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食べ放題ってなんですか?

レベルアップします




 「おかかにゃ、おかかにゃ、おかかは全部わちしのものにゃ!」


 おかかってマタタビとか入ってないよな?


 なんで、こんな事になってるんだ?




 ◆

 ◆




 ギルドの後、防具とかも買おうかなどと一瞬思ったものの、今のステータスでは余り意味が無いし、そもそも勇者とはぐれなければ問題はないし、はぐれた状態で・・・とかだと単に死ぬまでの時間と苦しみが伸びるだけかと購入は諦めた(まあ、はぐれることが可能なら、逃げることも出来るってことで、その確率に備えるなら世界が突然滅亡することにも備えなくちゃいけなくなる。要はまず有り得ないということ)。



 代わりにという訳ではないが雑貨店へ入り、細々としたもの(特に水袋)を買う事にした。

 というのも、チートでお茶は出せても熱いお茶しか出せないのである。

 冷ますには何かに入れておくしか無いわけだし、勇者のズタ袋を利用させて貰えば重さの心配も無い。

 最終的には売ってるという話の99種類9個ずつの袋を買う事を目標としているが(家だの装備だのに金を使う宛ても無いし、魔術も習得不可能だからな)、どうせ解放してもらえないなら、とことん利用出来る部分では勇者を利用してしまおうと考えたからだ。


 手を洗ったりなども、出したお茶のままでは火傷することになるからな。


 勇者はついてきては時々おむすびを食べている他は自分で買い物をする様子は見られない。


 「保存食とか買わなくていいんですか?」と口にした途端、街の人間に緊張が走ったのをスルーしつつ返答を待ったが、口にいれたおむすびの咀嚼で忙しい勇者は「いらない」という意味で頷くと顔の目の前で手を振っていた。


 なもんで、自分用として干し肉と岩塩を少し購入。

 塩分はおむすびで取れる分で十分だとは思うが、場所によっては塩の入手自体が不可能なトコもあるだろうと手に入る時に買っておくことにした。



 勇者の話では、ここから隣の街まで街道沿いに進み、そこから川を渡し舟で渡るのだという。


 流れが急なのか、川幅が広いのか、どっちなんだろうな?


 いや、ファンタジー世界だから、川の中に危険なモンスターがとか、水の精霊がどうこうなんて話もあるかもしれない。


 ちょっと楽しみになってきた俺だった。




 ◆

 ◆




 向こう岸が霞んで見える。


 川幅が広いってのが答えだったが、そのスケールが想像を超えていた。


 なんせ、渡し舟ってのが5階建てのビルを横に倒した様なサイズ。

 言葉のイメージで、なんとなく小さな、船頭さん一人でやってるような渡し舟を想像していた俺は、アホの子の様な表情を浮かべていたのだろう。

 

 周りの人たちが微笑ましいものを見る様な目で見ている。



 ここまでの道中は、勇者と共に商人の荷馬車に便乗してやってきた。


 「用心棒」みたいなもんかな? などと勇者主体の考えで居た俺だが、あっさりとその予想は覆った。


 商人は三食全部俺のおにぎり頼り、飲み物もお茶頼り。

 

 積荷に水はあったものの、そっちは荷馬車を引く馬専用で、他の樽に入っていた酒は完全に売り物。

 俺の労働が対価だった。


 こういう時はつくづく「スキル制なら良かったのに」と思う。


 モンスター経験値のレベル制なので、何回おむすび召喚しようが、何回お茶を出そうがその行為が成果には繋がらないのだ。


 流石に商人のためのおむすびだけでは気絶はしなかったが、誰かが食べている時に自分が食べないということは無いことに定評のある勇者。ここでも大量のおむすびを消費して、例によって例のごとく俺は気絶した。


 気絶をしていても馬車は進む。


 順調に旅は進み、こうして目的地に到着。


 場合によっては渡し舟の関係で街に滞在する必要があるという話だったが、ちょうど渡し舟も来ていてろくに街を見ずに乗船と相成ったわけだ。


 部屋はラグを貸し出す大部屋と、ベッドのついた個室。


 大部屋でおむすび召喚なんぞしようものなら街での宴会騒ぎの二の舞になり兼ねない。

 俺の支払いで個室を借りた。


 当然の様な顔で勇者も同部屋に入ってくるが、この人の中での俺の扱いってどうなってるんだろうね?

 歩くおむすび自販機?

 俺の側からではオ○Qみたいなもんなんだが・・・。


 いや、この人女性扱いしちゃうのは、世の中の他の女性に対して失礼過ぎるとおもうんだ。

 

 当然の様な顔して固定されたベッドに寝ちゃってるし、今も。


 俺は壁に折り畳みになっているソファというか簡易ベッドというか、まあ、そんな感じのを出すとその上で横になった。




 ◆

 ◆





 「大河蛇だぁあ~!!!」


 慌しく人の動く音と何かゴツゴツと船にぶつかっている様な震動とそして叫び声に俺は起こされた。


 勇者は既に部屋から出ようとしているところだった。



 

 俺も最悪を想定して荷物を全て持つと部屋の外へ出た。





 「蛇ってよりアナゴだよな?」



 勇者が斬りかかっていた「大河蛇」というモンスター。

 個人的には蛇と言うよりアナゴを押したくなる外見をしていた。


 「食ったら美味いんかな?」


 俺がボソっと言ったのが耳に入りでもしたのか、勇者が俄然張り切りだした。



 これで大丈夫だろう、と俺は思ったのだが、周囲の人間はまだ不安気な顔をしている。


 「えっとあの大河蛇はもう大丈夫だと思うんですが、他に何か?」


 近くの人に聞いてみると川面を指差す。


 大河蛇に比べれば小さいが、この船のサイズから考えるとイルカサイズを超える魚が凄い勢いで突っ込んできてはぶち当たっている。


 ちょうど上流側に向けている側面だ。


 流石に河の流れに逆らっては来ないらしいが、逆に片側だけに集中しているのが船の場合まずい。


 うん、これはまずいかもしれん。


 俺はこの世界の魚も元の世界と大して変わらないことに賭けて、右手を水面に向けた。





 ◆

 ◆





 渡し舟の甲板上は時ならぬオークション会場と化していた。


 勇者の倒した大河蛇、やはり美味しいらしく、また牙や皮など素材としての価値も高いとのことで、乗り合わせていた商人だけでなく、他の乗客たちもその肉を少しでも手に入れようと身を乗り出している。


 殊勲者である勇者はというと、俺の隣でおむすび片手に船の料理人に焼いてもらった大河蛇の肉に齧りついている。


 実に満足そうだ。


 俺はというと、なんとかというほどのものでもないがが成功して、プカプカ浮いてきた魚の分け前の山を前に「さーてどうしようか?」と思案中である。



 一般に魚というのは温度変化に弱い。

 なんせ釣った魚に人間が素手で触るだけで火傷の様な状態になるくらいである。

 温度調整が壊れて水槽を全滅させたなんてのも熱帯魚を趣味にしている人間には、比較的起こりやすい悪夢だ。


 なもんだから、あの時、俺は気合最大で河にお茶を放出したのだ。


 最初は「何してんだ、こいつ」と言う目で見ていた周囲も、船の周囲に脅威になっていた魚を含めた大量の魚が浮き始めて、なんとなく俺のやったことの結果なんだろうと気付きだした。

 魚が浮いているってので「毒を使う魔術か?」と一気にドン引きモードになったので、お茶です、飲み物ですと借りた適当な器に入れて飲んで見せたが信用してもらえず、大河蛇を倒し終わった勇者がおむすびと共にお茶を要求して飲んでからはじめて納得してもらえるという状態で、そこで慌ててという感じで船の周囲の魚を手分けして回収しだしたのだ(俺はおむすび要員として勇者に確保されてたからな、魚の回収には参加しなかった。


 でもってスマ子が大人しいな、どこ行ったんだ? と思ってたんだが、部屋で寝たままだったらしく、よだれの付いた顔で目をグシグシと擦りながら飛んできて人の頭の上に座ってからおむすびを要求してきた。


 あの騒ぎで全然起きず、自分の空腹のみしか動じない。

 この子はかなりの大物かもしれん。



 「そういえば、またレベルアップしたのではないか? 是非、次の具を出してみてくれ!」

 

 「今度はすっごく甘いのがいいですね、ご主人様!」


 大河蛇プラス魚の中にもモンスターとして数えられるものが居たようで、確かにレベルアップしていた。


 増えた具は・・・ある意味今の状況にぴったりと言えるかもしれんが、ここで来るか・・・。



 「召喚おかか!」



 「ふむふむ、これは魚を加工したものなのかな? これはこれでなかなかおいしいな!」


 「ちょっと桜でんぶに似た感じのトコもあるけど、桜でんぶの方が好きです、もう一個桜でんぶください、ご主人さま!」



 「こ、こにょ匂いは・・・、お金なら出すにゃ、わちしにもこのおかかってのをくれないかにゃ?」



 なんか一人増えてる・・・。

 って、猫だと?


 人の肩先から首を出して俺の手の中のおむすびをのぞきこんでいたのは、猫の獣人だった。

 猫耳とか猫耳カチューシャとかそんなチャチなもんじゃねえ、正真正銘の猫の頭部を持つネコ娘。

 サイズ的には豹とかと変わらない大きさの頭部なんだが、猫だと恐ろしい感じがしないのは不思議だな?

 ゆったりとしたローブみたいな服着てるから体型とかは分からないけど、首元からは大きな・・・なんかシンボルっぽいものをぶら下げている。



 鼻をひくひくさせて、口元からはよだれが・・・。


 なんか、御預けするのも可哀想。

 お金払うとか常識もあるみたいだし。


 「はい、どうぞ!」


 「こ、これは、美味いのにゃ、美味いのにゃ、これはきっと神様の食べ物なのにゃ!」


 「いや、確かにおいしいがそこまでのものかなぁ。」


 「桜でんぶの方がおいしいですよ!」


 「なら皆他のを食べるにゃ! おかかは全部わちしのものにゃ!」


 「いや、オニギリくんのおむすびは私のものだ!」


 「ご主人様の妖精である私のものです!」



 わーい、モテモテだ・・・・・・俺のおむすびがな!


 いや、いい加減俺も不貞腐れても許されると思うんだがどうだろうな?

 

 

 「ほうほう、旅の神官どのでござったか」


 「スマ子知ってるよ、海と漁師の神様のシンボルだよね、それって」


 「そうなのにゃ、おいしいお魚を恵んでくださる海と漁師さんたちへの感謝の気持ちが極まって神官になったのにゃ!」


 「旅の目的は決まっておるのかな?」


 「今までは決まってなかったにゃ、でもここでおかかに出会ったのはきっと神様のお導きにゃ!」


 「なら私たちと一緒に旅をしましょう、今ならご主人様のおむすびとお茶が食べ放題、飲み放題です!」


 ちょっと待て駄妖精、勝手に食べ放題、飲み放題にしてるんじゃねえ!


 「「「とりあえすおむすびもう一個!」」」


 聞いてねえし・・・。



 こうしてネコ娘神官が仲間に加わった。




ネコ娘(notネコ耳娘)が仲間になりました

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