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キングテレトリー  作者: フクツノタロウ
ゲンエイガハラ村編ーⅠ
106/281

過去話

日も落ちて、そろそろ1日の終わりを感じさせる頃。

運命ゲームをし終わった後、ファイとキャアシーは、自分の家に帰ることにした。

結局、グールフとメイヒールは戻ることはなく、とりあえず明日を待つしかなかった。

集会所の大広間に残ったルークド、マリ、ヤンは、もう一晩そこで過ごすこととなった。


「結局グールフとメイヒール、あれから姿を現さなかったわね・・・。」とマリは不安そうに言う。


「心配か?マリ殿。」


「まぁね。だって、グールフはともかくとして、メイヒールがあんな動揺を見せることなんてなかったんだもん。」


「旅立ちの前とはそういうものだ。期待半分、不安半分。」


ヤンが、何やらメイヒールの心情を理解できるというようなことを言う。


「な~に知ったかしてんのよ。メイヒールがキングリメイカーに来るとは限らないでしょ。」


「・・・・・・拙者には、葛藤のようなものが感じられたが。」


そこで聞いていたルークドが、呟く。


「俺も、初めてノルスが来たときは、まさか自分がキングリメイカーに入るとは思わなかったな。一生、デサン村で終えると思っていたが・・・わからないもんだな。」


「えっ?あんたのところに、ノルスさん直々に来たの?」


ルークドの呟きに、マリが食いつく。


「あぁ・・・最初は追い返したけど、2回目の時に、オックス教授とライネットを連れてきた時は、さすがに・・・」


そこまで途中で言いかけていたときにマリが、口を挟む。


「なっ・・・なんであんただけ特別待遇なのよ!」


「は、はぁ?知らねぇよ。でも、それからいろいろあったのは確かだ・・・。あんなことは、二度と御免だな。」


「もしよかったらルークド殿の過去、聞かせてくれないか?」


「えっ、(以外と興味あるんだな・・・)まぁ、話してもいいが・・・ちょっと暗い雰囲気になるぜ。」


そこからマリとヤンは、ルークドの話に聞き入る体勢に入る。

他人の過去に興味を持つこと、それはお互いの絆が深まっているということの表れだった。

そしてルークドは、デサン村の出来事を話し始める。

自分の過去のことをこうして話すのは初めての経験だった。


ーーー時間が経って話終えた。


「・・・ルークド殿にそんなことがあったとは・・・。」


ヤンは、重々しく頷いて、受け止めていた。


「・・・・・・。」


マリは、何も言わないが、明らか涙目で、泣くのを堪えている。

というより、鼻水を何回もすすり、それはもう泣いているといえた。


「なんだよ、泣くなら泣けよ。そんな中途半端に堪えやがって・・・。」


そんなマリに対してルークドは茶化す。


「うっ、うっさい!・・・全然、泣いてないしッ!グスッ・・・次、ヤン!!」


マリは、泣いているのをごまかすように、ヤンに話を振る。

いつしか、過去を語り合うムードになっていた。


「ルークド殿には、すでに洞窟で話した内容だが・・・」


ヤンは、ルークドに洞窟で話した自分の過去を話す。


ーーヤンは、話続ける。


「・・・それから後は、一人旅で各地を遍歴した。ソン=ウーの情報を集めるという目的もあったが。」


「そして、キングリメイカーに?」とルークドは聞く。


「あぁ、旅の終着地点は、偶然にもキングリメイカーの拠点だった。そこで拙者は導きを感じ、目の前の門に入ることにした。・・・ノルス殿は、拙者を見てすぐに承諾してくれた。」


ヤンは、話終えると、マリを見る。


「次は、マリ殿。」


「やっぱ、話さなきゃ・・・ダメ?」


「当たり前だろ。」


ルークドが、素早く切り返す。


「うっ・・・いいわ、話してあげる。よく聞きなさい。」


マリは、自身の過去を話始める。


「実は私、盗賊に育てられたのよ。」


その一言を発せられた瞬間、ルークドとヤンは何やら納得する素振りを見せる。


「どおりで育ちが悪いんだな!!」とルークドが笑顔で言う。


マリは、イラついた表情を見せるが、何とか抑える。


「・・・残念だけど、ルークド。私は、名家の生まれなのよね~。だ・か・ら、血そのものは、高貴なの。」


「・・・はっ?今、盗賊に育てられたって・・・」


うじより育ちともいうが・・・」


ルークドとヤンは、それぞれにツッコむ。

だが、そこからマリは、シリアスな表情になる。


「まだ、私が赤ちゃんの時のことよ。名家で生まれた私は、盗賊に捕らわれたの。だから、両親はわからない。・・・たぶん、その時、盗賊に殺されてると思う。」


ルークドとヤンは、だまって聞く。


「そして、盗賊に捕らえられた私は、今度は育ての盗賊に拾われたの。」


「それって、つまり別の盗賊が最初の盗賊からお前を盗んだってことか?」とルークドは聞く。


「そう。私を育てたほうの盗賊は、いわゆる盗賊からしか盗まない義賊みたいなもの。・・・そこで生きる術を教えてもらったわ。」


「・・・で、いろいろあって、私一人になって・・・。」


マリの口が重い。


「明日を生きるために、必死にね。・・・でね!ある街で、スリをした相手が、イーサンさんだったの。」


「よく、屈強なイーサン相手にスリをしようと思ったな。ただでさえ、強そうなオーラ出てるのに。」


ルークドは、慎重に口を挟んだ。


「し、仕方なかったの!・・・で、そこで度胸を買われて、キングリメイカーにくることになったってわけ!はい、私の話おしまい!」


マリは、それ以上話したくなかったのか、話を無理矢理終えた。

全員の過去話が終わった。


「それぞれの背景が聞けてよかった。」とヤンは、ニヤッと笑った。


「そうだな。いろいろと聞けてよかったぜ。・・・じゃあ、もう夜だし、明日に備えて今日は解散とするか。ちなみに、この村での最後の夜だからな。」


そのルークドの提案に、全員が頷いて、それぞれ部屋へ散っていく。

ただ、マリは最後まで大広間に残って、何かを考えていた。


(私を捕らえた・・・盗賊は、ただの盗賊じゃないんだよね・・・。)


マリは、さっき話していないことについて、物思いをする。


(名家から、それも女児ばかり盗む盗賊。そして、私の育ての盗賊をみな殺しにしたあの少女たち・・・

この二つの事実を考えれば・・・きっと、私を狂わせたすべての元凶に「婦人会ふじんかい」がいる。)


マリは、キングリメイカーにきてから、一人ずっと図書館で調べていたことがある。

それは、キングテレトリー反抗組織についてだった。

反抗組織について学科ではやらなかったが、マリにとって重要なことだった。


(確か・・・あの時のページは・・・。)


マリは、その時のページを思い出す。


キングテレトリーの悪名高く、軍にも反抗する組織は4団体ある。

その中の一角に、「婦人会」がある。

その目的としては、キングは男といわれるところから、そのキングを殺し、女のキング女王クイーンを立てるべきという過激組織。

婦人会トップのマダム・キョーコを筆頭に、組織は全員女。特に、少女を中心に構成されている。


騎士ナイトの娘が何とか書いてたけど・・・私にはわからないわね。)


マダム・キョーコの娘は、騎士ナイトの力、「女帝じょてい」を有するという。

その存在は、キングテレトリー軍でも確認されているが、マダム・キョーコの本当の娘なのかという懐疑説がある。


ただマリにとって重要なのは、名家を襲い続けた盗賊の親元には、婦人会の存在があったこと。

さらに、それを食い止めるように活動していた育ての盗賊が、その婦人会の少女部隊に自分の目の前で殺されたということ。

自身でも驚くほどの水の魔法の才能は、名家の血を裏付ける。

本当に盗賊出身なら、ここまで魔法を使えないだろうとマリは断定していた。

そのため初めてのイーサンとの訓練の時から、戦い方は随分と変わってしまった。


キングリメイカーにきてから、マリは自分のすべての要素が線で繋がった。

その線の先は・・・婦人会だった。



















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