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なりましたが…

初恋の君を手にいれましたが………

作者: 暁月

魔梨沙が後宮に入って半年。

毎日夜伽を彼女を召すも、今日まで答えたことがない。

そろそろ我慢の限界が。

別に彼女以外にも妃は居るのだからそっちに行けばいいのに、陛下はそうしなかった。

幼少の頃より共にいた魔梨沙に、いつしか陛下は恋に落ちていたのだ。

初恋である。

側近らには、初恋は実らないことで有名だから諦めろ、と言われたが知ったことではない。

世の中の初恋が実らなかったなら俺は実らせてみせようではないか。

後宮に召し出した彼女を、来たその日に夜伽を所望したが、疲れたからと、断られた。

その次の日も、そのまた次の日も。

とにかく断られた。

一月あたりで心がポッキリいきそうだった。

だが、それ見たことか、と言わんばかりの側近らの顔に腹が立ち、絶対その顔潰してやる、と気合いを入れ直した。


今日も今日とてすっぽかされた陛下はもう限界だった。

最終手段を使うことにしたのも、もうこの欲情を押さえきれないと思ったからだ。

侍女に協力してもらい、自分は魔梨沙の寝室に隠れ。

女官が魔梨沙を呼び戻しに走る。

なんと、いつも中庭に隠れていたらしい。

すぐ近くにいつもいたのだ。

何故気づかなかったのだろう。


女官の声に魔梨沙が返事をし、宮に帰ってくる。

……俺が帰ったと知ったら速効で戻るのだな。


湯上がりの魔梨沙の肌は、薄く色づいていて。

なんと艶かしい。

寝台に飛び込んだ魔梨沙はゴロゴロと転がり回る。

寝間着の裾がはだけて脹ら脛が見えようと、気にしない。

ちょっと……いや、かなりエロい!

ああ、あの枕になりたい!

魔梨沙にぎゅぅっとされたい!


邪な考えを必死に頭の端っこにおしやり、寝台に近づく。


「はしたないぞ」


なんと愛想のない。

しかし、魔梨沙の口から出た言葉のなんと色気の無いことか。


「ぎゃっ!」


って。

普通、ひゃぁ!とかきゃあ!だろ。

せめて、濁点のつかない悲鳴を出してくれ。


「魔梨沙ぁ」


転んで、手を伸ばしたあの頃の様に。

魔梨沙に甘えてたあの頃の様に。

幼い頃の様に手を伸ばし、ぎゅうぎゅう抱きしめる。

ああ、魔梨沙の匂いだ。

お日様のような。

心安らぐ、魔梨沙の匂い。


「魔梨沙が悪いんだからね!俺の夜伽をすっぽかすから!」


ムスッとしながら魔梨沙を睨む。

だが、次の彼女の言葉に、ショックを受ける。


「あったりまえでしょうが!」


そのなに俺のことが嫌いなのだろうか。


「魔梨沙は俺のこと嫌いなの?」


ポロリ、と涙が頬を伝う。

そんなに嫌われていたのか。

嫌われるようなことを、俺はしたのだろうか。


「違う!違うから!!そんなことないから!」


叫びながら寝間着の袖で顔面をぬぐってくれる。

やっぱり、魔梨沙はやさしい。


やっぱり俺は、魔梨沙のことが好きだ。

大好きなんだ。

いや。


「ねぇ、魔梨沙」


愛しているんだ。

心の底から。


「俺の子、生んで?」


狂う程に。




「陛下にお伝えしたいことが」


朝議の間に、皇后付きの宦官が入ってくる。


魔梨沙を完全に手にいれた日から二月。

毎晩夜伽に足を運ぶ陛下に、周囲は初恋が実ったことに驚きながらも祝ってくれた。

まあ、毎晩行ってても毎回抱かせてくれる訳ではないのだが。

周囲も、早く子供が生まれることを心待にして居る。

だが、魔梨沙が身籠る気配は一向にない。

身籠れない体質なのか。はたまた偶然か。

とにかく、一日も早く身籠るよう、魔梨沙は周囲にせっつかれていた。

しかしここ最近魔梨沙は抱かせてくれないのだから、無理な話だ。

今日はその事について、話し合うことになっていた。

が。


「皇后様、ご懐妊で御座います」


宦官の言葉に、俺は立ち上がった。


「ま、誠か?」

「はい。四週目だそうです」


重鎮らは呆気に取られ、俺は呆然と立ち尽くす。

魔梨沙が夜伽を拒み出したのは、三週間前からだ。

ということは。


「……そう言うことか」


妊娠に気づいて、俺を拒んでいたのか。

………嫌われた訳ではなかったのか。よかった。


「申し訳ありません。本当は三週間前より知らされた事なのですが、皇后様がまだ言うなと口止めなされたので…」

「では、何故今?」

「つわりが酷くて、隠しきれないから、と。先程も、朝餉を戻されてしまいまして―」

「まりさあぁぁぁ!!!」


俺は朝議をすっ飛ばして皇后宮に疾走した。

それはもう、目にも止まらぬ早さで。


「魔梨沙ぁぁぁぁ!!」


バアァァァァアン!!!

扉が壊れそうなほど勢いよく開く。

中にいた女官らは、その場で固まった。

無視して魔梨沙の姿を探す。


「魔梨沙は何処だ!?」


俺の剣幕に怯えた女官が寝台で休んでいると教えてくれた。

一直線に寝室に向かう。


「魔梨沙!」

「陛下煩い」


飛び込んできた俺を迎えてくれた言葉はなんとも冷たいものだった。


「ひどい!」

「煩い」


ピシャリと言われて口を閉じる。


「朝議は?」

「あ。」

「今すぐ戻れこのくそがきが」


くそがき……俺のことか!?

俺皇帝なんだけど!?


「そ、そんなことより!魔梨沙身籠ったって本当!?」


なんとかショックから立ち直り。

確認を。


「ええ。健やかに育ってるそうですよ」


魔梨沙は微笑んで己の腹を撫でる。

まだ膨らんでないが。

確かに。

そこに。

子供がいる。


ボロボロと、涙をながしだす。


魔梨沙と。

俺の。


「ありがとう」


子供。


「ありがとう魔梨沙」


泣き続ける俺をそっと抱きしめる。

母の様な慈愛に満ちたその笑みで、俺を抱きしめてくれた。




「とうさま!」


一番上の子が、俺の裾を引っ張る。


「どうした。楓」


楓と呼ばれた少女は、両腕を伸ばす。


「抱っこ!」


早く早く!とせがむわが子。

可愛すぎて萌え時にそう!


「ほーら!あ~もう可愛いなぁ」

「きゃっきゃっ!とうさま、もっともっと!」


愛娘の要望に答えて。


「陛下」

「…ああ、魔梨沙」


後方から呼ばれて振り返ると。

天帝の妻である西王母の様に麗しい我が妻の姿が。

派手とまではいかなくも、魔梨沙の可憐さを存分に引き立てる衣装。下ろしたままの髪は艶やかで腰まで長く。

侍女に手をとられながらゆったりと近づいてくる彼女の腹はふくれている。


「かあさま!」


腕の中で愛娘が母を呼ぶ。

近づいてきた魔梨沙の手を取る。


「安静にしてないと…」

「たまには運動しないと。逆に良くないわ」


陛下の心配を余所に、魔梨沙は歩き出す。

慌て横に並んだ。


「…どっちかしらね」


ふいに、小さく零れた言葉。

見下ろした顔は、憂いに満ちていて。


「…どっちでもいいじゃないか。まだ時間はある」


次に生まれるは皇子か。皇女か。

一人目は、楓。

二人目は、去年生まれた、桜。

今のところ、世継ぎになる皇子は居ない。


「…ん」


きゅ、と繋がれた手に力が込められる。


「なんかね。普通より膨らみが大きいんですって」

「?」


魔梨沙の腹に視線を向ける。

確かに、二人の時より大きいような?


「双子かもだって」


双子。

同時に、二人も。


「だ、大丈夫なの!?」


こんな小さく細い躯で、二人も生めるのだろうか。

そのまま、儚くなるんじゃ…!?


「別に、初産じゃないんだから。大丈夫よ」


心配性ねぇ。


「そりゃ、出産は命懸けっていうから………」


男の俺には一生分からない。

でも。


「魔梨沙を失うかもしれないんだから。心配にもなるよ」


真剣な顔で言ったら、赤面された。


「あ、貴方ね!そんなこっぱずかしいこと言わないでよ!」


楓だっているのよ!?

腕の中の娘を指差す。

いきなり振られた楓は不思議そうに首を傾げた。


「なぁに?」

「何でもないよ」


陛下の言葉に楓はふーん、と返事した。

……瞼が重そうだ。


「寝てもいいわよ」

「んー……」


数秒後、ずっしりと腕に重みが。


「……大きくなったよな」

「そうねぇ」


我が子の寝顔を眺める。


「あと十年もすれば、何処かの男と結婚して出ていってしまうのでしょうね」

「なっっけっ結婚!?出ていく!?」

「煩い。起きちゃうでしょ」

「いかん!絶対嫁になんて…むぐっ」

「う る さ い」


「まぁ、まだ先の話よ」



一月後に生まれた赤子は双子の皇子だった。

陛下によくにている。

二人の後に生まれた子供は男男女男女の順であった。

一番下の妹は上の姉兄と十も年が離れており、皆とっても可愛がった。

特に陛下が溺愛し、「とうさまうざい」と末娘に言われ、撃沈したのは余談である。




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