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春樹の病状

 春樹が手術室に入っていくのを、夫と一緒に見送ると、あまりの不安に思わず夫の腕にすがりついていた。夫は大丈夫だよと自分の不安も押し隠すかのように、すがりつく私を支える手に力を込めた。私たちは、不安を振り払うかのように極力明るい話題を取り上げて話したり、退院後の春樹をどこに連れて行ってやろうかとか、そんなことを話していた。手術が予定時間より2時間ほど遅れて終わり、終わった。まだ麻酔のさめきっていない、春樹を病室に残し、夫と2人手術の結果を聞くために、カンファレンス室に行った。


 森野先生から聞いた話は、私たちの希望を打ち砕く残酷なものだった。


 「春樹君の病状ですが、思ったより進行していて、いくつか転移が見られました。取れる病巣はすべて取り除きましたが、若いため進行も早く、今後の状態を注意深く見守っていく必要があります。」


 「治るんですよね?あの子は、春樹は大丈夫ですよね?」


 「今は何とも言えません。見えないがん細胞が転移していた場合あっという間に全身に広がる場合もありますし、今回取りきれていたとしても、再発の可能性も捨てきれません。私も精いっぱい力を尽くさせていただきます。」


 私と夫は、先生から聞いた話に動揺を抑えきれず、落ち着いて春樹と向き合わねばと思いながらも、春樹が麻酔で朦朧としている姿を見て、涙がにじむのを抑えきれなかった。幸い、朦朧としていたために、春樹におかしかったと指摘されても、ごまかすことができたのが幸いだった。


 「あなた、私春樹のためにできることはすべてやるわ・・・。春樹は死なない。絶対に死なせない。」


 「もちろん僕も、春樹のためにできることはすべてやるつもりだ。でも、君が倒れたら春樹にも心配をかけてしまうことになる。僕たちは春樹のために、最善を2人で尽くしていこう。」


 家に戻り、夫とそう改めて誓った。

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