冒険者ランクってなんですか?
人魚少女レギュラーならず
「ありがとー、バイバイ!」
波間から顔を出して手を振る人魚の少女。
あー、癒しが去ってしまう。
彼女の後ろには大勢の人魚たち。
さすが人魚、海上でペコペコするという人間には困難な行動を容易くこなしてるぜ!
あー、別に謝ってるんじゃなく、俺に感謝してるんだ。
あと、勇者と魔王にも。
なんでも人魚の一族が平和に暮らしていたところに凶悪なモンスターが襲来、なんとか難を逃れてここまで辿り着いたものの、途中ではぐれた者も多く、着の身着のままでの逃走だったため、ろくに食べるものも無い状態。
あの後、さほど時間をかけずに巡り会えた少女の両親からそうした話を聞いた勇者と魔王がモンスター(なんか部分的にしか姿を見て無いがSAN値削られそうな姿を……クトなんとかさんじゃないだろうな?)を倒し、ネコ神官さんが怪我人の治療を行い、俺がおにぎりを振舞うという連携作業。
疲れはしたが、こういう事情ならば多少の無理は仕方が無い、モンスター退治が終わった勇者と魔王まで餓えた人魚たち以上のペースでおにぎりを食ってたがな!
ネコ神官さんも口のおかかおむすび片手にパクつきながらの治療呪文。
口の中に入ったまま呪文を唱えるんじゃなく、せめて飲み込んでからにして欲しかった。
今回のモンスターは相当強かったらしく、勇者が擦り傷を作ってた。
絆創膏で済む程度の傷だがな?
魔王も疲れてたし……。
俺が10以上、ネコ神官さんも2つレベルが上がったし。
レベルが上昇することによって、今回は中華ちまきが追加された。
まあ、おはぎが範囲に入っちゃうんだから、これもありと言えばありだろう。
豚の角煮の入ったものや餡子の入ったもの、玉子の入ったものもあり、おむすびと違ってアツアツの状態で出てきた。
おむすびもなぁ、あったかいバージョンとかもいいよなぁ。
食べてる内に海苔がしんにゃりしてくるのもまた良し。
海苔も付けないあったかい塩むすびとか、それを冷たい麦茶と一緒になんてのもいい。
今後に期待だな。
お茶は相変わらず緑茶しか出せないからなぁ。
かなり高級そうなおいしいお茶ではあるが、熱いものしか出せないし、たまにはウーロン茶や紅茶やほうじ茶や昆布茶なんかも飲みたいところだ。
お味噌汁とかも出せると嬉しいよなあ、なんとかならんかな?
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「ありがとうございます、なにかお礼を」という人魚たちに、上陸しやすい陸地まで送ってもらった俺たちは、久々に地面を踏みしめていた。
漁船はすっかり気に入ってしまった魔王が自分のアイテムボックスの中に。
まあ、貰ったものだし、無断で旅立つ形に成ってしまったが問題は無いだろう。
しかし、漁船を持ち歩く魔王とか……。
その気になればどんな豪華な客船だろうが、海賊船みたいな武装船だろうがゲット出来るだろうに、オンボロ漁船を気に入るとはこの魔王も変わってるよな?
非常に上陸し易い地形をしているにも関わらず周囲に村落どころか人の気配も無いのは「こいつ」が居たかららしい。
植物系モンスターの嫌なところをかき集めて、サイズを100倍にした様な魔樹とでもいうべき存在。
「いい臭いをさせてたのに、実のひとつもつけてないなんて詐欺だ!」と憤った勇者の一撃で地面にしっかりと張った根っこごと振り下ろした剣で真っ二つにされた上に返す刀でで空中に打ち上げられ、「醜いのう」と眉を顰めた魔王の魔法で文字通り根こそぎ消滅した。
「運動したらおなかがすいたな! オニギリくん、まずは東坡肉のちまきに棒棒鶏のおむすび、それとエビチリのおむすびをそれぞれ10個!」
「デミオムライスのおむすびと栗おこわのおむすび、それと牛そぼろのおむすびにデザートでおはぎをそれぞれ15個たのむ」
「わちしはおかか5個と、ツナサラダを3個、それに桜でんぶを2個お願いするにゃ」
「スマ子はスマ子はおはぎそれぞれ1個とでんぶ2個!」
自分の分のハンバーグのおむすびを確保した上でそれぞれの注文に応じる。
レベルアップの度に着々と償還できるおむすびの数は増えてるからな。
今回の人魚たちの件でもそうだけど、、俺一人で災害救助の炊き出し出来ちゃうよな。
出す先から全部食っちゃう勇者が居るからあんまり感じなかったけど、この能力ってかなりのチートだよな?
なんせ「食う」ことに関しては絶対に困らない。
あー、でも湯呑みだけじゃなく、どんぶりか茶碗は欲しいなぁ。
ちょっと食欲無い時なんかは、出したおむすびをお茶漬けにしてしまえば食べ易いだろ?
元の世界に居た時はたまにコンビニの焼きオニギリでやってた。
ちょっと口当たりの悪くなったおにぎりもそうすると食べ易くなるしな。
うん、今度町に行ったら買ってみよう。
あれ??
俺、前に買い物とかしたの何時だっけ?
勇者と一緒にいるとまともに買い物する機会ほとんど無いんだよなぁ。
食い物屋か宿屋しか行かないし、勇者。
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合間合間に適当にモンスターを倒しながら町に到着。
一緒に旅をし始めた頃は、勇者が倒しては放置するモンスターの死体をもったいながって居たネコ神官さんだが、最近では全くきにするそぶりも見せない。
まあ、今は魔王が居るので、勇者や魔王自身が跡形も無く消滅させてない場合で気が向いた時は回収してるんだがな。
ある時に景気良く使ってしまう「宵越しの金は持たない」魔王。
回収したモンスターの死体を冒険者ギルドに売り払いに行くと言いだした。
興味をそそる食べ物が無い限り大人しい勇者は特に異存は無いらしい。
ネコ神官さんは神殿に一度顔を出してくると別行動。
この人、一般人の筈なのにいつの間にか姿を消していつの間にか合流するという技にかけては神業レベルなのだ、こうして断りを入れてから行動する方が珍しい。
まあ、危険や厄介なことが起きる時にいつの間にか姿を消してることが多いので、この町ではトラブルは無いということなんだろう。
俺は勇者や魔王からは逃げられないんで単独行動は不可能。
冒険者ギルドへ同行することに。
えらく久々と言うか、最初に登録してから初めてじゃないか、冒険者ギルドに行くの?
ステータスとか人並み程度にはなってるが、冒険者の中じゃ貧弱なままだよなぁ。
まあ、勇者パーティーの一員扱いされてればランクとか上がってるかもな?
ちょっとだけ期待しつつ冒険者ギルドの入り口を通った。
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冒険者ギルドの登録で登録用のアイテムをチートステータスで破損するという異世界もののお約束を、これまで登録したことが無かった魔王がモンスター買取のために登録をしようとしてやらかした。
でもって事情聴取ということで身分確認のため、冒険者の登録証を見せた訳なんだが、勇者でも魔王でも無く、俺がギルドマスターの部屋と招かれた。スマ子はちゃっかりスマホ形態に戻って寝ているため、同行者は勇者のみだ。
泣く子も黙る(この顔した人間の前で泣き続けるなんて生存本能が欠如でもしてない限り有り得ない)凶悪フェイスのギルドマスターは、俺に対して頭を下げると感謝の言葉を述べた。
俺が勇者と同行する様になってから、各地でのトラブルが減少しただけでなく、治安が良くなったり、産業が活性化したりしている場所が増えているのだそうだ。
前者はともかく(勇者関連のトラブルが減ったってことだろ?)、後者は俺に関係無いんじゃね?
そう思ったのだが、俺が巻き込まれる形で町や村で提供したおにぎりの大盤振る舞い、腹いっぱい食事をしてバカ騒ぎをして住人同士のわだかまりが消えたり、いろいろな具があるおむすびに影響を受けて自分たちの周囲の食材に工夫を凝らして、名産品、目玉商品と呼べる物を開発したりした人間が居るそうだ。
そうした貢献とこれからへの期待もこめて俺のランクは中級冒険者と同等のものになるそうだ。
「本来なら勇者たちと同クラスにしときたいトコなんだがな、ギルドもいろいろとしちめんどくさい決まりごとがあってな、勘弁してくれや!」
と脅してるんだが謝罪してるんだか分からない調子ではあったが、ギルドマスターが頭を下げ、同席していたギルド職員も「本当にねぇ」と融通の効かなさに嘆息していた。
いや、俺は大したことしてないから中級扱いでも十分過ぎるほど十分なんですが?
勇者と同格扱いなんか、逆に真っ平ごめん。
そんな経緯で俺の登録証が新たなものとなった。
中級ともなると今までのものよりもなんかしっかりとした感じ。
「ほうほう、追いつかれてしまったにゃ」
いつの間に合流してたんだ?
「スマ子お腹がすきました、ご主人さまおはぎと栗おこわと山菜おこわと赤飯のおむすびをください!」
スマ子も目をさましたか、え? 勇者がなんで大人しいかって?
次から次へと俺がおむすびを出しては渡してるからですが何か?
ギルマスとの会話中もずっと。
とがめられるどころか感謝の眼差しで見られてたぞ?
後は魔王が合流すりゃ通常営業だな!
主人公のランクが上がりました
冒険者としては棚ボタですが、人類への貢献で言えば史上最上位です