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キングテレトリー  作者: フクツノタロウ
ゲンエイガハラ村編ーⅠ
109/281

木の眺望

グールフとメイヒールは、歩いて、着実に煙が上り立つ場所へと近づいていた。

すると、突然メイヒールが立ち止まる。


「・・・・・・。」


メイヒールのその立ち止まって、どこか遠くに意識を向けているような様子は、傍から見ると不思議な行動だった。


「どうした?」


グールフは、そんなメイヒールに声を掛ける。

するとメイヒールは、片方の手の人差し指を立てて、唇にくっつける”静かに”というジェスチャーをする。

その状態で、数秒ほど経過する。


「・・・聞こえますか?」


メイヒールは、グールフに問いかけた。

その問いかけに反応するように、グールフは、目を閉じて聞き取りに集中する。


「・・・・・・!」


耳がピクピクと反応する。

グールフは、メイヒールほど鮮明に感じ取ったわけではないが、何かを察知する。


「騒がしい声が・・・する。」


「同じです。・・・どうやら煙の近くにいるのは、村の者ではないようです。」


「なんだと・・・では、何者だ。」


「ここからでは、完全にとはわかりませんが、何かおぞましい者の声・・・それもかなりの大人数の声がします。」


「・・・まさか・・・侵入者というわけか。」


グールフは、少し興奮気味で言う。


「・・・その可能性が高いですね。・・・ちょうどあの高い木に登って上から見てみましょう。少し距離はありますが、正体の全体像は掴めるはずです。」


メイヒールは、高い木の方を指差して、グールフに言った。

メイヒールの的確に取るべき行動を冷静に判断する様子は、実戦感覚の具合が表れていた。

同時に戦闘力だけではないゲンエイガハラ村の長という立場につけている理由が見て取れる瞬間だった。


グールフは頷いてメイヒールの指示に従う。


二人は、その高い木の近くまで来ると、登り始める。

メイヒールは、俊敏な動きで軽々と、枝から枝へとジャンプして、高いところに上っていく。

慣れた動きに加え、身体能力の高さを感じさせる。


「・・・。」


あっという間に一番高いところの枝まで上ると、煙の立っている方を眺望する。

よく見える。


メイヒールが、そこにつくと今度は、グールフが上り始める。


バキィ!!パキキキ!!バギギギィィ!!


グールフは、最初に壁キックの要領で、別の木の幹を使って三角飛びをする。

そこから、目的の木に飛び移り、枝から枝へと激しく、派手な動作で飛び移っていく。

その上り方は、メイヒールと対照的で、幹に足の爪を食い込ませ、無理矢理削り取り、飛び移った太い枝が、グールフの体重によって折れそうなほど大きくしなる。

そのせいで、木くずと大きな音が発生する。


ギギギギギィ!!ビギギイィ、ドスン!


最後は、両手で枝を掴んで、クルッと鉄棒のように回って僅かに滞空する。

それによって勢いを殺し、メイヒールと同じ枝に着地する。

グールフが乗ったせいで、枝がしなって、きしむ音を立てる。

グールフも、その煙の方へと視線をやる。


「・・・!」


そこには、衝撃の風景が広がっていた。


「・・・なんだ・・・あいつらはッ・・・!」


グールフは、牙をむき出しに、そう言った。


メイヒールとグールフの二人が、その高い木の枝から見たもの・・・それは、大木をたき火にして、その周りに上からざっと見て、数百人の武装した野郎共が、野営しているという風景だった。

煙の正体は、そのたき火だった。


「・・・・・・。」


今までに見たことがない侵入者の数に、グールフ、メイヒールは、思わず圧倒され、黙ってしまう。

汗がスウゥゥ・・・と流れて落ちる。

そこでグールフは、ハッと何かを気づく。


「・・・このタイミングにして、この数の侵入者。やはり、あいつらは密偵か何かだったかッ・・・!!」


それは、ルークドたち3人のことを示していた。

グールフは、その時、してやられた!という後悔と信用を裏切られたような憤慨で「獣化」のような顔つきで、怒りを露わにする。

だが、メイヒールは冷静だった。


「フェアリーセンス・・・!」


メイヒールがそう言うと、神々しい黄色の妖精が出現し、浮遊する。

そして、メイヒールの胸の中に、すり抜けるようにして取り込まれていった。

すると、メイヒールの目が僅かに、発光し、知覚が強化される。

視界に映るすべての生命体が、色でライトアップされ、音が波になって見える。

さらに接近すれば、物越しでも透視して、生命体を捉えることをもできる。


その状態になったメイヒールは、侵入者たちのほうをじっと見る。

遠くの対象物でもよく見える。


「・・・・・・。」


フェアリーセンスは、妖精の感覚を身に宿すという技だった。

妖精の感覚は鋭い。

マリに対して使ったブラインドフラッシュといい、神々しい黄色の妖精は、攻撃系ではなく補助系統の妖精といえた。


「・・・とても、あの方々3人と、同じには見えません。・・・それどころかあの侵入者たちは、卑しく、賤劣せんれつな存在にも見えます。絶対にマリたちとは関係がありません。」


きっぱり、グールフの発言を否定した。

その時の、メイヒールの様子は、揺らぎない自信が出ていた。

フェアリーセンスの知覚強化によるものか、あるいはメイヒール自身に元々備わっている、人を見極める機微な感覚によるものか。

いずれにしろ、メイヒールの全感覚が、裏付けていた。

メイヒールが、マリを村に案内したのも様々な理由以上に、こういう感覚的なものが働いていたからかもしれないといえた。


「・・・・・・だが、あいつらを疑わざるを得なくなった。」


メイヒールのその目を見て、グールフは、冷静さを取り戻す。

だが、心の内では仮にルークドたちが密偵だった場合の憤りもまだある。

なので、一時的にしまわれているだけといえた。


「・・・いずれにしろ、あの者たちは、村を目的としているのが明確です。・・・グールフは、村のみんなに、この事を伝えて。・・・私はもっと、近づいて偵察をしてきます。」


「・・・・・・気をつけろ。」


グールフが、メイヒールに背を向けて木から下りようとする時だった。


「グールフ・・・!」


「・・・なんだ。」


さっきからグールフの言葉には、トゲがある。


「絶対に、あの方々には、手を出さないで下さい・・・!」


メイヒールは、それを感じ取り、先に釘を刺した。


「・・・それは、あいつら次第だな・・・。」


グールフは、振り向きざまに、眼光を光らせてそれだけを言い残すと、枝からジャンプして下りる。


バキキキキキィィィ!!ドスゥゥゥン!!


枝を体に当てていき、地面に激しく砂埃を発生させて着地すると、村の方向へと駆けていった。


「・・・。」


枝の上に乗ったままの、メイヒールは、心配そうな表情で、村のほうを見る。

だが、そうも言ってられない。


メイヒールは、すぐに侵入者の方向へ、首を向けると視線を送る。

あの武装した兵隊が、村に向かってくる。

これは、ゲンエイガハラ村にとって明らかに前代未聞の緊急事態だった。


(今は・・・とりあえず偵察を急ぎましょう・・・!)


メイヒールは、自分に言い聞かせるようにして、気持ちを切り替えると、緊張の面持ちで、木を降りていく・・・。
































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