偶然なる出くわし
(少し、落ち着いてきました・・・これなら何とか・・・)
フェアリーセンスが切れた後、ちょっとの間、木の枝でしゃがんでいたメイヒールは、そう思った。
偵察で得た情報を今すぐにでも無事に持ち帰らなければならない。
そう強く責任感を感じながら、すぅと立ち上がる。
(・・・・・・。)
メイヒールは、その木の高い位置から下を見る。
暗く茂んでいて、地面まではよく見えない。
その時、村に帰ったら、情報を伝えるだけでなく、ゲンエイガハラ村として対策を講じなければならないと頭の中に浮かんだ。
あの大勢を迎え撃つのは大前提に、村の被害すなわち村民たちの命を何としても守ることを考えなければならなかった。
(・・・どうやらあの”通路”使う時がきたようですね・・・。こんなこと考えたくありませんでしたが・・・。)
メイヒールは、深刻な表情を見せる。
同時に、二つのことが思考される。
(戦うのは・・・私たちがすればいい。でも、全員が生き延びるためには・・・)
迎え撃つこと、それはメイヒール自身含めた、グールフ、ファイと共に村を守ることにあった。
たった3人で。
(・・・不幸中の幸いといったところでしょうか。それにしても早速、請うことになるなんて・・・)
だが、それは”本来”ならといえた。
今は、偶然にもルークド、マリ、ヤンという強力な3人が滞在している。
こちらは協力を請わざるを得ないし、頼めばあちらも力を貸してくれるということは、この濃密な数日で得た信頼から確信していた。
それは実力も含めて、精神的にも頼りがいがあった。
だが、メイヒールはそう感じる一方で、自分たち(村)だけの力では解決できないという不甲斐なさも感じていた。
結果的には、キングリメイカーとしての初めての団結ということになるが、まだ自分の口から正式に、ルークドたちに告げていない。
それは、グールフも同様だった。
そのため、まだどこかメイヒールは、ルークドたちから一歩引いた状態だった。
すなわち自分たちはゲンエイガハラ村の者、ルークドたちはキングリメイカーの者という一種の線を引いた区別意識があった。
さらに、その意識に引っ張られる。
(まだまだですね・・・。)
妖精魔法が、まだ未熟な自分。
そして、キングリメイカーでやっていくためにはもっとレベルを上げなければいけないと強く感じていた。
ルークドが、グールフを勧誘した時の言葉が、今になって再生される。
「い、いけませんね・・・この事は、すべてが終わってからに。」
メイヒールは、思わず呟いて、思考を停止させた。
事態が急ぐというときに、自信が無い自分が出てしまう。
目の前の事に集中しなければならないのに、他の事を考えてしまう。
それらを否定するためでもあった。
そしてメイヒールは切り替えるようにして、もう一方の思考に集中する。
(ここから村までなら、大勢であっても朝には確実に到着する。)
メイヒールは、さっきの、村のみんなが生き延びられる可能性について検討する。
目の前の大勢の野郎と村との距離は、それほどないということ、さらにそれまでに村のみんなを避難させられるか。
村の長として「生存通路」までの誘導を考えていた。
「生存通路」それは、ゲンエイガハラ村としての最終的な決断設備だった。
村の最深部にある大木の下には、地下道へと繋がる入り口がある。
地下道は、ゲンエイ街と直接繋がっており、つまりこの地下道を歩いて行けばゲンエイ街に出られるということだった。
先人たちが村の有事の際、個人個人が明日に生き延びるためという最終的な手段として築いた設備であり、死や捕らわれるのを避ける外の世界へとつなぐ地下道。
これを生存通路と呼んでいた。
ヤンが、門を壊して踏み入れた時、その場の全員が奥へ逃げたのはそのためだった。
(・・・・・・。)
そのことを念頭に置いて、メイヒールは枝から低い枝へと渡り下りていくのであった。
ーーー一方目立つ4人は、森林へと踏み入れていた。
「ゼェ、ゼェ、ゼェ、ゼェ・・・」
4人とも息が切れ、木に手をついて呼吸を整える。
死にそうに、ゆがめた顔を下に向けている。
走ってしんどいのだろう。
「以外とオレたちのこと誰も見てねぇな・・・」とトサカ頭が、複雑そうに言った。
「だが、そのおかげでここまで来れた。」
オールバック頭は、冷静に言う。
「ま、まぁそうだけどよ・・・なんつーか悲しいような・・・」
「あんなやつらどうでもいいしょっ。オレらがやつらをアウトオブ眼中・・・!!よろしく。」とドレッドヘアー頭が、緊張が解けたように言う。
「おぉ!!オレたちがすごすぎて、逆に目に付かないってやつだな!!う~ん、ありえるな・・・。」
3人が、そんな会話をしている間、ただリーゼント頭だけが何か不安そうに、野郎たちの方に視線を向けている。
「おい、どうした。そんな不安そうにして?オレたち逃げ切れたんだぞ!喜べ弟よ!!」
「べ、別に不安なんかしてねーよ。・・・ただよ・・・なんかよ、こういまいち安心できねぇってかよ・・・あー!わかんねぇ!!でも、この行動は正しいのかよ?オレはよ、悪目立ちの予感がするぜ・・・。」
リーゼント頭は、その頭とは裏腹に、自身は引っ込んでいる。
「なんだ、さっきまでの勇気はどうした?しょぼくれんなよ。・・・まぁ、いい。遠足は家に帰るまでが遠足という噂もあるしな。まだ、森の中だ。弟たちよ。怯えずこの兄貴についてこい。きっとこのまま直進すれば森を出られるはずだ!!お前たちより、長く生きている分、感もそれだけいい。方角などいらん。」
「じゃあ、行くか。」とオールバック頭が言う。
「魔物とか出てきてもワンパンしょっ。ステゴロ最強ッ!!HEY!!」とドレッドヘアー頭がテンションを上げる。
そして、トサカ頭を真ん中に、左右にオールバック頭とドレッドヘアー頭が並行に歩いていく。
「チッ・・・どうやったら、そこまで安心できんだよ。」
リーゼント頭は、舌打ちをしてポケットの中に手を入れて渋々、少し離れて後ろからついていく。
その状態で、数歩進んでから、トサカ頭は言う。
「オレたちは、あのキングリーパーから逃げてサボってやった!!ワハハハハハッ!!オレたちに見捨てられたキングリーパーには未来がなぁいッ!!」
達成感から舞い上がっているようだった。
その時だった。
ザッサアアアアアアアッ!!スタッ・・・
木がざわめくと、目先に上から何かが降ってきた。
「・・・・・・?」
野郎たちの方は、その正体に、気づいていない。
まさか、こんなところで出くわすなんて考えていなかったのだろう。
木の葉が空中を舞っている。
「・・・・・・!!」
それに対し、降ってきた者は着地すると同時に、すぐに背後に気配を感じ、首を横に向けて確認する。
両者がファーストコンタクトをした瞬間だった。
「・・・・・・ッ!!」
そう野郎たちと目が合った正体・・・メイヒールだった。




