
「ここまで”知らざるエルード家”のことを話したのだ。どうせなら私が当時調べたことをすべて君に話しておこう。」
ケリーは、驚く顔と同時に興味という表情を見せた。
やはり、情報は大好物だった。
「・・・まだ、(関する)何かあるっていうんですか・・・。ですが、私は好きですよ、ずっと聞いてられます。」
「フフッ、君らしいな。・・・この情報が、もっともキングソードに向けて役立つかもしれんね。」
「ほう、興味深いですね。」
「君も知っている通り、エルード家の長女はレーナ、次女がライネットと認識されている。」
「えぇ。」
「だが実は、ライネットは三番目に生まれた娘・・・三女、なのだ。」
ノルスは、重々しく言い放った。




