第31話:「揺れる光──それでも、君と歩いていたい」
朝の陽射しがカーテンの隙間から差し込み、星花の寝顔をそっと照らしていた。
昨夜、俺の隣で不安そうに「そばにいて」と言った彼女は、今は静かに寝息を立てている。
……ほんとは、ずっとこうしていたいと思ってしまう。
本音を言えば、ずっと隣にいたかった。
でもそれは、彼女を守るためじゃなく、自分の気持ちを満たすためになってしまう気がして。
星花が起きる少し前、俺は静かに布団を抜け出し、リビングのソファへ。
きっとこれでいい。
星花にとって、安心して眠れた夜になるのなら、それだけで充分だった。
*
「……送ってくれてありがとう」
朝食を済ませたあと、俺は星花を家の前まで送ってきた。
ストーカーの件があった以上、一人で帰らせるなんて論外だった。
だから、当然のように隣を歩いた。
「こっちこそ、泊まってくれてありがとうな」
「ううん。……昨日のこと、きっと、ずっと覚えてる」
門の前で小さく微笑んだ星花の顔は、どこか名残惜しそうだった。
俺も、そうだ。
彼女の不安に寄り添えたことは、本当に──嬉しかった。
「じゃあ……また学校でな」
「うん。また」
名残惜しさを押し込めるように手を振り、星花は家の中へと戻っていった。
その背中を見送りながら、俺は胸の奥に灯った感情をそっと抱きしめる。
(絶対に、守るって決めたからな)
そう、自分に言い聞かせながら。
*
家に戻る途中、スマホに新着通知が届いた。
『from:百合栖梨璃栖
ねぇ、攻真くん……昨日、星花と一緒だったんだよね?』
一瞬、胸がざわつく。
……どうしてそれを?
星花の周囲に何者かの気配があったことは事実だ。
でも梨璃栖は別の学校のはず──何かを掴んでいる?
思考が追いつかないまま、続けて通知が届く。
『お願い。星花のこと、ちゃんと守ってあげて』
その一言に、思わず立ち止まった。
(……お前も、気づいてるのか)
スキルツリーの表示が揺らぎ、新たな分岐が浮かび上がる。
【分岐更新:三者交錯(予兆)】
《恋と守護》《観測者の影》《未選択の選択肢》
──そして。
スマホに届いた、もうひとつの通知。
『from:Enigma
“それでも、君は選ぶんだね──まだ間に合うけど”』
エニグマの警告が、心にざらつきを残す。
けれど、もう迷わない。
俺は、誰かを傷つけてでも──
「選ぶ」と決めたんだ。
それが正しくなかったとしても。




