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終焉の部隊  作者: 一夜
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第2話


 高層ビル内への入口に着くと澪次はその場に屈み、頭上で2、1、3と指を切り替え後ろにいる隊員に合図すると隊員は頷きロックされている錠部分に起爆剤を装着する。

 そして2、3歩後ろに下がり爆弾を起爆させ扉を破壊した。

 扉の端から中の様子を伺い、異常が無いことを確認すると、澪次は前の隊員の肩を叩き、それを合図に総員が中に入っていく。


「――全員ライトを消し、暗視眼鏡を装着」


 澪次の指示のもと、総員は手に持っている明かりを消し、鉄帽に取り付けられている暗視眼鏡を装着する。

 これほど強固な防衛システムが作動している建物内にゾンビが侵入していることはまずない。

 だとすれば中にいるのは死者ではなく意思を明確に持った人間――それもここに避難している議員を狙っているバイオテロ側の可能性が高い。

 相手が人間ならば感染こそはしないものの、知能を持つ相手ほど厄介なものはない――そう考えた澪次は敵に気配を悟られないように暗闇でも視認できる暗視眼鏡を選んだのだ。


「これよりoperation2に入る。アレンを2番とし、それぞれバディを組んで各階の把握に当たれ。こちらに敵意のあるもの、もしくはテロだと断定できる者に遭遇した場合に限り、対象をクリアすることを許可する」

「隊長は?」

「俺は単独で行動させてもらう。少し確かめたい事ができたのでな。――なに、もしものことがあれば君らに助けてもうさ。たかだか階が一つ違うだけだからな」

「了解。お気をつけて」

「そっちもな。team名はδ《デルタ》とする。では総員、operation2を開始しろ!」

「「「了解(ラジャー)――」」」


 全員がそれぞれの階に上がっていったのを見届けると、澪次はそのまま足音をたてずに奧へと足を進めていく。

 中へ侵入したとき、突き当たりから発せられた地面を蹴るような音を澪次は耳にしていた。

 それはこちらの様子を伺っていた誰かが…澪次に気配を気づかれた瞬間、その場から駆け出したような音だった。


「まさか………ね」


 単独行動により口調を戻した澪次は、気配が消えた方向を見つめると、アサルトライフルを構えその方向に向けて歩き出した。

 

【――δ《デルタ》3よりδ1へ。四階の様子は異常無し、これより五階の潜索に移る】

「こちらδ1、了解した。二人とも異常ないか」

【――δ3-1,2共に異常ありません】

「了解。引き続き任務に当たれ」

【了解――】


「――ま、アレン達なら大丈夫かな。戦争ならともかく、並の訓練しかうけてないテロに負けるわけがない」


 そもそも国連軍や国連機動隊にいる人間は、各国の特殊部隊や警察の精鋭のみで構成されていて、云わば世界の抑止力と言っても過言ではない。

 それもあるが、澪次はそれ以上に部下に対する信頼が強かった。


 突き当たりの扉に着くと鍵が掛けられていたため、今度は錠を爆破するなんて事はなく、そのまま扉を蹴り飛ばして中に侵入する。

 そのまま銃を構えながら辺りを見回すが、敵がいないため、一息吐くと銃口を下に下ろした。


「――ッ!?」


 突然後ろから発せられた風切り音に気づき、一歩後ろに下がると同時に襲ってきた蹴りを銃で受け止める。

 そこから相手を回り込むようにして半回転し膝蹴りを放つが避けられる。

 そしてその勢いを利用され、そのまま宙に身体を放り出され、澪次は一回転して着地した。


(テロリストではないようだけど。……それにしても暗視眼鏡無しでここまで闘えるなんて、なんて身体能力)


 澪次はすかさず距離を詰めながら銃弾を放つが、向こうは予想していたのか蹴りを入れられアサルトライフルが弾き飛ばされた。

 それでも冷静さを失わずにハンドポーチからハンドガンを取りだし、瞬発的に相手に向ける。



 ――――一瞬の間、二人は同じようにハンドガンを互いに向けて対峙していた。

 そして何かに気づいたのかお互いに笑いあうと、そのまま銃を下ろす。


「まさかとは思っていたけど。やっぱり君か、深紅」

「わっちはここに議員が避難してるって情報聞いたもんやから来たわけやけど、澪次が来てるとは驚きやったわ。いきなり銃ぶっぱなしてくるし」

「いや…いきなり攻撃してきたのは君だけど」

「――いややなあ。その時点ではまだ誰か分からんかったから仕方なかったやん。だから澪次も応戦したんやろ」

「それはまあ……そうだけど…」


 澪次の撃った銃音がビル内に響いたのか、突然扉が開かれ澪次と深紅はほぼ同時に側の壁裏に飛び込んだ。

 そしてその瞬間に二人に向けて銃弾がとんでくる。――恐らくテロリストによるものだろう。

 二人は壁裏に伏せた状態で手にしたハンドガンでテロリストに応戦する。


「あはは…やっぱ発砲したのはまずかったかな?」

「当たり前や!思いっきり位置知られてもうとるやん…」

「ごめんごめん。でも今はこの状況をどうにかしないと……僕たち死ぬよ」


 単純な戦闘力では澪次達の方が上ではあるが、壁と敵に挟まれた今は地形的に圧倒的に不利だ。

 このような部屋では銃器を武装した人の場合、数が多い方が断然有利だからだ。


「ま、その心配も杞憂に終わるけど」


 そう澪次が微笑むと、扉から一つ上の階にいたカインとティアーズが飛び込みテロリストの後ろから銃撃を浴びせた。


「クリア!そっちはどうだ?ティアーズ」

「こっちも問題ない。クリアだ」

「よし、オールクリア!隊長、無事で……す、か?」


 周囲に敵がいないことを確認すると、カインは澪次の安否を確かめるために振り向くがフリーズした。ティアーズも何やら気まずそうな様子でこちらを見ている。


「あ、あの…そのですね隊長。その『一端この部屋をでるぞカイン。どうやらお邪魔だったみたいだからな』んあ!?急にどうしたんだティアーズ!」


 何かを言いかけたカインだったが、ティアーズに襟首を掴まれて部屋の外へ引っ張り出されていった。


「――何やったんやろうな?」

「……多分この事じゃないかな」

「ん?」


 深紅が下を向くと、澪次が顔を紅くして彼女を見ていた。銃撃を避けるために二人して同じ壁裏に飛び込んだからだろうか、深紅は澪次の上に乗っかり、澪次の顔の半分はその胸に埋まっていた。


「あ、ごめんな」

「いや、別にいいが……普通は男が上に乗っかるイベントなのにな。――ん、どうした?何を笑っている」

「澪次って取り乱すと口調変わるしなぁ。もしかして照れてるやろ」

「…………もうっ」


 拗ねてそっぽを向いた澪次の頬を、深紅は笑いながらぷにぷにとつついていた。

 そんな彼女に少し睨みながらも特に抵抗しないところからお互いをそれなりに信頼していることが分かる。


「それにしてもよくどこの組織に属さないで、この生物災害地域でのりきっていけるよね…」

「そんなん人それぞれやって。わっちは昔から暗殺やら偵察などの方面で動いてきたからそういうのには慣れっこやし」

「そういうもんなの?」

「そういうもんや」


 そんな話をしながら扉を開ける二人。するとそこには意味深な眼差しでこちらをみているカインにティアーズ。


「――まだいたの?」

「だってその人が誰か気になりますし」


 あ、やっぱり?――と澪次は苦笑した。


「彼女は僕が日本にいた頃の幼なじみだよ。何でか知らないけどこうして今も似たような道を進んでるわけだけど」

「主に情報収集を日常としてるフリーの兵士とでも思ってくれたらええよ」


 何でもないことのように話しているが、澪次の周りは明らかに凄い面子が揃っている。

 ルート提供のassistantに秀でているつぐみ、国連警察機動隊のはぐれ狼と称されている秀久、そしてフリーの暗部深紅。

 二度あることは三度ある。これは比喩であり四度も五度もありえる。

 この次は誰が出てくるのかと隊員二人は思ったのだった。



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