第26話「夜のログイン──交差する“家族”の記憶」
期末テスト勉強会が終わり、家が静けさを取り戻した夜。
俺はベッドの上でスマホを握りしめながら、考え込んでいた。
(……レイジからのチャット、気になるな)
昼間の勉強会中に届いたメッセージ。
あの親友アバター、レイジからの相談──『姉と妹のことで話がある』という一文。
俺はヘッドセットを手に取り、深く息を吐く。
「……行くか」
そして、ログイン。
視界に広がるのは幻想都市。
どこか現実と似て非なる、もう一つの世界。
ログイン直後、通知がポップアップする。
『from:レイジ
場所、変えてない。いつものとこで待ってる』
俺はうなずいて、レイジの待つ場所へと向かった。
彼は塔の中庭で、空を見上げながら立っていた。
「来てくれて、ありがとな。悪いな急にメッセージ送って」
「いや別にいいよ、俺も気になってたし。姉と妹のことって……リアルの話?」
レイジは小さくうなずき、真剣な目で語り出す。
「最近、姉さんと妹の様子がおかしくてさ。特に姉の方。急に部屋にこもるようになったり、俺に対してもよそよそしくて……昔はすごく仲良かったのに」
「妹の方は?」
「……逆に、何も言わない。俺のこと、避けてる感じ。前はそんな事なかったんだけどな……」
その言葉に、俺は胸の奥が少しざわついた。
自分と妹の関係とも、どこか重なる。
その瞬間、俺の視界に“関係スキルツリー”の通知が現れる。
【分岐発生:新ルート『家族を繋ぐ記憶』】
《姉の異変》《妹の沈黙》《交差する兄弟の絆》
(やっぱり……スキルツリーは、恋愛だけじゃない)
思わず息を呑む。
「……お前の話、他人事とは思えないよ」
そうつぶやいた俺に、レイジは少し驚いた表情を見せたあと、笑った。
「やっぱり、お前ってちょっと不思議なやつだな」
その言葉に返すように、空を見上げる。
「今日はありがとな。少しだけど心が軽くなったわ」
レイジが俺にお礼を言う。
「別に大したことはしてないって。またいつでも相談乗るよ」
俺はそう心から思ったことを口に出す。
すると――視界の端に、赤黒い警告が一瞬だけ点滅した。
【禁忌ルート:一時接続検出──警戒状態】
見るだけで胸の奥が締めつけられるような感覚。
そして、メッセージが届く。
『from:Enigma
「“禁忌ルート”の扉が、また一つ軋んだよ」』
(また……エニグマ)
不吉な一文に戸惑いながらも、俺の中にはひとつの確信が生まれつつあった。
このゲーム、このスキルツリー──
ただの“恋愛攻略”なんかじゃない。
過去も、家族も、運命も──すべてが繋がっている。
そして最後、システムメッセージが表示された。
【特別ミッション発生:“家族を救え──二つの鍵を探せ”】
※リアルと仮想、両世界にまたがるマルチレイヤールートです
深く、静かに、物語は新たなステージへと進み始めていた。




