宇宙本棚
「即興小説」で執筆した作品の改稿版です。
2015/7/27 お題:小説の中の幻覚 制限時間:15分
宇宙人を見た――とボクが伝えた人の中には、信じてくれる人は誰もいなかった。
たいていの人は、『マジかよこいつ』『頭大丈夫か』と蔑みの目を向けてくるものだったし、『この猛暑にやられたか』『いい病院紹介しようか?』と嘲るヤツらもいた。彼らの意見を総合すると、こういう結論になった――『幻覚を見たか、もしくは狂ったか』。
ボクは思った。幻覚だなんて、そんな夢のないコトを言うヤツらは放っておけばいい。ボクがほんとうに宇宙人を見つけてとっ捕まえたとしても、ヤツらには絶対に見せてやらない。
その夜もボクは、前日にUFOの光を見た野山に足を向けていた。一、二時間もして、そろそろ蚊に刺された鼻の頭のかゆさが限界になってきた、そのときだった。
頭上に、一条の光が閃いた。
『あ……っ!』
声を上げる間もなく、その光に照らされたボクは、遥か上空まで吸い上げられて行った。
やっぱり、彼らは幻覚なんかじゃなかった!
それが、ボクとベテルギウス星人との、最初の出会いだった――。
「おいウィリー、またその本読んでんのか」
ウィリーと呼ばれた彼の手には、古めかしい一冊の本が抱えられている。
「なんだ、“地球人”の本じゃねえか。なんつったっけ……SF小説? われわれベテルギウス星人が数百年前に滅ぼした種族が書いた小説なんざ、読んだって次の宙空浮遊試験には通らねえぞ」
「うん……」
ウィリーはそうつぶやいて、ぼろぼろの本を棚に戻した。