明かされる関係
ーー執務室を出た後、オックス教授の研究室に向かおうと、廊下を歩いて行くライネットの後ろ姿を確認する人物がいた。
廊下の反対方向から気づかれないように、煙草を吸いながら、じっと見ていた。
「順調、順調・・・。」
そう小声で呟き、吸い終わった煙草を携帯灰皿に入れると、ライネットと入れ違うようにして、執務室の扉をノックして開けた。
そのノックの仕方は誰が訪れたのかわかる一種の暗号だった。
ガチャ
「どうやら、うまく事が運んだみたいですね、ノルス総長。」
扉を開けて中に入ったその声の主は、ケリーだった。
「フフ・・・私は特に何もしていないね。ライネットが、勝手に行動しているだけに過ぎんよ。」
ノルスは、書斎に座りながら微笑して、そう答える。
「ハハッまたまた、総長は・・・昼の修練演習所でのこと聞きましたよ。随分と派手にやったみたいで。」
ケリーもやや笑っている。
2人のそんなやり取りの表情は、ある事に対して順調であるという打算的な笑いだった。
「私の想定を遙かに上回ってね。ついつい力が入りすぎてしまった。・・・あの後、修練演習所の管理担当
者に、この年になって恥ずかしい限りだが、注意されてしまった次第でね。・・・これからは気をつけなければ如何な。」
ノルスは、少し照れながら、あの後どうなったかを言った。
「・・・まぁ、そうなるでしょうね。あそこまでの自然を整えるのは、かなり大変な労力が掛かっていることでしょうし・・・。今は、総員出動で何とか復旧を試みています。時間は掛かるとは思いますが、いずれ元に戻るでしょう。」
ケリーは修練演習所の管理者への同情と、ノルスへの報告を同時に済ませた。
「・・・う、う~ん・・・改めて心に留めておく。彼らには、その日々の努力に謝礼でも渡すことにするよ。」
ノルスは、反省するように珍しく困った素振りを見せてから、またいつもの雰囲気に戻った。
執務室も、連動するようにしてさっきの軽い雰囲気から真面目な雰囲気に変わる。
「それにしても、ノルス総長。失礼な質問になるかもしれませんが、どうして今回、こんな回りくどい事を?・・・総長が直接ライネットに待機ではなく護衛の命令を出すのが一番、手早く済んだのでは?」
「・・・私の命令でライネットが護衛を務めるなら、それは結局、私への忠誠に支配されたままになってしまうからだ。」
ノルスは、そう答えると何やら考えていた。
横にあったティーカップをとって、残りの紅茶を、飲む。
カタッ
皿に音を鳴らして、ティーカップを置いた。
そして、やや前のめりになって話す体勢に入った。
「・・・そう、だな・・・。私とライネットの有識時代の関係は、わかるかね?」
「えぇ、そりゃあ、もちろんです。総長が、キングテレトリー軍総統という立場で、ライネットがその傍で常にピタリと護衛していた、すなわち絶対忠誠の関係ってことですよね。」
「うむ。・・・では、その関係に至ることになった発端は聞いたことがあるかね?」
「・・・すぅぅ・・・いえ、まったく。」
ケリーは、自分の頭の中を探ったが、一切引っかからなかった。
「では、ここから話す必要があるな。・・・私とライネットの関係を語るには、ライネットの生まれ家・・・つまりエルード家について説明する必要がある。これは、いづれ来るキングソードと戦う時にも、この情報は役立つだろう。」
「・・・なるほど。」
ケリーは、「エルード家」と「キングソード」という二つの名称の関連性が頭の中で確認される。
ノルスが今から話そうとしている内容が、少し見えてくるような気がした。
「では、エルード家といえば・・・」
そして、ノルスは話し始める。




