本気の勝負Ⅰ ~異次元~
ライネットとノルスは、滝が流れる音だけの中、距離を取った状態で立っていた。
ノルスは好きなタイミングでかかってきなさいと、いわんばかりの悠然とした構えで、ライネットのほうを見る。
ライネットは、すでに抜刀した状態で片手に持ち、切っ先を地面に向けていた。
構えていなくても、すでに戦闘に向けての集中は完成していた。
アイコンタクトで、お互いに気迫をぶつけると遂にライネットが動き出す。
「雷刀身雷切」
手に持っていた刀に、稲妻が纏うようにしてピリピリと走り始める。
次の瞬間には、稲妻は大きくなり、刀身に生きているかのようにまとわりつく。
そんな状態になった刀で構えると、すぐさま「雷走」を使い、加速してノルス一直線に駆ける。
その速度は、地面に稲妻が走るかのように、速かった。
だが、ノルスは、まったく動じることなく、迫ってくるライネットを注視しながら、行動に移る。
「・・・では、私もいかせてもらおう。波動流転!」
ノルスのキング紋章が光り、突っ立った体勢のまま、片手を払う動作をすると魔法技が発動する。
すると、可視性の低い白い波動の塊が、風のように前面に広く展開される。
瞬く間に、向かってくるライネットとぶつかる。
「・・・!」
ライネットも感知して、雷走状態の素早いステップで、縦横無尽に波動を避け始める。
ズドオオォォン!!ズドォオオォォン!!
その白い波動は、まるで爆弾が空中爆発するかのように、広がる。
その威力は、凄まじく、一撃が一つの技のように重い。
それに加え、その波動の範囲内にいる限り、無数の攻撃が対象を襲う。
「・・・っ!」
ズドドドドドッ!!ゴゴゴゴ・・・
ライネットは、汗を流しながら何とか避けていく。
不発に終わった波動が、地面をえぐり取り、周辺を破壊し、砂埃を激しく舞わせる。
さらに、地面一直線に、亀裂が入るように、衝撃が走る。
がれきを遠くにまで飛ばして整えられていた自然が、あっという間に破壊されていく。
「さて・・・どれぐらいもつか。」
ノルスは、開始直後から立ち位置を変えず、その波動流転を必死に避けるライネットの姿をただ眺める。
(逃れられない・・・!)
一方ライネットは、波動流転を避け続ける。
そのおかげで、それ以上、ノルスに近づけないでいた。
自分を自動的に追うような攻撃で、周囲に風・・・あるいは雲がまとわりついたような連続性。
かなりしぶとく、強力な技だった。
そのノルスの攻撃は、永続で、並大抵のものなら、ノルスに触れることすらできず、そこで何もできず終わってしまう。
だが、ライネットは並大抵ではない。
「雷影!」
チッツュッツツツツツツュッ!!
厳つい電撃の音を立てながら、ライネットの体が、電撃と稲妻になって消えていく。
次の瞬間には、ライネットの実体すべてが、電撃と稲妻の影となって、解体されていき、そこに合わせて、波動の攻撃がヒットする。
ドゴオオオォォン!!バアァァン!!ドオオォン!!
波動と電撃が激しくぶつかって、爆発のような轟音と衝撃。そして落雷の閃光、轟音を上げてその一帯は煙で何も見えなくなった。
波動流転と雷影がぶつかって、相殺された形となった。
雷影は、魔法と残像との複合技だった。
自身は残像でかわすと同時に、その残像が電撃へと広がり、攻撃するカウンター技といえた。
ブオオッ!!
そして、実体のライネットは、その砂埃の中を、息をつく間もなく、弾丸のように抜け出す。
雷走に加え、雷刀身雷切もそのままで、ノルスに一直線。
ノルスの姿を捉えると共に、刀をふるう。
スッ・・・
その美しすぎるほどの切りつけは、稲妻を纏って強化された状態で、繰り出された。
一撃必殺といえるほどの攻撃力を誇る。
バシッ・・・
(・・・!)
だが、ノルスの反応はもっと速かった。
「・・・やはり、素晴らしい剣術といえる。だが私には届かない。」
ノルスは、パワールースンとマジックルースンを同時に使い、白羽取りの形で刀身を挟みこんで、ライネットの攻撃そのものを完全に打ち消した。
そして、すぐさま、上体を後ろに反らす形で後ろにスゥゥ・・・とスウェーをして、片手の手の平を広げてライネットに向ける。
そこまで一瞬のことで、またノルスのもう一方の片手は、そのまま刀身を親指を使って挟みこみ、放さなかったため、ライネットは、それに反応し動くことは困難だった。
「モルトポールウェーブ」
青色の波動が、ライネットに向けて、その近距離で放たれる。
(雷衛防・・・!)
だが、咄嗟にライネットも何とか、抵抗を見せる。
ドオオオオオォォォン!!!
モルトポールウェーブの青い波動が広がり、ライネットは、150メートル以上を、引きずる形で吹っ飛んだ。
土砂があふれ出したかのように、がれきが同時に一直線上に伸びた。
「ぐっ・・・!」ズサアアアァァッ!!
しかし、ライネットは、その派手さほどダメージを負わず、すぐに受け身を取って、刀と膝をつく。
受ける瞬間に雷衛防を使い、防御したのだ。
雷衛防は、ライネットの周囲に、電撃を纏わせ、あらゆる攻撃を、防御、逸らし、打ち消し、緩和する万能魔法技だった。
ノルスの、モルトポールウェーブを撃ったほうの手には、雷衛防による痛々しい火傷の痕があった。
それでもノルスは、砂煙が止まない直線を前にしてまったく間を空けさせることなく、追撃に入る。
その先にいるであろうライネットに向けて、もう一度、片手の手の平を広げて向ける。
「・・・少し派手になるかね・・・サン!」
すると、火のエネルギーが集積していく。
3秒ほどで、ちょうど地球儀サイズの球体エネルギーを形成する。
その球体は、高密度的で、太陽のような球体だった。
「・・・はああッ!」
気迫の声と共に、その球体をライネットに向けて放った。
スピードは、それほど速くはなかったが、しばらくすると変化が起こる。
ボオオオオオオォォ!!・・・
その球体が、膨らむような音を立てた後、修練演習所全体が、閃光で何も見えなくなって、数秒間すべての音が消えた。
バアアアアアアアン!!!
聞いたこともないようなとてつもないエネルギーの音が広がると、すべてを溶かしてしまいそうな熱風が起こる。
「・・・・・・。」
ノルスは、その熱風を遮るように、両腕を顔の前にして、防ぐ。
さらに、足は踏ん張り、ライネットのほうへ鋭い視線を光らせる。
ノルスの「サン」によってライネットがいた位置であろう周囲は、もはや環境や地形、はたまた惑星が変わったかのように、灼熱と化していた。
えぐれた地面に、ドロッと炎がたまり、土も、もはや何かわからない。
攻撃を受けて変容したというより、どこかと丸ごと入れ替わってしまったかという衝撃の威力だった。
もやは何も影がなく、さらに止まない熱風によって、ノルス側の残った自然が発火、延焼し始める事態だった。
数十秒して、熱風が止む。
ノルスは気を緩めることなく、集中を維持する。
「・・・・・・。」
辺りを見回していた。
「上か・・・!!」
ノルスは、驚く様子で真上を見た。
刀を振り下ろすライネットが、間近に迫る。
そのライネットは、全身が電撃に纏われ、さらに、刀もより多くの稲妻を纏って、さっきまでと一段違っていた。
その様子は明らか通常の状態ではなかった。
そんな状態のライネットは、上からノルスに向けて攻撃を繰り出す。
「雷鳴切り!!」
ーーーボオオオオオオォォ!!・・・
ノルスの「サン」が膨らみ始め、爆発する前、ライネットは無音の中、何かを口にした。
口だけが動く。
「・・・雷神」
それを呟いた瞬間、ライネットの全身に大きく電撃が纏い、稲妻がライネットを囲う。
いや、それ以上に、自身の体に帯電するいった状態になり、同様に刀にも電撃が帯電し、稲妻が周りを覆う。
そして同時に結んでいた髪が解ける。
この状態は、雷走、雷刀身雷切、雷衛防、雷影を通常の力以上に常時併発させる、ライネットの持つ
究極魔法技を使ったことによるものだった。
そこからの動きは人智を超えるスピードかつ空中にも伝わることができ、「雷神」は異次元の強さといえた。




