8/36
イツキ
少しずつ、着実に。計画の準備は進んでいる。
閉めた窓から雨雲を見上げ、僕は静かにほくそ笑んだ。丁度良い、使い勝手の良い餌を手に入れられた。偶然までもが僕の味方をしている。間違いなく、上手くいくだろう。
「そろそろ、実験するかな」
前は失敗する気配を見せなかったが、遠隔操作はまだ試したことがない。父は、実に操り易かった。背後から僕が指示を出せば、指示通りにきちんと動いた。まるで、忠実に動く操り人形のように。
母の首を絞めろと言えば全力で絞め、姉の腹を裂けと言えばしっかりと裂く。弟は、風呂に沈めた。
僕も一応は襲われたふりをしなければいけなかったので、背中に切り傷を付けさせたが。手加減も上出来だった。今はもう、殆ど傷跡が残っていない。
あれほどまでに完璧に操れるだろうか。試しておいた方が良い。上手くいくようであれば、本格的に動き始めても良いだろう。僕には到底辿り着けない糸が、手元にはたくさん転がっているのだから。
「月夜の晩に……」
血飛沫は、月光に映える。至高の芸術。完全なる世界。現世の終焉は近い。
僕の世界の幕開けは、近い。