逃げ出す者
ーーメイヒールがフェアリーセンスを使って、遠くにいるヘッターレとヒドウの会話を盗み聞きしている間のことだった。
酔いつぶれた野郎共の中に、その4人はいた。
その”ザコの野郎”4人は、全員が派手な髪型、色をして目立つ服を着て、さらに顔には、厳ついタトゥーが入っている。
そうした外見からは、4人それぞれが最大限個性を発揮し、外に向けてアピールするために気合いを入れてきた勝負姿と見受けられる。
「・・・・・・。」
そのうちの一人、酔いつぶれたフリをしていたトサカ頭のザコが目を、むっくりと開けた。
そして、同じく酔いつぶれたフリをしている3人の元に、芋虫のように動いて近づくと、コソコソと耳打ちをする。
「おい!・・・目ェ開けろ・・・!今がチャンスだ!逃げるぞ!!」
すると3人は目を開けて、伏せた状態で円陣を作る。
例えるなら、その様子は、修学旅行の際、寝静まった時間でも潜った布団でコソコソと話を続ける生徒だった。
「ここまで来て、マジで帰るのかよ・・・?目的地は、あとちょっと何だぜ?」
そう言ったのは、リーゼント頭 (のザコ)だった。
「あぁ・・・マジだ!これ以上こいつらと一緒に居れば、頭がイカレっちまう!!」
その時だった。
「でも、オレたちは、そんなイカレた野郎になるために、今回志願した。違うか?」
そう横から口を挟んだのは、オールバック頭 (のザコ)だった。
「正直・・・ここに、魂はないと思ってる。普通・・・帰るっしょ。」
さらにそう割り込んだのは、刈り込んだドレッドヘアー頭 (のザコ)だった。
すると、トサカ頭は、深呼吸をすると重々しく話し出す。
「・・・お前らの意見は充分に尊重したい。だがな・・・このオレ、長男としては何としても、守らなきゃいけねーものがある。・・・それはな、お前たちの命だ。」
「・・・・・・。」
他の3人は黙る。
トサカ頭は、話を続ける。
「あぁ・・・わかってるさ。そんな目で見るな。・・・なぁ、覚えてるか?2日前のことをさぁ。オレたちは、キングリーパーに入って、今回の初めての作戦でさ・・・目立って、結果出して、地位を上げっていってさぁ・・・絶対に楽な暮らしをしような!!って話、したよな・・・。」
そこでトサカ頭は、全員の目を見る。
「でも、どうだ・・・いざ入って、今回の作戦でわかっただろ!?こいつらはおかしいんだよ!!
足取りはバラバラ。魔物に襲われても、誰一人助けようとしない!!極めつけは、あのヒドウとかいうのが幹部だとッ!!ふざけるな!!あいつは、特に頭がおかしい!!オレたちは、もうついていけない!!オレはッ・・・!!出世よりお前たちの命のほうが大切だッ!!」
この派手な4人は、今回初めて駆り出されたキングリーパーの新米で、血が繋がっている実の兄弟だった。
キングリーパーでやっていくことに期待、希望を抱いていだが、今日初めて、現実を目の当たりにして心が折れていたのだ。
そのため、帰ろうとしていた。
「実を・・・言うとよ・・・オレもそう思っていたけどよ。認めるのが怖くて、怖くて仕方がなかったんだ・・・。でも、兄貴の熱い思いのおかげで勇気づけられたぜ・・・。もう帰ろう。」
そうリーゼント頭は、物思いをしながら呟いた。
「・・・イカれたやつ・・・か・・・。確かに、オレたちの目指すイカれた方向ではなかったかもな・・・。仲間を見捨てるやつは、嫌いだ。」とオールバック頭は、言う。
「これで決まりしょっ。キングリーパーで、かっこいいのはボルさんだけ。後は、クソ。」とドレッドヘアー頭は言う。
「弟たち。ありがとう・・・!!そうだな。キングリーパーでかっこいいのは、ボルさんだけ。お前のその格好、本人みたいでかっこいいいぜ。」
トサカ頭は、ドレッドヘアー頭を褒めた。
「じゃあ、ここから逃げよう。弟たちよ!!今がちょうどチャンスだ。他のやつは、酔いつぶれている。」
「でもよ・・・勝手にいなくなったらすぐにわかるんじゃねぇか?」とリーゼント頭が不安そうに言う。
「ここに来るまで、何人いなくなっていると思ってる。今更4人減ったぐらい問題ねぇよ。」
「確かに・・・そうだな。」
「とりあえず、あっちの森林の方に逃げよう。いいな?・・・ここを逃げ切ったらオレたちだけの・・・いや、後にするか。」
トサカ頭がそう言い、目指すべき方向を指差した。
他の3人は頷き、勢いよく立ち上がる。
「オレたち4人は、連れションへ行く!!」
トサカ頭が、そう叫ぶと、一斉に4人は森林に向け猛ダッシュする。
その4人を気に止めるものは誰一人いない。
無事に帰れそうだ。




