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イツキ
少しずつ、壊れ始めている。
僕はゆっくりと廊下を進み、保健室へと足を運ぶ。利用出来そうな者は残したい。常なる世に生命はいらないが、知性はあった方が良い。
時折校庭から聞こえてくる心地良い音楽が、僕を癒す。悲鳴は、宴に花を添える。誰一人として逃れることなど出来やしない。全てが、僕の手に握られているのだから。
右手を頭上にかざし、目を細める。僕にとって最高の宝物。眩い黄金の糸が垂れ下がり、束をなし、方々へと繋がっている。
輝いているのは窓から差し込む陽光を浴びているせいか、そこここに転がる餌の体液を浴びているせいか。
緩み掛けた糸を引いては残りの生命を頂く。せわしなく蓄え続けられる僕の栄養。黄泉比良坂の封印を解くには充分であろう、生命の塊。
決行はまだ先だ。満月の夜に、永遠を。
今は少しずつ、確実に。現世を壊すのみ。まずはこの場所から。そして徐々に、全てを飲み込む闇の世界を創り上げ。
神として、僕は君臨するのだ。永遠に。
満月の晩までに完全なる下準備を。現世を包む、常なる世界を。来るべき刻の愛しい月に、僕は誓う。
永遠を。




