三話
「忘れないで」
今日子先生の声だ
俺は振り向いて先生の顔を見たいけど振り向けない
俺は、埋まっているから
先生は気にしていないんだろか
先生はうふふと笑った
気にしていないみたいだ
俺は安心した
「忘れないでね、ウル」
そして俺は目を開けた。
灰色の板―天井が見える。
頭がぼんやりする。
先生が何か言ってたような気がするけど、思い出せない。
そうだ
「先生は死んだんだ」
俺は口に出して言った。
そうなると、今のは確かそう、夢だ。
俺は注射の跡を数えながら、いつのまにか眠っていたみたいだ。
どこまで数えたっけ?
足音がして、二人分のそれは俺の部屋の前で止まった。
―血も採ったし、今日はもう用はないはずだけど、なんだろう?
今日子先生がいないから、代わりに話をしてくれるのかもしれない。
でもクレメンザとメガネの人だったら、…いやだな。
そんなことを考えていると、何かをたたきつける様な音がした。
何だ?
その音は十秒くらいし続けて、
ドアが変な音を立てながら少し開いて、止まった。
同時に流れ込んでくる変なにおい。
気持ちわるい。
隙間から手が差し込まれて、ドアを開けようとする。
いやだ。
もう半分開いてしまった。
まぶしくてよく見えないけど、
その奥にある顔を俺は知らない。
鈍い音を立てて、
ドアが開いた。
男が二人入ってくる。
二人とも手に長くて、光るものを持っている。
剣だ。
俺と同じくらいに見える男の方が
―ウル
それを俺に向かって持ち上げて
―忘れないでね
振り下ろそうと
「アシュレー」
俺の声に、剣は俺の鼻先で止まった。
切っ先の向こうで、緑の目が見開かれていた。




