一瞬の無力化
お互いに目を合わせたまま、固まってしまう。
メイヒールも派手な野郎たち側も、目の前。突然そこに現れるとは思いもしなかったのだ。
時間にしては、2秒ほどだったが、両者とも妙にスローに流れるのを感じる。
(・・・見つかったっ!!)
メイヒールは、しまった!と一瞬思うが、今は、目の前の敵を一刻も早く無力化しなければならないと認知する。
頭の中が、戦闘に切り替わる瞬間だった。
着地のしゃがんで背を向けていた体勢から、振り向きざまにすばやく仕掛ける。
今のメイヒールは、グールフとの一連の流れからここに来たため装備が何もない。
なので、攻撃手段は限られていた。
「・・・(フェアリーロック!!)」
メイヒールの傍に茶色の妖精が出現すると、その茶色の妖精の中心へと岩のかけらが発生していく。
瞬く間に、ゴツゴツとした岩石を形成する。
大きさ、形、共にサッカーボールほどで、それが宙に浮いた状態になっていた。
すると、そこから真ん中にいるトサカ頭に向けて、まっすぐ飛んでいく。
まさに直線状の投石だった。
バゴォッン!!「んぐっ!!」
トサカ頭の顔面に、見事クリーンヒットし、その拍子に岩石は激しく砕け散って飛散する。
トサカ頭は、大きくよろめいて、後ろへ倒れそうだった。
左右横のドレッドヘアー頭とオールバック頭は、口を開けたまま、その様子を見ることしかできていない。
つまりは、突然仕掛けられた攻撃にまったく反応できていなかった。
一方、メイヒールは、「フェアリーロック」が威力不十分であることは、充分承知だった。
ズザァァッ!!
その3人に向けて、飛び出すように距離を詰める。
大きくのけぞっているトサカ頭の懐に入るかのように接近すると、メイヒールの一瞬の視線は、腰に付けられていたハンドアックスを捉える。
バッ!!ドン!!
すると、トサカ頭を片手で突き飛ばすと同時に、腰のハンドアックスを抜き取る。
間髪入れず、バックステップ。
いったん、間隔を開けた。
ドサッ!!
メイヒールのバックステップ終了と同時に、トサカ頭は、後頭部から倒れた。
その時、初めてドレッドヘアー頭とオールバック頭は、目の前のメイヒールの方へと顔を向けた。
やっと状況を理解した瞬間だった。
だが、すでにその時には、メイヒールは攻撃へ移っていた。
片手でハンドアックスを持ち直すと、強く握る。
そして楕円を描くようにしてぐるっと回り、その勢いでドレッドヘアー頭を切りつける!!
ブウゥン・・・ヅシイィ!!ガ、ガッ、ヅスゥン!
ハンドアックスは、見事ドレッドヘアー頭の首元に命中し、いい角度から斜めに切りつける。
途中、引っかかるように切りつけがノックしたが、メイヒールは無理矢理、最後まで切り抜いた。
ブシュッチイィィ!!
ドレッドヘアー頭の血が飛散し、首から流血させながらドタッ!と勢いよく倒れ込んだ。
その時にはもう死んでいた。
そしてテンポよく、すでにメイヒールは、オールバック頭の方へと体を向けて、姿を捉えていた。
そこから、一気に近づく。
オールバック頭は、立て続けに二人が一瞬でやられる光景に、ただ圧倒される。
迫るメイヒールに、顔の前で腕をクロスさせて、ガードの体勢を見せるのが精一杯だった。
ザアアァァァッ!!
メイヒールは、足で砂埃を舞わしながらブレーキをきかせると、そのオールバック頭の側面に回る。
そして、そこから裏膝を切りつける。
ズコンッ・・・ヅシィィ!!
「ぐごおおおッ!!」
流れるような一連の動作は、美しいほどで、今度は流暢に切りつけが決まる。
オールバック頭は、何が起きたのかわからないレベルで片膝をつく。
その衝撃と痛みで自然と、ガードもだらっと解かれる。
「これでっ・・・!」
メイヒールはその膝をついた状態のオールバック頭に向けてトドメを刺す。
フウゥン・・・ヅッサァン!!
今度は、ノックすることなく綺麗に首を切りつけた。
「・・・ぁぁ・・・ぁ・・・」
オールバック頭は、息の根を発しながらバタッと顔面から倒れた。
ちょうど、うつぶせのような形となって、そこから血が地面に広がる。
首の痛々しい傷からトクトクと流れているのが確認できる。
倒し終えたメイヒールは、べっとり血のついたハンドアックスを片手に持ったまま、ふぅと息をついた。
「なんとか、大事になる前に、無力化できましたか・・・。それにしても・・・。」
片手で汗をぬぐいながら、そう呟くと、ハンドアックスを近づけて見る。
(以外と、こういう武器もしっくりきますね。)
メイヒールは、今までハンドアックスなど使ったことがなかったが、今回咄嗟に使って以外と自分に合うとふっと思った。
ナイフや針、弓矢などとはまた違った戦闘アプローチができるかもしれないと芽生えた瞬間だった。
(・・・これ以上、発見されないように気をつけなくては・・・。)
そして、メイヒールがそこから立ち去ろうと何気なく周囲を見渡した瞬間だった。
「まだ残ってっ・・・!?」
まだ、そこに敵が残っていたことに気づいた。
その一人は、3人と離れた位置にいたため今まで気づかなかった。
リーゼント頭は、怯えきった顔でありながらも、ポケットから笛を取り出して吹く寸前だった。
メイヒールが、次の行動に移るにはもう遅かった。
ピーーーーーーーー!!!
その状況下で吹かれた笛の意味は、誰でもわかる。
敵を知らせる笛だった。
(しまっ・・・!)
メイヒールは、吹かれてしまった笛の音に最大の危機を感じると同時に、体が反射的に動いていた。
ブオォン!!・・・スゥン!スゥン!スゥン!・・・
片手で持っていたハンドアックスを、そのリーゼント頭に向けて投射した。
ハンドアックスは、縦に回転して、風を切る音を発生させながら、リーゼント頭に一直線。
だが、メイヒールにとってその敵を倒すことは、すでに手遅れともいえていた。
メイヒールは、命中を確認することもなく、村の方向へ向けて全力疾走で飛び出していた。
すでに笛の音は、響き渡ってしまった。
距離を少しでも離して、逃げ切るしかない。
そうせざるを得なかった。
ピーー!ヅゴッ!!ピィィィ~~・・・
メイヒールが背を向けて逃げ出したと同時に、ハンドアックスがリーゼント頭に命中した。
薪割りのように刺さり、笛の音は止んだ。
ハンドアックスが頭部に刺さったままのリーゼント頭は後ろへドタンッ!!と倒れて、笛が転がる。
遅れて血が地面へと流れる。
「・・・・・・。」
自分は死んでしまった。
だが、その最後の行動は、事態を動かせる。
笛の音は、もちろんヒドウのところまで含めて、野郎共全員に聞き渡った。
「・・・うぅっ・・・・・・。」
そしてまた、笛の音は気絶したままだったトサカ頭の目を開けさせたのだった。




