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好感度999まであと少し──俺だけ“関係スキルツリー”と“巻き戻し権”持ってる世界で、最強ヒロインたちを攻略中  作者: 風白春音


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第32話:影差す未来──禁忌の兆しと、三人の予兆

 期末テスト初日。

 数学IIの問題用紙を睨みながら、ペンを握る手が止まる。


 1問目は三角関数の恒等式の証明、2問目は対数の計算。

 見慣れた形式のはずなのに、今日はやけに集中できない。


(……やっぱり、気になってるんだ)


 斜め前の席に座る星花の背中に、視線が吸い寄せられる。

 彼女の手は問題を追って動いている。けれど──


(元気、ない……)


 その姿勢も、髪を耳にかける仕草も、どこかいつもより弱々しい。


 あの夜以来、星花とは特別な時間を共有した。

 守ると誓い、隣にいた。

 でも、それ以来──星花は少しだけ距離を取るようになった。


 教室で目が合っても、すぐに逸らされる。

 会話も、短く終わる。

 ……まるで、何かを恐れているみたいに。


 そんな違和感を引きずったまま、俺は残りの問題をなんとか埋めた。



 昼休み、廊下で偶然アマリエに呼び止められる。


「桐谷くん。星花さんのこと……気づいてるよね?」


 俺は小さくうなずく。


「やっぱり……彼女、今朝から少し変だった。笑顔が、どこか作り物みたいで……」


「昨夜、星花のことでちょっとあってさ。たぶん、それが……」


 全部を語るわけにはいかなかった。

 でも、アマリエは何も聞かず、ただ言った。


「無理はしないでね。……あなたが、誰かの重荷になるような人じゃないって、私は知ってる」


 そう言って笑ったアマリエの横顔が、やけに優しくて、少しだけ救われた気がした。



 放課後。下駄箱の前でスマホを見ると、りりすからのチャットが届いていた。


『星花ちゃん、大丈夫? 今日ちょっと朝のメッセージ元気なかった気がして……』

『もし何かあったなら、私にできること言ってね。私は“友達”だから』


 星花ちゃん──と呼ぶその文面に、りりすの優しさが滲んでいた。


(……俺だけじゃなくて、みんなもちゃんと見てくれてるんだな)


 そう思えたことで、胸の中に少しだけ希望が灯る。


 そのときだった。


 視界が一瞬、ノイズに包まれた。

 スキルツリーのUIが、勝手に開く。


【分岐更新:三者交錯(予兆)】

《恋と守護》《観測者の影》《未選択の選択肢》


 さらに、メッセージアプリに新着通知が届く。


『from:Enigma

「“選ばなかった想い”は、やがて歪む。君が見ていない未来で、禁忌はすでに始まっている」』


 ぞくり、と背筋が凍る。


(歪む? 見ていない未来……)


 視界の端に、一瞬だけ“赤いルートライン”が浮かぶ。

 それは禁忌ルートの兆候──あの夜、星花を守ったとき見たものと同じだ。


 俺は、スマホを握る手に力を込めた。


(星花……俺は、絶対に君を守る。どんな未来でも)


 そう心に誓った瞬間、スキルツリーの中心に、わずかに新たな光が灯った気がした。


 運命はまだ、定まっていない。

 交錯する想いの先に、俺たちは何を選ぶのか。

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