表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キングテレトリー  作者: フクツノタロウ
ゲンエイガハラ村編ーⅠ
100/280

待機

昼。

ライネットは、1人エングランド訓練所の敷地内にある修練演習所に来ていた。

その場所は、庭園のように美しく整えられた自然風景と手が加えられていない無為自然風景が混在する場所で、人工的ではあるが滝もある。

その場所の目的地としては、基本は野外演習場と同じで様々な訓練を行う場所だが、少し趣向が違った。

野外演習所は、実戦的な戦闘訓練などを行う場所に対し、修練演習所は、武芸や肉体、精神といったものを鍛える修行的なことを行う場所だった。

そのために、自然が重視され、そのような雰囲気作りがされているといえた。


ライネットは、わらで作られた多数のかかしが広く点在する場所を前にして、刀をいで準備をしていた。


(・・・ルークドたちが村に向けて出発してから、もう今日で3日目・・・私はずっと待機・・・。)


ライネットは、その場所で準備の手を止めず、1人いろいろと思慮を巡らせていた。


日頃、ライネットは立場上、兵士たちの訓練の指導や管理、指示といった教官的な務め。そして執務といったことは、もちろんする。

だが兵士たちに関することは、イーサンが、そして執務といったことはノルスが、あくまでメインの務めで、ライネットのメインの務めといえば、キングテレトリー時代から変わらず”護衛”だった。

キングテレトリー時代は、ノルスは総統として世界を動き回ることが多く、それに追従してライネットも役割をこなしてきた。

しかし、キングリメイカー時代となった今は、ノルスは総長として総括する立場上、執務室にこもることがほとんどで、それ故ライネットの役割は薄れているといえた。

だからこそ、ノルスはライネットを新戦力のルークドたちと同じ実動に入れたのだと思っていたが、なんと今回の指令では待機命令。

いわば飼い殺し状態で、それがどうにも納得できなかった。


そしてその時、刀が研ぎ終わり、ライネットは刀を持って目視で確認する。

刃に自分の顔がうっすらと映る。


(訓練のため・・・いえ、それとも・・・。)


それ以外にも、気になっている点があった。

それは今回の指令に関してだった。

ライネットは、ここ数日、時間を見つけては図書館に行き、いろいろと調べてみた。

まず、ゲンエイガハラ村は、かなり古いものではあるがキングテレトリー時代の記録にちゃんと残っていた。

地図も、ちゃんと軍でも製作されており、住民に関してまったく掴めないとルークドたちに説明していたのはまったくの嘘だった。

全員が魔物の特徴を持つ村。いわば半端物といわれ、迫害されている人が寄り添って自衛のために作った村。

それが分かれば、弓矢の攻撃の件も理解できる。

なので、あえてそれを分かったうえで、ルークドたちを行かせるということ、つまりは戦闘をさせるということ。


(使い捨て・・・。)


ライネットは、刀を鞘に収めると、白い手ぬぐいを手に取って、かかし群に近づいて行く。


そして極めつけは、ノルスの言葉がライネットを不安にさせていた。

あの様子の口ぶりだと、ルークドたちをとことん使い潰す気ではないのかと思わせる。

もちろん、それは新戦力ではないノルス側のリスクを減らすために。

結局ルークドたちを本当に味方、仲間・・・つまり同胞として向かい入れたのではなく手足として利用するためではないかとすら、ライネットは感じていた。

死ぬその時まで、使って・・・死んでもお構いなしではないかと。


ライネットは、かかし群の傍まで来ると、手に持っていた白い手ぬぐいで、目隠しを始める。


(仮に、騎士ナイトの力を持っていたとしても・・・。)


ルークドが持つ騎士ナイトの力は、「キング」いない今、分割状態に収束がついた後、次の「キング」を立てるために、かならず「王座争奪戦」が行われる。

その時に、騎士ナイトの力を持つものの存在が非常に重要といわれている。

ただ今生きている人間の時代の範囲に「キング」がこれまで変わったことなどなく、どのように重要なのかは、実際のところ誰もわからず、伝承に過ぎない。

だが、一応は世界中に散らばる騎士ナイトの力を持つもののほとんどは、本人が自覚をしていなくてもキングテレトリー軍に、所在は知られている。

それを辿って、ノルスは手間をかけ自ら赴いて、ルークドを引き入れたわけだった。


(確かルークドの力は、没落フォールン・・・。)


ライネットは、目隠しをし終えた。


しかし、騎士ナイトの中でも、等級というものがあるということを、ライネットもすべてを把握しているわけではないが、うっすらと知っていた。

等級が高ければ高いほど、「キング」に近いという言い伝えがあり、その等級の頂点にあるもの、それは現キングソードを立ち上げ、元12の有識の1人、「聖剣せいけん」の力を持つケルン・マルク。

そして、ルークドの没落フォールンの力は騎士ナイトの中では、低級というのがライネットの持つ知識だった。


(だからこそ・・・。)


ライネットは、目隠し状態の中、腰の鞘に入っている刀のつかを掴んで、抜刀する。


そうであるため、ライネットは心配だった。

あまり、有力ではない力であるために他の勢力から目を付けられることなく、気軽に切り捨てられる。

ノルスのことだから本命の騎士ナイトは、別に考えているのではないかとライネットは、見当をつけていた。


ライネットは、目隠しの状態でそのかかし群に向けて構える。


(でも、どうして・・・私は、ここまで・・・。)


ライネットは、別に、ある目的を達成するのに、犠牲がでることは当然だと思ってきた。

現に、キングテレトリー時代も、目の前で多くの兵士の犠牲やいろいろな血を見てきた。

しかし、今回ばかりは、なぜか違った。

会ってからまだ間もないはずなのに、今回の新戦力であるマリやヤンのこともそうだが、ルークドのことを特に犠牲にしてはいけないとライネットは感じていた。

ライネット自身、自分の心をいろいろと探って、突き止めようとしていた。

アリーのあんな生命美しさのある尊い死に際を見た後だから、なのか・・・とも考えていたりしたが、やはり釈然とはしなかった。


(・・・・・・とりあえず今は、集中・・・しよう。)


ライネットは、ルークドたちが初めての指令を下された日から、ずっとこんなことをグルグルと考え、モヤモヤ状態の日々を送っていた。

待機命令の中、することといえば、図書館に行くか腕が鈍らないように、1人ひたすらかかしを相手に切るのみだった。


ライネットは、自分を戦闘の状態へと切り替える。


ブオォォン!スタッ!タッタッタッ・・・!!


ライネットは、風圧を発生させ、一気に加速し、かかし群の中へ駆けていく。

魔法を使わずともその速さは、並大抵ではなかった。


バサッ!バサッ!バサッ!・・・


その高速のスピードでまるで見えているかのように、かかしを一体ずつ的確に切り落とす。

視界はなくとも、全身で感じとっており、それは、長年の修練の積み重ねによってのみ得られる達人の感覚極みだった。


ズサアッ!!ズサァッ!!ズサァッ!!


風が発生すれば、かかしが切り落とされている。

まるで、そんな状態で、そのスピードのライネットの姿を捉えられるものなど限られているといえた。


バッサアアッ!!・・・・・・


100を超えるほどあった、かかしは、わずか数十秒であっという間にすべて切り落とされた。

ライネットは、それを感じ取ると、刀を下ろす。


それでもライネットにとって準備運動程度で達成感など微塵もない。

かかしというただの的であるのに加え、もちろんそこから動くことも、攻撃も抵抗もない。

いくら、目隠しをして縛ろうが、虚無感しかない。

例えるなら、目隠しをして梱包材のプチプチをただ、ひたすらに潰すことだった。


ライネットは、片手で手ぬぐいを外すと、一体のわらのかかしの切られた断面を見る。


「・・・少し、乱れてる。」


そう呟いた瞬間だった。


パチパチパチパチパチ・・・


テンポの遅い拍手が自分に向けて近づいてくるのが聞こえる。

そして、その人物は、ライネットに向けて言う。


「いやはやライネット、また少し腕を上げたんじゃないかね?刀に関しては、もはや全盛期の私を超えているかもしれんね。」


「・・・!」


ライネットに拍手を送った人物、それはその場所に現れることなど考えられなかったノルスだった・・・。


























評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ