第33話:家族を繋ぐ記憶──美しき魔法使いと、開かれた心
期末テストが終わり、ようやく訪れた静かな夕方。
俺は一人、気晴らしを求めてVRゲームの世界にダイブしていた。
複雑に絡み合う三人のヒロインとの関係。禁忌ルートの影。エニグマの警告。
星花の不安げな表情が頭から離れなくて、どうにも現実から距離を置きたくなった。
俺は人気のない森の端にログインし、ふうと一息ついた。
──そのときだった。
「……珍しいわね。こんな場所に人が来るなんて」
木々の間からふわりと現れたのは、ローブを纏った魔法使い風の女性アバター。
髪は銀に近い灰色、瞳は淡い琥珀。美しいという言葉では足りないほどのオーラを纏っていた。
「君は……プレイヤー?」
「ええ。でも今日は、ただ空気を感じたくて来ただけ」
そう答える彼女の声はどこか儚げで、それでも芯の強さを感じさせるものだった。
名前も表示されない彼女に、俺はなんとなく興味を持ち、少しの間並んで歩いた。
すると、彼女の視線が俺の左手首に留まる。
「……そのアクセサリー、どこで手に入れたの?」
見下ろせば、レイジにゲーム内で貰ったアイテム──銀の編み込みブレスレットが輝いている。
「これ? この前、レイジってプレイヤーから貰ったんだ。『試作品だけど、似合いそうだしやるよ』って」
彼女の表情が一瞬で変わる。驚き、納得、そして少しの緊張。
「あなた……レイジと、遊んでるの?」
「うん、たまにだけど。一緒にボス戦もやったし、探索も何度か」
「……やっぱり、そう。あなた、あの子の“友達”なんだ」
「えっ……君、もしかして……」
「姉よ。名前は──まだ言わないけど」
静かに笑ったその表情に、俺は確信する。
──この人が、レイジの“姉”だ。
次の瞬間、視界が一瞬白くなり、システム通知が走る。
【分岐発生:新ルート『家族を繋ぐ記憶』】
《姉の異変》《妹の沈黙》《交差する兄弟の絆》
【特別ミッション発生:“家族を救え──二つの鍵を探せ”】
※このルートはリアルと仮想、両世界にまたがるマルチレイヤールートです
(……マジか。姉ルートってことか?)
慌てる俺に、彼女──いや、レイジの姉は小さく笑った。
「弟が……少し変わったの。昔より無理をしてるように見えるのに、それを隠そうとする。あなたがあの子に関わってくれるなら、少し、話してもいいかも」
「……わかった。俺にできることなら、協力するよ」
その瞬間、またも通知が浮かぶ。
【姉ルート:好感度表示開始】
好感度:12/999
(……まさか、ここでも好感度があるとは)
そして、スキルツリーが光を放つ。
【新スキル獲得:メンタルリンク】
《対象の深層感情を一定確率で感知し、行動予測・対話補助が可能になる》
※効果は“心のつながり”によって増減します
(深層感情……これは、確かにデカいスキルだ)
見上げた空の中、仮想世界の夕日が滲んでいた。
新たな分岐。交差する家族の想い。
今度はこのルートを、俺が繋いでいく番だ──
お読みいただきありがとうございます!
今回は新章突入──期末テストを終えた主人公が、VR空間で思わぬ“新ヒロイン”と出会う回でした。
彼女は、あのレイジの“姉”。
現実では引きこもり、でも実は超絶美人でスタイル抜群……だけど、どこか影を感じさせる女性です。
VRでの偶然の出会い、そしてスキルツリーによって判明する家族関係。
新ルート【家族を繋ぐ記憶】、そして特別ミッション“二つの鍵を探せ”が始まりました。
次回から、リアルと仮想にまたがるこのルートがどう展開していくのか、お楽しみに!
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