表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
好感度999まであと少し──俺だけ“関係スキルツリー”と“巻き戻し権”持ってる世界で、最強ヒロインたちを攻略中  作者: 風白春音


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/37

第35話:「境界の出会い──観測者《ゼクト》と始まる真実の攻略」


仮想の空は静まり返り、まるでこの空間そのものが息をひそめているかのようだった。


俺──桐谷攻真は、VRロビー《セフィロト・ロビー》にログインしていた。

スキルツリーに現れた“彼女”──蓮華から「会わせたい人物がいる」と告げられてから、一日。現実世界で何をしていても、その言葉が頭から離れなかった。


(妹じゃない……誰なんだ?)


あの真剣な眼差し。彼女が“妹”と別の誰かを指していたことは、直感でわかった。

そして、俺は今、その答えに辿り着こうとしている。


足元には光の紋章が浮かび、空間がわずかに歪んだ。


「よく来たわね、攻真くん」


蓮華が姿を現す。深い青のローブに身を包み、淡く光を帯びた瞳がこちらを見据えていた。


「紹介するわ。……彼が、“観測者”よ」


次の瞬間、蓮華の背後に白銀の輝きが差し込んだ。

浮かび上がったのは、年齢も性別も掴ませない──中性的な姿の存在だった。


銀糸のように滑らかな髪。淡く光を湛えた透き通る瞳。衣装は左右非対称のローブで、まるで存在そのものが“どちらでもない”ことを示しているようだった。


「……観測者?」


「うん。“ゼクト”とでも呼んでよ。発音はなんでもいいし、呼び捨てでもかまわない」


中性的な声が、柔らかく空間を包む。


ゼクトと名乗ったその存在は、ふと右手をかざすと光に包まれ──姿が消え、代わりにマスコットのような存在が宙に浮かんだ。


「今はこっちの姿でVR内をうろついてるよ。マスコットモードってやつ。親しみやすいでしょ?」


変わった見た目と軽妙な語り口──だが、確かにその目だけは本質を見透かしている。


「君の持ってる《関係スキルツリー》──本来は誰にも見えないんだよ。君が異常……いや、“特異点”って言うべきかな」


「……知ってるのか?」


「全部じゃない。でも、この世界の“歪み”と“選択”が、君によって加速してることは、確かだよ」


ゼクト──その存在は、ふわふわと漂いながら、俺の周囲を一周してから正面に戻った。


「そして、蓮華は……君に“選んで”ほしいと思ってる。彼女自身じゃなく、“未来”を、ね」


その言葉に、蓮華はわずかに目を伏せた。


「妹を治すために、私は……“存在の権利”を譲った。家族以外から、私の存在は認識されない。それが代償だったの」


「記録上、私は存在しない。だけど──レイジには、まだ私が“姉”だと認識できる。関係が強いから。血縁という強固な繋がりが、唯一の例外を許してくれたの」


「君もね、攻真くん。スキルツリー保有者だから。“関係”の可視化と干渉が可能な君には、私の存在が見えている」


──なるほど。だから俺は、彼女の存在を“確信”できた。


「妹の病気は、確かに今は小康状態よ。でも──治ったわけじゃない。ゼクトは“一時的な干渉”を約束してくれたの」


「つまり、永続効果ではない」


「そう。だから……私は君に託したの。私じゃなく、“未来”を救える可能性を持つ、君に」


その瞬間、俺のUIに緊急通知が走った。


──【スキルツリー更新】──

《蓮華ルート:深化段階へ移行》

【スキル条件達成】新スキル獲得可能──


表示された新たなスキルに、俺の目が釘付けになる。


【新スキル:《コマンド:巻き戻し改変》】

──“任意の対象またはイベントを、前提条件を改変した状態で時間巻き戻しできる”

(発動条件:高負荷/分岐に対する強い意思決定が必要)


(これって……ただの時間巻き戻しじゃない。選択肢そのものを書き換えられる?)


画面全体が銀色に染まり、スキルアイコンが波紋のように広がっていく。

背筋が震える感覚。だがそれと同時に、胸の奥で何かが灯った。


(これが……“選ぶ力”)


俺はそっと、スキルに手を伸ばす。


「さて、そろそろ現実に戻ってもらおうか」


ゼクトの声が、空間に響く。


「そのスキルがあれば、君は蓮華の過去に干渉できる。“もしも”の条件を書き換えて、蓮華の代償そのものを“再定義”することも、理論上は可能だ」


「……それって、VRMMOでいう……イベントリセットみたいな?」


「おっ、察しがいい。そう。世界全体がスキルとルートで動いてるってことに、ようやくプレイヤーが気づいてきたね。物語じゃなく、“ゲーム”なんだよ、これは」


──意味深なセリフを残し、ゼクトはくすりと笑った。


【ログアウトまで──5秒】


画面が暗転する寸前、ゼクトが静かに言った。


「もう戻れないよ。君は《姉ルート》を選んだ。

──それは、星花や梨璃栖、アマリエの“未来”を、手放したってこと」


……警告。


いや、これは“最終通告”だ。



現実に戻った俺は、静かな夜の自室でスキルツリーを確認する。


そこには新たな分岐が浮かび上がっていた。


【現実世界:蓮華ルート──交差する現実と仮想】

《進行可能イベント:姉と再会する》《過去の代償を知る》《ゼクトの真意を探れ》

《新サブイベント:システムの鍵を入手せよ》


背筋がぞくりとするほど、美しい──けれど危険なルートが始まろうとしていた。


──これはラブコメの皮をかぶった、もう一つの物語。

その真実に、俺はようやく触れ始めたのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ