過去話
日も落ちて、そろそろ1日の終わりを感じさせる頃。
運命ゲームをし終わった後、ファイとキャアシーは、自分の家に帰ることにした。
結局、グールフとメイヒールは戻ることはなく、とりあえず明日を待つしかなかった。
集会所の大広間に残ったルークド、マリ、ヤンは、もう一晩そこで過ごすこととなった。
「結局グールフとメイヒール、あれから姿を現さなかったわね・・・。」とマリは不安そうに言う。
「心配か?マリ殿。」
「まぁね。だって、グールフはともかくとして、メイヒールがあんな動揺を見せることなんてなかったんだもん。」
「旅立ちの前とはそういうものだ。期待半分、不安半分。」
ヤンが、何やらメイヒールの心情を理解できるというようなことを言う。
「な~に知ったかしてんのよ。メイヒールがキングリメイカーに来るとは限らないでしょ。」
「・・・・・・拙者には、葛藤のようなものが感じられたが。」
そこで聞いていたルークドが、呟く。
「俺も、初めてノルスが来たときは、まさか自分がキングリメイカーに入るとは思わなかったな。一生、デサン村で終えると思っていたが・・・わからないもんだな。」
「えっ?あんたのところに、ノルスさん直々に来たの?」
ルークドの呟きに、マリが食いつく。
「あぁ・・・最初は追い返したけど、2回目の時に、オックス教授とライネットを連れてきた時は、さすがに・・・」
そこまで途中で言いかけていたときにマリが、口を挟む。
「なっ・・・なんであんただけ特別待遇なのよ!」
「は、はぁ?知らねぇよ。でも、それからいろいろあったのは確かだ・・・。あんなことは、二度と御免だな。」
「もしよかったらルークド殿の過去、聞かせてくれないか?」
「えっ、(以外と興味あるんだな・・・)まぁ、話してもいいが・・・ちょっと暗い雰囲気になるぜ。」
そこからマリとヤンは、ルークドの話に聞き入る体勢に入る。
他人の過去に興味を持つこと、それはお互いの絆が深まっているということの表れだった。
そしてルークドは、デサン村の出来事を話し始める。
自分の過去のことをこうして話すのは初めての経験だった。
ーーー時間が経って話終えた。
「・・・ルークド殿にそんなことがあったとは・・・。」
ヤンは、重々しく頷いて、受け止めていた。
「・・・・・・。」
マリは、何も言わないが、明らか涙目で、泣くのを堪えている。
というより、鼻水を何回もすすり、それはもう泣いているといえた。
「なんだよ、泣くなら泣けよ。そんな中途半端に堪えやがって・・・。」
そんなマリに対してルークドは茶化す。
「うっ、うっさい!・・・全然、泣いてないしッ!グスッ・・・次、ヤン!!」
マリは、泣いているのをごまかすように、ヤンに話を振る。
いつしか、過去を語り合うムードになっていた。
「ルークド殿には、すでに洞窟で話した内容だが・・・」
ヤンは、ルークドに洞窟で話した自分の過去を話す。
ーーヤンは、話続ける。
「・・・それから後は、一人旅で各地を遍歴した。ソン=ウーの情報を集めるという目的もあったが。」
「そして、キングリメイカーに?」とルークドは聞く。
「あぁ、旅の終着地点は、偶然にもキングリメイカーの拠点だった。そこで拙者は導きを感じ、目の前の門に入ることにした。・・・ノルス殿は、拙者を見てすぐに承諾してくれた。」
ヤンは、話終えると、マリを見る。
「次は、マリ殿。」
「やっぱ、話さなきゃ・・・ダメ?」
「当たり前だろ。」
ルークドが、素早く切り返す。
「うっ・・・いいわ、話してあげる。よく聞きなさい。」
マリは、自身の過去を話始める。
「実は私、盗賊に育てられたのよ。」
その一言を発せられた瞬間、ルークドとヤンは何やら納得する素振りを見せる。
「どおりで育ちが悪いんだな!!」とルークドが笑顔で言う。
マリは、イラついた表情を見せるが、何とか抑える。
「・・・残念だけど、ルークド。私は、名家の生まれなのよね~。だ・か・ら、血そのものは、高貴なの。」
「・・・はっ?今、盗賊に育てられたって・・・」
「氏より育ちともいうが・・・」
ルークドとヤンは、それぞれにツッコむ。
だが、そこからマリは、シリアスな表情になる。
「まだ、私が赤ちゃんの時のことよ。名家で生まれた私は、盗賊に捕らわれたの。だから、両親はわからない。・・・たぶん、その時、盗賊に殺されてると思う。」
ルークドとヤンは、だまって聞く。
「そして、盗賊に捕らえられた私は、今度は育ての盗賊に拾われたの。」
「それって、つまり別の盗賊が最初の盗賊からお前を盗んだってことか?」とルークドは聞く。
「そう。私を育てたほうの盗賊は、いわゆる盗賊からしか盗まない義賊みたいなもの。・・・そこで生きる術を教えてもらったわ。」
「・・・で、いろいろあって、私一人になって・・・。」
マリの口が重い。
「明日を生きるために、必死にね。・・・でね!ある街で、スリをした相手が、イーサンさんだったの。」
「よく、屈強なイーサン相手にスリをしようと思ったな。ただでさえ、強そうなオーラ出てるのに。」
ルークドは、慎重に口を挟んだ。
「し、仕方なかったの!・・・で、そこで度胸を買われて、キングリメイカーにくることになったってわけ!はい、私の話おしまい!」
マリは、それ以上話したくなかったのか、話を無理矢理終えた。
全員の過去話が終わった。
「それぞれの背景が聞けてよかった。」とヤンは、ニヤッと笑った。
「そうだな。いろいろと聞けてよかったぜ。・・・じゃあ、もう夜だし、明日に備えて今日は解散とするか。ちなみに、この村での最後の夜だからな。」
そのルークドの提案に、全員が頷いて、それぞれ部屋へ散っていく。
ただ、マリは最後まで大広間に残って、何かを考えていた。
(私を捕らえた・・・盗賊は、ただの盗賊じゃないんだよね・・・。)
マリは、さっき話していないことについて、物思いをする。
(名家から、それも女児ばかり盗む盗賊。そして、私の育ての盗賊をみな殺しにしたあの少女たち・・・
この二つの事実を考えれば・・・きっと、私を狂わせたすべての元凶に「婦人会」がいる。)
マリは、キングリメイカーにきてから、一人ずっと図書館で調べていたことがある。
それは、キングテレトリー反抗組織についてだった。
反抗組織について学科ではやらなかったが、マリにとって重要なことだった。
(確か・・・あの時のページは・・・。)
マリは、その時のページを思い出す。
キングテレトリーの悪名高く、軍にも反抗する組織は4団体ある。
その中の一角に、「婦人会」がある。
その目的としては、王は男といわれるところから、その王を殺し、女の王、女王を立てるべきという過激組織。
婦人会トップのマダム・キョーコを筆頭に、組織は全員女。特に、少女を中心に構成されている。
(騎士の娘が何とか書いてたけど・・・私にはわからないわね。)
マダム・キョーコの娘は、騎士の力、「女帝」を有するという。
その存在は、キングテレトリー軍でも確認されているが、マダム・キョーコの本当の娘なのかという懐疑説がある。
ただマリにとって重要なのは、名家を襲い続けた盗賊の親元には、婦人会の存在があったこと。
さらに、それを食い止めるように活動していた育ての盗賊が、その婦人会の少女部隊に自分の目の前で殺されたということ。
自身でも驚くほどの水の魔法の才能は、名家の血を裏付ける。
本当に盗賊出身なら、ここまで魔法を使えないだろうとマリは断定していた。
そのため初めてのイーサンとの訓練の時から、戦い方は随分と変わってしまった。
キングリメイカーにきてから、マリは自分のすべての要素が線で繋がった。
その線の先は・・・婦人会だった。




