第28話:「君を守る夜──眠れぬ距離と、心の鼓動」
星花が俺の家に泊まることになった。
ストーカーからの不気味なメッセージ、そしてあの禁忌ルートの警告……。
でも、そんな不安もすべて振り払うように、俺は彼女に言った。
「俺が、守るから」
それだけが、今の俺にできることだった。
*
一度俺が付き添って星花の家に行き、両親の許可を得て、着替えや歯ブラシなど泊まりに必要な一式を持ってうちに戻った。
「……ほんとに、お邪魔しちゃってごめんね」
玄関をくぐった星花は、図書館での服装と少し違う、淡いピンクベージュのスカートと白いカーディガン姿で、小さな声でそう言った。
その声の調子から、どこか緊張が伝わってくる。
そんなとき、奥から俺の母さんがひょこっと顔を出す。
「あらあら、昨日ぶりだね星花ちゃん。また来てくれて嬉しいわ」
星花はぱっと顔を上げて、すぐに少し照れたように笑う。
「こんばんは。昨日はお世話になりました……今日はちょっと、特別な事情で……」
「聞いてるわよ。攻真がしっかりしてて、おばさんも安心したわ」
その言葉に、星花の肩の力がふっと抜けたのがわかった。
そう──母さんは、昔から星花を知っている。俺の幼なじみで、小さい頃からずっと一緒に遊んでいた仲だ。
「そういえば、あなた小さい頃、うちの洗面所で泡まみれになってたこと、覚えてる?」
「えっ、そ、それはもう忘れてくださいっ」
真っ赤になって慌てる星花に、母さんがにやにや笑う。
そのやり取りを見て、俺も自然と笑っていた。
「晩ごはん、ちょっと多めに作ってるから、一緒に食べていってね。……あ、そうそう」
母さんが手をたたくようにして言った。
「星花ちゃんの好きだった夜ごはん、ちゃんと覚えてるわよ。小学生のとき、うちに泊まりに来て“ハンバーグとオムライスどっちも食べたい!”って言ってたでしょ」
「えっ……! そ、そんなの、昔の話じゃ……」
顔を赤くしながらも、星花はどこか嬉しそうに笑った。
「今日は特別な日でしょ。だから、特別メニュー。おかわりもあるわよ?」
「……はい。いただきますっ」
*
夕食は、煮込みハンバーグとふわふわオムライス、にんじんのグラッセ、あっさり味のポテトサラダとコンソメスープ。
「……これ、ほんとに全部……」
一口食べた星花の頬がふわっとゆるんだ。
「やっぱり、この味……落ち着く」
母さんは嬉しそうにうなずいて、にこにこと言った。
「昨日も思ったけど、星花ちゃん大人っぽくなったわよね。攻真、ちゃんと守ってあげなさいよ?」
「だから昔の話蒸し返すのやめて……!」
俺がうめくと、星花がまたくすっと笑った。
その笑顔は、昼間よりもずっと柔らかくて、どこか甘い。
(……よかった。ちゃんと、笑ってくれてる)
*
風呂から上がった星花は、俺が貸したジャージに着替え、リビングに戻ってきた。
髪はまだ少し湿っていて、ゆるく下ろした状態で、いつもより穏やかな雰囲気をまとっている。
「ありがと。……なんか、ちょっと落ち着いたかも」
「ベッド使っていいよ。俺はソファで寝るから」
「……ううん。ソファ、私でも寝られるし」
「いや、そこは譲れないから」
「……ふふ、やっぱり優しいんだね、攻真くん」
その笑顔が、なぜか胸に刺さった。
ずっとそばにいたはずなのに、こんな表情は初めてだった気がする。
ふたりでホットミルクを飲みながら、星花はぽつりと呟いた。
「……わたしって、めんどくさいよね」
まただ。この言葉。
「めんどくさくなんて思ったこと、一度もないよ」
そう返すと、星花は少しだけ驚いた顔をして、それから静かに目をそらした。
「星花は、不安なとき、ちゃんと俺を頼ってくれる。それって、信じてくれてるってことだろ? それが……俺は嬉しい」
その瞬間、視界の端で、またあのスキルツリーが揺らめいた。
【関係スキルツリー更新──星花ルート:共鳴イベント発生】
《守る決意》《共に過ごす夜》《距離0.5mの信頼》
【好感度上昇:+???】
【禁忌ルート:干渉微弱化──抑制進行中】
《変動要素:感情選択》
(想いが、ルートを変える?)
「ねえ、攻真くん……」
星花が、そっと俺の袖を引いた。
「今夜は、そばにいてくれる……? ……こわい夢、見そうで……」
その声はかすかで、でも確かな意志を含んでいた。
「ああ。絶対に、そばにいるよ」
そう答えて、そっと星花の手を握る。
そして夜は、静かに、でも確かに――
二人の心を近づけながら、更けていった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
今回は星花との“お泊まりイベント導入回”でした。
いつもよりも少し静かで、でも大切な想いが交錯する夜を描いてみました。
楽しんでいただけたなら嬉しいです。
次回はいよいよ、星花との「距離0.5mの夜」──お楽しみに!
今後の更新の励みになりますので、
評価・ブックマーク・感想などぜひよろしくお願いします!




