第25話:「期末と青春──四人の勉強会と、動き出す絆」
「へぇ、これが桐谷くんの家かぁ……意外と普通、って言ったら失礼かな?」
「……いやまあ、普通だと思う」
日曜の昼下がり。俺の部屋には、天翔星花、アマリエ・ユスティーナ、そして百合栖梨璃栖の三人が勢揃いしていた。
期末テスト直前、俺の提案で“勉強会”を開いたわけだが――想像以上に華やかになってしまった。
「ふふっ、攻真くんって案外きれい好きなのね。床もピカピカだし」
「こら、アマリエさん。いくらでも褒めていいけど、勉強に集中してね」
星花が軽くツッコミを入れると、アマリエが肩をすくめる。
「もちろん。じゃあ、まずは数学から始めましょうか。桐谷くん、問題出してくれる?」
「了解。えーと……」
俺は参考書を開いて問題を読み上げつつ、時折みんなのノートを覗いた。梨璃栖は少し不安そうな顔をしている。
「やばいかも……関数系、ちょっと苦手なんだよね」
「大丈夫、教えるよ。そういうの得意だから」
「……ありがと。攻真くん、ほんと頼りになるね」
さらっと言ってくるその一言に、俺の心臓が微妙に跳ねる。
(なんか空気が甘くなってないか?)
そんな中、リビングから声がした。
「攻真~、みんなの飲み物とおやつ置いといたわよ~」
「うん、ありがとう!」
俺の母親だ。気さくで明るい人だが、怒ると怖い。
空気を読んで部屋に入ってこないのは凄く助かる。
リビングに全員でお礼と挨拶に向かった際
とても気さくでそれでいて丁寧な対応をしてくれてた。
「お母様、とてもお綺麗で優しそうな方だったわね」
「そう? ありがと。まあ、あの人は無敵だから……」
俺がぼそっと呟くと、星花が笑いをこらえる。
その後も勉強会は順調に進み、途中から恋愛話や趣味の話に発展していった。
「でさ、桐谷くんって……どんな子がタイプなの?」
梨璃栖が言った瞬間、全員の視線が集中する。
「えっ……あー……その、なんていうか……優しい子?」
曖昧な返答しかできず、場の空気が微妙に沸いた。
(いや待て、これは罠だろ……!)
その時だった。
──《関係スキルツリーが更新されました》
視界の端に、一瞬だけメニューが表示される。
《新分岐:三人の想い──交差する心模様》
(やっぱり来たか……)
恋と友情の狭間で揺れるスキルツリーは、少しずつ複雑さを増していた。
──ピロン。
スマホが鳴った。
ゲーム内チャットアプリから通知。差出人は──レイジ。
《今夜、ちょっと話せるか? 姉と妹のことで、相談がある》
その短い一文に、俺は背筋を伸ばした。
(姉と妹って……やっぱり訳ありなんだよな)
すぐさま返信する。
《夜ログインする。場所指定して》
それを送った直後、スキルツリーにまた異変が走る。
──《新ルート:レイジ攻略ルート(姉・妹含む)》が追加されました。
(親友ルート……それに、姉と妹まで!?)
俺の世界はまた少し広がっていく。
だが、そこで終わりではなかった。
──“星花ルートがトゥルーエンドだと思ってる?”
突如として画面にメッセージが浮かぶ。
送り主は、「エニグマ」。
あの、謎の情報通。
(……また来たな)
その文字の背後に、赤い警告のような映像が一瞬だけ表示される。
《※未確認分岐──“禁忌ルート” 開放条件不明》
それは、ほんの一瞬だった。
でも確かに見えた。
(禁忌ルート……?)
思考が渦巻く中、星花の声が現実に引き戻す。
「桐谷くん? 次の問題、お願い」
「あ、ああ。ごめん、すぐ出す」
俺は問題集をめくりながら、再びこの日常の中に戻った。
でも、胸の奥に広がったざわつきは、消えなかった──。




