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救世主ってなんですか?

レベル10ごとに特殊なおむすびの予定です



 

 「ありがとう、あんたは救世主だ!」

 街の食堂の親父に俺は心からの感謝を捧げられていた・・・・・・。




 ◆

 ◆




 あの後、勇者に先導された俺は砂漠から街に来ていた。

 なんの目印も無い砂漠、良く街の場所が分かるものだと思ったら、勇者いわく「食べ物の気配がする」そうだ。


 アビリティやスキルと言っていいレベルの食い意地って・・・・・・。


 俺に近づいてきたのもそれ使ったせいじゃないか?



 道中遭遇したモンスターは、この世界に落とされた当初の俺が見たら絶望する様な存在だったが、さんざん勇者の無双っぷりを見た後だと「経験値どれくらいかなあ」としか感じなくなっていた。


 スマ子もレベルが上がってスマートフォン形態をとれる様になった。


 この世界の情報が見られるサイトに繋がったり、登録した相手(スマホ形態で相手にスマホを接触させるだけで登録出来る)と遠話出来る機能が付いていたりと実に意味不明な高性能さだが、タップやフリックでくすぐったがったり、耳元でささやいてきたりと精神的な面で多大な問題を有していた。


 なまじ高機能な分、残念っぷりが目立つ。


 基本、俺の周りを飛んだり、頭に乗ったり、肩に座ったりしている。

 重さがスマホ本来の重量と変わらないのでいいが、重かったら掴んで放り投げているところである。



 「ご主人様、私、桜でんぶ~!」

 「私はツナマヨがいいな!」


 味覚がお子ちゃまなのかスマ子は甘いものが好きで、おむすびでは桜でんぶがお気に入りだ。


 こうして俺たちは街の入り口におむすびを咥えながら辿り着いたのだが、街の活気とはまた別のざわめきがあることに気付いた。


 街の住人の視線は俺の横に居る勇者に向けられている。

 

 勇者に対してありがちな「畏怖」とか「羨望」とか「期待」とかだろうか?



 なんか違う気がする・・・。



 「警戒」と「諦観」と・・・「絶望」?


 

 「今のうちに早く自分の分の食い物を確保するんだ!」

 「最悪、保存食でも!」

 「あああ、またメシ抜きの恐怖が・・・!」

 「バカ野郎、臨時休業の札なんかで誤魔化される相手じゃないぞ!」

 「ひえええ、勇者さまだぁ!!!!」

 「うん、ダイエットだと思おう。お金も使わずに済むし、一石二鳥よね(グス)」

 「そ、そんな、せっかく冒険から帰って街での打ち上げ楽しみにしてたのに・・・!」

 「母ちゃん、腹減ったよぉ~!」

 「うしっ、商売も済んだことだし、さっさと隣の町へ行くか!(トホホ・・・)」




 「なかなか活気のある街であろう?」

 そーですね。

 「この街の食堂のメシがまたなかなかのものでな?」

 そーですね。

 「おお、ここだ、ここ。オニギリくんには世話になったからな。ここは私のおごりだ、好きなだけ食べてくれ!」

 そーですね。


 街の人間の絶望と恐怖の視線を浴びながら俺たちは食堂に入った。



 

 ◆

 ◆




 「とりあえず・・・メニューのここからここまでを全部!」


 いい笑顔で注文する勇者だがウェイトレスの笑顔は引きつっている。

 「とりあえず」で頼む分量じゃねーよ!


 この調子で街にいる間、あらかた食らい尽くして、それで食料ろくに持ってなかったんだろ?

 確かに店の中も従業員もよさ気な店ではある。


 「出来上がるのを待っている間暇だな、というわけでオニギリくん、おむすびを・・・そうだな、鳥そぼろを出してくれ!」


 いや、ここ食い物屋でしょ? 持ち込みというか、そういうのってマズいんじゃ?

 

 「なーに、この街の人たちは気のいい人ばかりだ、気にしなくていい!」


 いや、ちょっとは気にしろよ!

 鈍感系の考え無しじゃなきゃ勇者なんてやってられないのかもしれないけどさ!


 「私は桜でんぶ~!」


 分かったから目の前を飛び回るな、ウザい!


 仕方なしに桜でんぶを3つ、鳥そぼろを30個ほど出す。


 出し終えた瞬間には既に一個減って29個になっている勇者のおむすび。


 手は2つめに既に伸びている。


 抱え込むように桜でんぶのおむすびを食べているスマホ妖精。

 元々電池は食う奴だったが、おむすびもその体のサイズにしては良く食べる。


 カウンターの奥から「元は冒険者とかじゃね?」といったガタイのいい店主が出てくる。

 やべ、これ怒られる?

 それならまだいいが、有無を言わさずぶん殴られるかも!?



 そう思った俺の手をがっしりと痛いくらいに握ると親父は俺に感謝の言葉を述べたのだった。





 ◆

 ◆





 親父の料理をおかずにおむすびをかじる勇者。

 警戒して店に入ってこなかった他の客も入っていて、その表情は明るい。

 窓から見える街を行き交う人々も、ごく自然な様子だ。



 この明るさが俺のもたらしたものだと思うと実に感慨深い・・・・・・わけがあるか、ボケェッ!


 今じゃ100個はおむすび出せる俺だが、街の連中まで食いたがったために3回気絶する羽目になったのだ。

 1回目の気絶で遠慮しろよ!


  

 現在の俺のレベルは13、出せるおむすびの具は更に昆布、海苔、牛肉の佃煮シリーズが増えて10種類に達している。

 レベル10を超えた時にはスペシャルとして「焼きおにぎり(醤油)」の召喚が可能になった。


 嫌がらせを兼ねて納豆を時々出しているのだが、みんな結構平気で食べている。

 味の濃い親父の料理と一緒なせいかもしれない。


 そういや欧米人だと海苔にも抵抗感あるんだっけか?

 ここの人間の見てくれはそっちに近いが、中身は全然違うらしい。


 まあ、そうだよな、モンスターだって食うんだ、どっちかって言うと日本人や中国人に近いかもしれん。


 ん?

 モンスター?

 さんざん親父の料理食った後で教えてもらった。

 うん、から揚げっぽいものや、シチューみたいなのは文句なしにうまかったからな。

 美味いは正義だろ?


 タコやナマコやホヤ食う日本人が言えた筋合じゃないだろうし・・・。


 フグの肝や毒キノコすら食うんだぜ、食い方や安全な範囲研究してまで日本人は。

 猫でさえ食い殺される数まで大量発生したネズミを食い尽くすんだぜ、中国人は。



 原型留めてなけりゃ平気だろ、モンスターくらい?

 人間に近い形態のものは勘弁して欲しいが・・・。



 親父の料理があることもあって、塩むすびの人気が一番高かった。

 納豆はダメな人間はダメだが、平気な人間は全然平気。

 梅干は女性より男性の方が苦手だという人間が多かった。

 男の子は牛肉佃煮や鳥そぼろ、女の子は桜でんぶを良く食べていた。


 入れ替わり立ち代りで、その内酒まで振舞われて、俺まで飲まされた。

 熱いのと痛いので味なんか分かりゃしない。

 気付けばおむすび召喚以外で、この世界で初めて意識を失った俺だった。





 ◆

 ◆





 「♪~」

 スマホのアラームが鳴ってる・・・止めないと・・・。


 「きゃっ、どこ触ってるんですか、ご主人様のエッチ! ・・・どうです、ちょっと萌えました、今の言い方? あれれ~、二度寝ですか? ガン無視ですか? 大音量でエロゲ電波ソング流しちゃいますよ?」


 そ、それは勘弁!


 といった感じでスマ子に叩き起こされ、「待ちかねたぞ!」と言う視線が、本当に口以上に物を言っちゃってる勇者におむすび召喚させられ、思っていた以上に善人だった(それだけ追い詰められていたのかもしれないが)街の住人たちが集めた「おむすび代(一か月分の宿代相当だという話)」受け取った俺は、この世界に来て初めて少し充実した気持ちになっていた。


 財布の中身≒心の余裕である。


 相応する金額から考えて、服を何着か買ってしまっても問題はないだろう。

 この調子で勇者に引きずり回される(俺がこの力を失いでもしない限り逃がしてはもらえないだろう・・・うん)と、あっという間にこの制服もボロボロになるだろうし、それにやはり他の人間が着ている服とかなり異なっているので目立つのだ。


 

 初めての街でもどこに何があるか分かる優秀なナビであるスマ子の案内を受けて(勇者は特に目的も無いらしく、ついてきて時々おむすびを要求している)、服の店に到着する。


 お店の女店員なのか店主なのかは、お姉さんと呼ぶにはちょっと苦しいが、おばさんと呼んでしまうのも可哀想という微妙な年齢に見えた。



 下着は出来るだけ肌触りのいいものを、服はなるたけ頑丈そうなものを選ぶ。

 スマ子に聞けば値段も適正だということで、重ね着出来るものも含めて5着と3本と靴下4足、下着3セットという大量購入を果たす。

 おまけという事で服を入れる麻っぽい袋をくれた。

 おねだりされたのでおむすびを渡すと更に布製の帽子をくれた。

 この調子でおむすび提供をすれば、今後の買い物でも色々融通してくれるかもしれない。

 別の街でもやってみよう。


 当然の様に勇者まで手を出して食べていたのは、もはや当然という感覚になっている自分の慣れが怖い。

 着替えて帽子まで被ると一気に目立たなくなった。


 所持金が4分の1ほど減った。

 一般の人たちは古着やら、生地を買って自分で仕立てたりをしているそうなので、元の世界の感覚で言うと割高ではあるが適正なのだと言う事も納得出来る。



 次に行くのは冒険者ギルド。

 勇者のお供という形になっているから、この街に入る際も特には問題にならなかったが、この世界では身元不明の怪しい人間なのである、俺は。

 はぐれたり、一時別行動を取ったりなどという事も有り得るので、ここで登録しておいた方がいいだろうと、勇者とスマ子の意見が一致したこともありギルドに入る。


 テンプレの初心者に絡むガラの悪い連中などにも遭遇しなかったのは、勇者のお供であるというだけでなく、おむすびの大盤振る舞いで「いい奴」と認識されているかららしい。

 

 登録カウンターのお姉さんにも「あら、おむすびの人」と言われてしまった。

 テンプレ的に水晶球の上に手を置いて、出てきたステータス表示のあるカードを元に説明を受ける。


 「最近まで病気で寝たきりだったのですか?」などと言われてしまったのは、どうやら俺の肉体的ステータスはこの世界の一般的な人間に比べて半分程度しかないかららしい。


 道理でレベルアップしても強くなったって感じがしない訳だ。

 この世界の未訓練の一般人 ≧ 元の世界のトップアスリートってことらしい。

 そりゃ、モンスターとも戦えるってもんだ。

 鍛えた冒険者などは元の世界からすると低レベル者でも超人なのだ。

 今の俺は女の子にも簡単に負けるステータスなのだとか・・・。



 一緒に居た勇者がその辺、全く気付いて居なかったのは、自分が規格外過ぎて他の人間の低さの程度が分かっていなかったかららしい。

 「いや、私はあまり人のそうしたステータスをジロジロと見る方ではないのでな」とか言っても、お茶やおむすびという自分の実益につながる部分はしっかりと把握していたことからして、全く説得力が無い。




 レベルが13というのは、もはや初心者とは言えないレベルだそうで、それがこのステータスという事はレベルカンストしても中級冒険者程度にしかステータスは上がらないということだろうと気の毒そうにお姉さんは説明してくれた。

 

 諦めてはいたが「無理」と断言されるとやはり悲しいね。


 魔法はそもそもMPが全く無く、意味不明なOPがあるという事で、これまた使える見込みがないそうだ。


 ヒットポイントは高いので、死ににくくはなっているのが救いだ。



 せめて一般人並のステータスまでは上げたいなぁ・・・・・・。



レベルアップもあって、元の世界に居た時よりは主人公も強くはなってるんですけどね。本気出して子どもと引き分ける程度のステータスです。

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