告白
まわりの人を上手くだませているなんて思ってはいない。
そもそも「だます」という概念はない。
「バレないように」という感覚が近いかもしれない。
いや、むしろバレたい。
「あれ?あの人男じゃない?」なんて後ろ指をさされたい。
面と向かって言われるのではなく
私に聞こえるか聞こえないか程度でやってもらうのが一番いい。
下校中女子高生らのグループの話題にされたい。
「めっちゃ気持ち悪いけどちょっとかわいい」とか言われたい。
ひょんな事からその女子高生グループのリーダー的な子と少し仲良くなって
「下着とかってどんなのつけてるんですか?」って言われたい。
「1人で買いに行くのが恥ずかしいから、もっぱらネットでしか買えない」とか言いたい。
でも陰で「男の部分が残りすぎてて、若干気持ち悪いよね」とか
LINEで言われてたい。
口紅はなるべく雑に塗っている。髭はちゃんと剃るようにしている。
ウイックとかカツラはつけない。
少しハゲたそのままでお化粧をするのが私流。
完全な女になりたくはないの。
本物ではなく、おねぇでもない。女装家?
真面目にやってる人たちに少し怒られたい。
仕事が終わり自宅に一旦帰り、女ものの服に着替えてコンビニに行く。
ひょっとしたら、全裸を見せるという痴漢の感覚と
似ているかもしれないと思ったことがある。
見られたり気持ち悪がられたりする感覚。
レジの子は今日も話かけてくれる。
この時間、毎日ここで働いている美大に通う女子大生だ。
「寒くなりましたね。」
「おでんおすすめですよ。」
「からあげ1個増量中ですよ。」
その一声だけでうれしい。
自分がこの格好だから、きっと話かけてくれるんだろう。
世の中にはいろんな人がいて、格好も、宗教も、生き方もそんなもの自由でしょ?
って思っている子だと思う。
だからこの子は話かけてくれている。
でも本当は私の事を気持ち悪いと思っていてほしい。
それがいい。
ただのおじさんだったら、君とお話しなんてできない。
だって君が無理をして私に話かける必要がないもの。
気持ち悪い私に少しの哀れみをもってくれている優しい子だから
私はその優しさにつけこみ、君とお話しができる。
周りから、そして君からどう思われようが良い。
君とお話しできるのであれば、私はずっとこの格好でいようと思うのです。