偵察Ⅱ ~ダークエルフ~
メイヒールは、全身鎧男と小さい男の会話を聞く。
「おい、ヘッターレ。村はまだ着かねぇのか!?そろそろ、フリン嬢(斧)が疼いているんだよッ!!オラァッ!!」
全身鎧男はバリスタをイジイジしながら、小さい男すなわちヘッターレに尋ねる。
くたびれた顔をしていたヘッターレだったが、尋ねられたため、嫌々そうに、地図を取り出して場所を確認する。
「もう後少しで(着きま)すから・・・もうちょっと、もうちょっとで・・・(サボれる)」
ヘッターレは、疲れ切って覇気がなかった一方、ゲンエイガハラ村にたどり着けさえすれば、後は乱獲の様子を静観しているだけでいいという希望もあった。
なんせ力仕事は、自分の領分ではない。
「あっ、ヒドウさん。今回の目的ちゃんと分かってますよねぇ・・・?村民の虐殺ではなくて、乱獲ですからね?ちゃんと、生きて捕らえないと金になりませんからね?そこんとこよろしくお願いしますぜぇ・・・。」
そのヘッターレの言葉を聞いて、ヒドウはバイザーを上げた。
「そんなことはわかってんだよッ!!」
「ヒッ・・・!」
ヘッターレは、びくついてしまった。
ヒドウは、バイザーを下ろす。
「・・・お前は、虫の頭をしている。虫にも理解できるようにオレが話してやろう。お前みたいな虫野郎と会話を成立させることができるオレの慈悲に感謝しろ。」
「・・・・・・ハイ、ありがとうございます・・・。(・・・。)」
「オレはな、こう見ている。ゲンエイガハラ村とかいう芋臭い名前の村に着けば、早々オレたちに攻撃が飛んでくる。すなわちィッ!!抵抗がある!!オレたちは決して歓迎されていないッ!!」
「・・・おっしゃる通りです。(そのためにわざわざ、お前を連れてきたんだろうが!!)」
「だから、抵抗するやつはオレが、フリン嬢で斬首する。それでいいな?」
「えぇ・・・是非ともそうしてもらいたいのですが・・・一つだけキングリーパー幹部会から伝えられていることがありまして・・・。」
「あぁん?幹部会?オレも幹部の一人だぞ?」
「わかってますよ・・・。だから、あまり説明は不要だと思いますが・・・半端物たちの中でもエルフだけは全員、何があっても綺麗なまま生け捕りするようにと・・・。」
ヒドウは、数秒考え込んで、黙っていた。
同時に、メンテナンスの手を止めた。
「・・・?おいィ!!虫の論理はわからねぇ。ちゃんと説明しろ。」
「えっ?幹部なら、もちろんアンネ嬢のことは知って・・・ますよね?」
「はぁ?誰だ?そいつ?新手の虫か?」
「えぇっ・・・まさか、幹部総会に出席したことがないとか・・・」
「ねぇよバカ野郎!!」
「えええぇぇぇッ!!」
「・・・グハハハハハッ!!総会とか出席するわけねぇだろ、バーカ!!グハハハハハハハッ!!バカ兄貴はたまに顔出してたみたいだけどなッ!!グハハハハハハハハッ!!」
「・・・(だからか・・・。)」
その時、ヘッターレは、ヒドウがキングリーパーの幹部の中でも使い捨てにされる理由がわかった。
「じゃあ・・・もしかしてザンギャクさんが死んだことも知らないんですかぜぇ?しかも敵対勢力にやられたみた・・・」
それを聞いたヒドウの笑いがぴたりと止んで、バイザーを上げる。
「・・・・・・何だと?バカ兄貴が死んだ?」
ヘッターレは、粛々と頷いた。
「・・・・・・。」
「グハハハハハハハハハハッ!!グッバイクソ兄貴!!せいぜい、クソに生まれ変わって、精々クソを全うすることだなッ!!グハハハハハハハハッ!!・・・・・・で?アンネって誰だ?教えろオラァッ!!」
「(まったく、何も感じてねぇ・・・。)あぁ・・・話を戻すとですねぇ。」
ヒドウの様子は、少しも変わらず、バイザーを下ろした。
ヘッターレは、先ほどの話に戻す。
「・・・えーっとですね・・・アンネ嬢は、自身がエルフなんです。それにも関わらず、キングテレトリー中のエルフを捕獲して、そのエルフたちを売り物にしてるんです。すなわち商売道具ってやつですぜい。」
ヒドウは、黙って聞いていた。
「・・・その商売ってのを簡単に説明しますと、エルフたちに酒をつがせているってことです。そして、そのすべての店の経営がアンネ嬢ってことで・・・」
ーーーメイヒールは、そこまで聞いていてもっとも衝撃を受けた。
耳を疑うしかなかった。
(・・・そんな・・・ッ!信じられ・・・ない・・・。)
その衝撃は、メイヒールにショックを与える。
半端物という中で自分と同じである他のエルフが、そんな扱いを受けているとは。
さらに、それを支配する側もキングリーパーのアンネという女エルフということ。
エルフがエルフを迫害する。
これは、ゲンエイガハラ村という狭い世界で生きてきたメイヒールにとってあまりにも受け入れがたい事実だった。
外の世界の広さ、同時に今まで自分はまだエルフの中でも恵まれていたほうなのかと痛感するしかなかった。
メイヒールは、かなりの動揺を見せるが、まだ偵察は終わっていないと言い聞かせ、引き続きフェアリーセンスで聞き取る。
「・・・とまぁそういう理由で、エルフは綺麗な状態で絶対に生け捕りってわけなんです。アンネ嬢の店の収益は、キングリーパーの資金にもなりますから、今回の幹部会の命令だと思いますぜぇ。」
「ふ~ん。まぁ・・・どうでもいいがよぉ!!つまり、エルフは高値で、そのアンネとかいうメスバカエルフに買い取ってもらえるわけだな。今回は、オレを束縛する命令に従ってやらんこともないッ!!」
その時ヘッターレは、ヒドウがアンネの事を”メスバカエルフ”といったことに少しムッという怒りの感情が顔に出てしまった。
「・・・おい、何だよ。お前は、そんなメスバカエルフのことが好きなのか?」
「・・・そりゃあ、あの姿形に、男勝りなサバサバな性格、すべてを勘違いさせそうなほどの積極性!!そして何よりもエルフでありながらもエルフに対してする酷い行い!!まさに通称どおりの”ダークエルフ”・・・誰でも骨抜きにされたいですぜぇ!!俺様だって・・・少しぐらいはお近づきにッ・・・!(しまった・・・)」
ヘッターレは、その時、高揚感溢れる様子でアンネに対する自身の感情を口に出してしまったことを後悔した。
「っと・・・キングリーパーの下の者たちはみんなそういいますぜぇ・・・。(ふ~あぶね~あぶね~)」
「そうか・・・もしお前がそう思っていたなら、今度、同じ幹部として伝えてやろうと思ったが・・・。やっぱりお前は虫ではなかったようだ。その調子で硬派を貫けよぉ!!ヘッターレッ!!グハハハハハハハッ!!」
「・・・へぇ・・・い(クソッ!ヒドウの好感度上げてどうすんだよっ!!俺様のバカ!!せっかくのチャンスがぁ・・・)」
ヘッターレは悲しい顔を見せた。
ーーーそのヘッターレの悲しい顔が視界に映っている時だった。
(・・・!?そんなっ!こんなときにっ・・・!)
メイヒールのフェアリーセンスが解除された。
というよりは、切れてしまった。
(・・・やっぱりまだまだ・・・。)
メイヒールは、自身でまだ妖精魔法が不得意だとわかっていた。
妖精との調和がうまくいかないのか、力量不足か・・・いずれにしろ不安定だった。
それゆえフェアリーセンスも長時間使うのは難しく、そこで切れてしまった。
(・・・仕方がありませんね。・・・とりあえず、ここまでのようです・・・。)
メイヒールは、そう思いながら、ふらついた視界の中、目を閉じて、頭痛に蝕まれるように頭を手で押さえる。
例えるなら、度が合わない眼鏡を外した後の感じで、少しその枝から動けなかった。
一刻も早く得た情報を持ち帰らなければいけなかったが、回復を待つしかなかった。




