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プロローグ
「処分されたわ」
俺の腕に針をさしこみながらクレメンザは、俺の「先生は?」という質問に答えた。
処分?今日子先生を?でもそれって、ゴミなんかを捨てる時に使う言葉じゃあなかったっけ。
処分、ゴミ、今日子先生、繋がらない言葉達に混乱していると、
「死んだってことよ」
と、クレメンザが舌打ちをしながら助け舟を出してくれた。
「『死ぬ』。わかる?」
「わかる」
知ってる。助け舟、舌打ち、死ぬ。全部先生が教えてくれた。
「もう先生は会いにこれないってことだろ?」
クレメンザは一瞬変な顔をすると、タバコ臭い溜め息をついて、針を引き抜いた。
そして手早く消毒し、採取した俺の血を持って出ていった。
俺は何もすることが無いので、ベッドに座りこみ、腕の注射の痕を眺めることにした。
痕がほとんどわからないのはメガネの男の人の、青っぽくなっているのはクレメンザのだ。




