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呪われた刻印を刻まれたはずなのに、どうして溺愛されてるの?  作者: 夕凪 瓊紗.com


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【14】美ノ葉の末路



――――side:美ノ葉


美しい着物も簪も、全て私のもの。

思えば昔から、義姉はいけ好かなかった。


「お父さまはお母さまを愛していたのに」

しかし退魔師の大家と言う家柄上、政略結婚は必至であった。霊力の強い女を迎え、霊力を引き継ぐ長男を生んだ。

それもお母さまは必死で耐えた。


しかし2人目の長女が生まれた時。長女には霊力がなかった。それでも成長と共に開花するかもしれないと、院斎家は生まれたばかりのお義姉さまと御形家男児との婚約を結ばさせた。


「屈辱よ」

そうお母さまは告げる。

あれ以来お父さまはお母さまに夢中になり、遂にはお母さまとの娘……私を生んだ。そして私はお父さまの霊力を受け継いだ!


――――なのに。


お父さまは御形家との婚約の座を私に変えてくれなかった。


「何で。何で何で何で!何でなの!」

世の中は不公平だ。

霊力の強い娘が嫁ぐ方がいいに決まってるのに!お父さまは帝がお認めにならないと言うだけ。

お詫びにかわいい着物を買ってくれたけどそれだけ。


どんなにかわいい着物を買ってもらっても、簪を買ってもらっても。


御形家の未来の嫁として優遇されるのはお義姉さまで、正妻の座に座るのはあの女。


たけど転機が来た。


あの女が死んで、お母さまが正妻になった。私は院斎家のお嬢さまになれた!


お父さまは私をお姫さまにしてくれたし、お兄さまはあの女の息子だけど私に夢中になってくれた。


私、ずっとお兄さまが欲しかったの。

あの女の上等な着物が欲しかったの。

簪が欲しかったの。

お父さまは私に全部あげろと言った。

お兄さまは私のものになった。

お兄さまも私に全部あげろと言った。


お義姉さまのもの、本来の私のものになるはずだだたもの、全部ぜーんぶ手に入れたのに。


御形家との婚約だけは手に入らなかった。だから……いたずらしてやったの。

そうしたら思いの外上手くいった!

お義姉さまは何と禍神の刻印を刻まれて帰ってきた!

呪われたのよ!


ああ、そして私は御形家に……。


だけど御形家本家の事件の報せの後、御形家は復興してもなお私を許嫁にはしなかった……。


何で何で何で!


私から私のものになるらずだったものを奪ったお義姉さまも、私を選ばなかった御形家も。


「思い知るがいい」


そうほくそ笑んでいた。


しかしその翌朝。


ドタドタと屋敷内が騒がしい。


※※※


――――side:伊吹


その日私は禾守さまとともに久々の実家を訪れていた。


「今日は分家や門下たちによる一斉捜索だ」

「うん、みんな怒ってる」

「神月を連れてこなかったのは正解だな」

この魂の憤りに、神月くんはこわがってしまうだろうから。


一行と共に美ノ葉の部屋に近付くと呑気な声が聞こえてくる。


「んもぅ、何なのよ」

乱暴に襖が蹴破られ、大量の男衆がなだれ込む。


「きゃーっ!ご、強盗!助けて!お兄さま、お父さま、お母さま!王輝さまぁっ!」

「王輝……やはりあの男と通じていたか!この悪女め!」

武官が憎らしげに告げれば、美ノ葉が寝間着のまま乱暴に外に連れ出される。

その時、美ノ葉と目が合った。


「お義姉さまあぁぁっ!」

「……美ノ葉」

あなたは相変わらず贅沢をしていたのね。部屋の中は豪勢な品や着物、簪に装飾品で溢れている。 


「伊吹夫人、お母上の形見があればお持ちください」

そう分家の方が告げる。

「いいのですか?あなた方への院斎家はツケを……」

「あなたも我々と同じ、奪われた側ですから」

「ありがとうございます」

やはりお母さまの形見は美ノ葉の部屋に散乱している。

いくつか選別するが……足りない。


「売られちゃったのか、義母の元にあるのか」

「ならそこも捜索しよう」

「うん、禾守さま」

義母の部屋も調べ終わり、外に出てみれば。


そこには美ノ葉と同じく寝間着のまま外に連れ出され縄に繋がれる義母、お父さま、お兄さまの姿がある。


「た……助けて、おにぃ……さま……お兄さまは、私のもの。ずっと欲しかった、私のお兄さま!」

やっぱりそうだったのね、美ノ葉。そして私に対して怨みを持つお兄さまはまんまと美ノ葉の手に……。


「あの女だ!あの女が悪いんだ!」

お兄さまが叫ぶ。


「わ、私は被害者だ!血も半分しか繋がってない!あの女にいいように利用されていただけ!大罪人と通じていたのはあの女だけだ!」

「お兄さま……?何を言ってるの?」

うそ……お兄さまが美ノ葉を裏切る?いや、あれは自分だけ助かろうとしている。 


「お、お父さま!」

「私は……知らない。緋扇王輝に手を出したのは美ノ葉だ。私の知らぬ間に、手を出した」


「何を言ってるのお父さま!?王輝さまを紹介してくださったのはお父さまじゃない!」

「知らない!あれは我が家に厄災をもたらした悪女だ!」

「何よ……それ。それは禍神に魅入られたお義姉さまのことでしょ!?」

また私のせいにするのか……。少なくとも王輝の件は彼の策略だろう。


「お、お母さまは……」

「わ、私も知らない。美ノ葉は男癖が悪くて、若い男と見れば手を出して……」

「お母さままで何を言ってるの……?知らない、そんなの知らない!」


「大罪人王輝に加担した悪女め!」

美ノ葉の首と手に枷が嵌められる。


「王輝さまが何をしたって……」

「あの男は6年前、継子でありながら嫡子の座を奪おうと御形家本家をあやかしに襲わせた。現当主兄弟以外を皆殺しにしたのだ」

「そん……な。王輝さまが御形の人間……?さらには私と同じ継子?」


「それがどういうことか院斎門下に潜んでいたとは。当主よ、お前もその罪からは逃れられんぞ」

「そんなぁっ」

お父さまの顔が引き攣る。

「私は……私は関係ない!」

義母が叫ぶ。


「このような悪女を生んだ責任は取れ!」

「ひぃっ!」

お父さまも義母も手ひどく連行されていく。


「き、聞いてくれ」

「お兄さま?」

「わ、私の妹は、」

「私を助けてくれるの?」

「伊吹だけだ」

「は……?」

今この瞬間だけ、私は美ノ葉と姉妹だったのだと感じた。


「伊吹のために耐えてきた!後妻母娘に操られる父から、後妻母娘から、伊吹を守るために媚を売っていた!全ては伊吹のためだ!」

「ウソ、ウソよ、ウソ!お兄さまは私のものだったはずなのに!」


「伊吹に話せば分かってくれる!伊吹が私を救ってくれる!」

お兄さまが私を見る。いや、私を見られても困るんだけど。

「そんな、ウソ、ウソ」


「お兄さま!お兄さまは私のお兄さまで……」

「私は伊吹の兄だ!」

「そん……な、どうして。どうして。私は所詮お義姉さまに奪われる人生なの?」

奪ったのはあなたの方なのに。

「何もかも、人生も、お姫さまの座も花嫁の座もお兄さまも……?」

お姫さまって……私はお姫さまじゃないけれど。


美ノ葉は呆然としながらお父さまたちと力なく連れられていく。


※※※


――――美ノ葉たちは何週間にも及ぶ取調べと不潔でろくな食べ物もない貧相な暮らしをしたそうだ。

その間も美ノ葉は。


『こんな牢屋……まるで座敷牢じゃない』


『これはお義姉さまの復讐なの。ここに入れられるべきはお義姉さまであり私じゃない』


『きっと厄災の神に取り入って私にさらなる厄災を降りかけるつもりなのよ!』

そう、喚き続けたらしい。


そしてここは再びの院斎家。


「来なさい」

門下の男衆が乱暴に美ノ葉を連れてくる。


「院斎家本邸!私、帰って来られたんだ!」

美ノ葉はぱあぁっと顔を輝かせるが。


しかし院斎家の表札が変わってる。気が付いていないの?家の中の調度品もない。以前までは豪華な品で埋め尽くされていたのに。

さらには美ノ葉の縄も未だに解かれない。


「痛い痛い、放してよ!早く私の部屋に……私の着物をっ!こんな襤褸着たくない!早くかわいい着物に着替えたい!」


しかし通されたのは大広間。私と禾守さまも新たな当主となったおじさまに通される。


「さて、わざわざご足労いただいて申し訳ない、禾守さま、伊吹夫人」

「いえいえ」 

「お招きありがとうございます」


「さて、この娘美ノ葉についてだが、残念ながら王輝は単独犯でこの娘は父親の命で婚約関係にあったに過ぎない」

「ほら……!お父さまはウソをついたけど、あれはお父さまの命だってバレてるじゃない!もう私は自由の身よ!」

美ノ葉は顔を輝かせるが。


「院斎家は当主一家により火の車、さらには門下や分家から金を毟り取った。その金を夫人の保護のためと嘯いていたが実際は後妻と美ノ葉の贅沢に消えていた」

「う……ウソよ、そんな」


「黙れ、罪人が」

「さっきから偉そうに何なのよ、おっさん!私は院斎家の娘で……」

「院斎家は門下や分家への詐欺横領でお家お取り潰しの末、家財や着物簪贅沢品は売り払い、被害にあった家々に分配された」

「私の着物!簪をよくも!」

「それもこれも、全て分家や門下の金で揃えたもの。返すのが流儀であろう。尤も伊吹夫人のお母君の遺品は伊吹夫人にお返しした」


「感謝いたします、当主さま」


「は?今何て?」

もしかして美ノ葉、知らずに来たの?


「当主って何よ」

「院斎家が取り潰しになったため、我が緋扇家が二大退魔師家の片翼を担う。ま、嫡男は分家から招くが」

「ちょっと待ってよ!それって王輝さまの……」


「院斎当主があくどい事を企んでいたのは分かっている。例えば大罪人の王輝を匿う……とな。だからわざわざ子どもがいないからと言う体で院斎当主から王輝の養父母を引き受けたのだ」


「感謝するぞ、当主殿」

禾守さまが笑む。


「敵を騙すには味方からとよく言う」

「いえいえ、元々我が一族は直神の祀られた社が地元なのです」

「ほう?」

「は……?スガミが祀られた?何の話よ」


「ですからもちろん存じておりますとも」

「だから何の話よ!」

美ノ葉が叫ぶも緋扇当主は意に冠さない。


「しかして、この娘の両親は既に田舎に送り村八分で暮らさせております。このような者共を生んだ罪として一門の役目は果たしたいと存じますが、この娘とその兄に対して我々は厄災を恐れている」

「そうよ……厄災、厄災よ!」

美ノ葉ったら、今度は何を言い出すつもりなの?


「お義姉さまは禍神に取り入って私に厄災を擦り付けようとしているのよ!」

いやいや、そんな乱暴な。と言うか取り入るって……。恐る恐る禾守さまを見れば……失笑していた。もう、禾守さまったら……!




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