運命ゲーム
「運命ゲーム」のボード上には、マスを連ねた線が道のように入り乱れていて、マスすべてに「運命要素」といわれるテキストが記してある。
その運命要素をポーンが蓄え、そしてゴールに至るまでに、どんな運命要素を得たかによって「最終運命」が決まり、ボードに織り込まれた魔法によって、空白のゴールのマスに「運命結果」のテキストが浮かんでくる。
その運命結果の等級によって、勝敗が決まる。
ポーンの進め方は、ダイスを用い、そして途中の分かれ道でも、ダイスの出目で分かれたりする運要素。
意思カードという手持ちのカードで、進む道を決めたり、他人の運命に干渉、妨害できるゲーム的要素。
これが、「運命ゲーム」でキングテレトリーの定番ボードゲームだった。
なお、スタート地点もダイスで決まるため、それぞれ全員が違う。
あくまで運命要素が勝敗を決めるため、着順は関係がなく、ゴールまで長ければそれだけプラスの運命要素を得られる機会が多い反面、マイナスの運命要素を得てしまうリスクも大きく、たとえ短くても大きいプラスの運命要素を得ていけば、充分にいい運命結果になる。
全員がポーンを決めて、スタート地点のマスに置く。
ちょうど始める時だった。
「ポーンが、二つ余っているな。」とヤンが呟いた。
「ここにいるのは、5人・・・じゃあこの余った二つは、メイヒールとグールフのポーンだな。まっ、今ここにいないし、しょうがねぇな。このまま始めるぞ。」
ルークドが冗談半分で返す。
「悪い、ちょっと待ってくれ。」
ファイが、開始を止めて、キャアシーの方を見る。
「キャアシー。メイヒールとグールフの代役を務めてくれ。」
「ニャッ!?そ、そんなことできるわけないニャ!自分の運命で精一杯ニャ!」
「それってキャアシーに一人三役しろってこと?」とマリがファイに不思議そうに聞く。
「・・・まぁ・・・そうなるな。」
ファイは、何か考えながら神妙に答えた。
「確かに、ポーンが多いほど、波乱なゲームになるけどさぁ・・・。」
マリは、少し釈然としなかった。
それは、ここにいない人物を参加させる意味がわからないからだった。
「そっちの方が、面白そうだし、いいんじゃね。」とルークドが気軽に言う。
「えぇ~そういう問題~?だって・・・」
マリが、納得いかない素振りを見せた時だった。
「やりますニャ!やりますニャ!三役やらせていただきますニャ!!」
キャアシーは、先ほどまでと打って変わって三役のやる気を見せる。
同時に、ルークドを見てウインクアピールする。
(このままじゃ・・・どこまでも堕ちていきそうね・・・。大丈夫かしら・・・)
マリは、微妙な気持ちでツッコむしかなかった。
「でも、ファイニャ。どうして我が輩ニャ?」
「それはだな・・・お前ならメイヒールとグールフの考えがわかるかもしれんと思ったまでだ。」
「ふ~ん。そうかニャ。」
キャアシーは、その返答に特に思うことなく何気なく返事した。
そして、その後、余っていた2つのポーンを、メイヒール、グールフのと見立て、スタート位置にセットする。
最初は、メイヒールからだった。
すわなち、代役のキャアシーが、ダイスを持つ。
「では、私からですね・・・ニャ。負けませんよ・・・ニャ!」
キャアシーは、振る舞いから丁寧な話し方、声のトーンまで極限までメイヒールになりきって、ゲームを始める。
(クオリティが・・・高いッ・・・!)
その場にいた全員そう思わざるを得なかった。
そして、ゲームは進んでいく。
「じゃあ、次は私の番ね!見てなさいよ~。あんたをボコボコにしてあげるんだからね~!」
マリは、初めての自分のターン時、意気揚々とルークドに宣戦布告する。
その時だった。
「小娘!!・・・ニャ!さっさとダイスを振れッ!!・・・ニャ!!」
今度は、キャアシーが低い声と荒々しい口調であるグールフになりきって、マリに圧をかける。
マリの次がグールフの番で、きっとグールフならこう言うだろうと、真似たのだった。
(ほ・・・本物か・・・?)
その場にいた全員そう思わざるを得なかった・・・。
そして、ゲームは進んでいく。
「クソッ!また魔影踏んじまった・・・!」
「あぁ~あ、ざまぁないわね!!アハハハハハッ・・・!」
マリは、大笑いを続ける。
「マリてめぇ・・・。見てろよぉ・・・ここからが本番だッ・・・!」
そして、ゲームは進んでいく。
ーーー時間は流れ、ゲームは進んでいき、そして、遂に全員の運命結果が出た。
ルークドは、頭に机を伏して、ダウンしていた。
それに対し、マリは、ルークドに勝てて大喜び。
ヤンは、「妥当か・・・」と頷いていた。
キャアシーは、3人分をプレイしたことで、演技をし続けて、さすがに疲れたのか、元気がなかった。
それ以上に、自分の運命結果が悪いというのもあった。
ファイだけは、結果を真面目に、受け止めていた。
「・・・全員の運命結果が出たことだし、最終結果を発表しようと思う。」
ファイは、まとめるように、言う。
「まず、キャアシーが代役を務めたメイヒール、グールフの運命結果は、「新天地」
俺の運命結果は・・・・・・「使命」
キャアシーは、「残留」
ヤン、マリは、「凱旋」
そ、そして・・・気の毒だが、ルークドは「斬首」となった。」
最後の斬首が言われた時、マリは大笑いが止まらない。
「えぇ・・・というわけで、それぞれの等級を比較すると、皮肉なことに、ここにいないメイヒールとグールフが、勝者ということになる。そして続けて、ヤンとマリ。次に俺の運命結果が。」
そこまで、ファイはスムーズに言った。
そこからは、やはり気を使う。
なんせ、そこからは悪い分類の運命結果だった。
「で・・・キャアシー。さ、最下位はルークドということになった・・・。」
「アハハハハハハハッ!!斬首だって!!斬首!!・・・一番最低な運命はあんたのほうだったわね!!今、どんな気持ち?ねぇ?どんな気持ち?ねぇってば~!わ・た・し・に教えてっ!よぉ~?・・・アハハハハハッ・・・!」
マリは、机に伏しているルークドに、いやらしく耳打ちすると、腹を抱えて涙が止まらない勢いで笑う。
ルークドは、死んでしまったかのように、反応しない。
「まっ、まぁ・・・これはあくまでゲームだから、そこまで・・・」
ファイが煽りを抑えようとする。
その時だった。
「そうニャ!!これはゲームニャッ!!こんなのクソゲーニャッ!クソゲーニャッ!クソゲー・・・ニャーーーー!!!」
ガシャン!!バラバラ・・・
キャアシーは勢いよく、ボードをひっくり返した。
そのおかげで、その上に乗っていたポーンとダイスも床へ散らばった。
よりにもよって自分の意思と対極の「残留」という運命結果が気にくわなかったみたいだった。
その大広間のどんちゃん騒ぎは、もはや収集がつかなくなっていた。
(・・・・・・使命・・・か・・・。)
だがファイは、なにやら迷いが消えたように、何かを決めたのだった。




