イツキ
実験は成功した。
受話器を置きながら、僕はどうしてもにやけてしまう口元を引き締めた。
夏休みが明ける前に混乱を。僕に繋がらないような人間を犯人に。そのどちらの条件も満たす、今回の事件。直接括らなくとも、この程度までなら操れる。その確認も含め、実に身のある実験だった。
目立つ場所で目立つように起こしたので、報道も素早かった。緊急速報が出たのが、操り始めて十五分後。繁華街で動かしたので、緊急性が高いと判断されたのだろう。僕の狙い通り、不安を煽るよう伝えられている。
まるで報道関係者も操っているような、支配しているような気分になる。素晴らしい。完璧だ。
僕は部屋に戻り、テレビの音声を上げた。これだけ大きな音を上げていれば、僕がいくら笑おうと、隣に声は漏れないだろう。
想像以上に上手くいった。
街中で包丁を振り回せ。理性を取り払えていなければ、上手く操ることは出来なかった。担任の生命はそれほど美味くはなかったが、蓄えるだけなら構わない。
妻の方は、どう料理しようか。
包丁を持ち、取り乱し暴れる女。被害者を増やすのも悪くはないが、今から括るのも面倒だ。あの女を介して括るのは、少々時間もかかるだろう。
仕方がない。ゴミは、処分するに限る。




