偵察Ⅰ ~野郎共~
メイヒールは、森の中を高速で駆けていく。
高速な動きではあるが、ドタドタというような派手な足音はなく、スタスタと軽い最小限の走りだった。
フェアリーセンスもまだ続いている。
「・・・・・・。」
メイヒールは、数十分、森の中を走り続けると、いよいよ木から眺望したその場所に近づいてきたことを感じる。
その一帯は、森の中をポツンと切り開かれた場所で、障害物が少ない。
例えるなら、ゴルフ場で、だからこそ、あの武装した野郎たちはその地点で野営しているともいえた。
(・・・巡回している者はいない。)
メイヒールは、木々が少なくなってきた地点から辺りを探りながらゆっくり歩いていく。
野営地周辺の森で巡回しているものはいなかった。
(これならもっと近づける。・・・完全に手薄ですね。)
メイヒールは、より近づくために巡回網を抜けなければいけないと思っていたが、巡回網などなかった。
野営地と森の境界地点ギリギリのところまで突き進む。
それ以上は、さっき触れた通り、障害物が少なく見晴らしのいい場所なので、すぐさまに発見される。
(ここなら・・・。)
メイヒールは、その境界地点のある1本の木の枝にスタッ・・・と登った。
目の前には、数本の木々のカモフラージュがあるだけで、かなりギリギリを攻める偵察の位置取りだった。
息を殺し、じっと暗闇に潜む。
そして、そこから偵察を始める。
(これは・・・)
たき火から遠い野郎たち、つまりメイヒールから近い距離の野郎たちはみんな酔いつぶれ、地面で寝ている。
全員が、ぐったりとしていて、死んでいるのか生きているのか分からない。
それに対し、たき火近くの野郎たちは、ドンチャン騒ぎをして意気揚々としている。
賭け事をしたり、ファイトクラブのように殴り合いの喧嘩をしていた。
野次馬は、大きな声で騒いで煽っている。
それがいくつもあって、その音がフェアリーセンスからは、大きな波となって視覚化されている。
(醜い・・・。)
その全体の印象としては、統制が取れていない様子で、メイヒールが木からの眺望で感じ取った通り、ゴロツキの集団他ならない。
重要な情報を一つ得た。
(一人一人自体は・・・たいしたことが無い。ですがこのっ・・・!)
ザコの集まりだとわかった。
だが、改めて目の前に映る全員が村に向かってくることを考えると、かなりの脅威だった。
「ゴクッ・・・。」
メイヒールは、その数に圧倒される。
汗が流れ落ちる。
(・・・数は、少なくとも200以上・・・ッ!これほどの数が、村に向かってくるとなると被害は避けられない・・・!)
フェアリーセンスで生命体がライトアップされて映るため、夜でも鮮明に見える。
いちいち数えたわけではなかったが、大体を把握する。
(あそこにいるのは・・・ヘルドッグ・・・。10匹!!)
伏せて寝ている危険種の魔物ヘルドッグ10匹を、その時見つけた。
メイヒールは、鼓動が速くなるのを感じるが、何とか冷静を保つ。
偵察に集中する。
(兵隊が200以上、ヘルドッグが10。かなりの戦力に違いありません・・・。)
重要な情報を一つ得た。
そして、メイヒールはさっきから気になっている、一際存在感を放つ者に意識を向ける。
フェアリーセンスもその全身鎧男の存在感、オーラを告げている。
(あの者は・・・おそらく、リーダー格!)
全身鎧男は、たき火のすぐそばの岩に腰掛け、バリスタのメンテナンスをしていた。
何やら、そばにいる小さい男と話している様子だったので、メイヒールは、さらなる情報を得るために、その二者の会話に意識と視界を向ける。
他のドンチャン騒ぎの音を遮断して、その二者に焦点を当て、ズームアップする。
その状態は、ちょうど二者の会話をすぐ横で聞いているかのような状態で、距離があっても筒抜けだった。
(きっと何か得られるはず・・・!)
メイヒールは、集中状態に入った。
だが、それは同時に、その二者以外の情報が入ってこないことと同義で、今のメイヒールは灯台下暗し状態といえた。




