第22話:星花ルートの裏側──“エニグマ”が見た未来
クロスリンク・パス──あの運命の選択イベントが終わって、今日で二日。
教室には平穏が戻ったように見える。でも、俺の中ではずっと、ざわついた何かが残っていた。
天翔星花との距離は、確かに縮まった。放課後のあの言葉や、そっと寄り添った時間。ふと目が合えば、照れくさそうに笑ってくれるようになった。
(でも──まだ、完全に繋がれたわけじゃない)
恋人、という言葉にはまだ手が届かない。でも近づいている。確かにそう感じられるのに、胸の奥にはわずかな不安もある。
一方で、百合栖梨璃栖とアマリエ・ユスティーナ。
梨璃栖からは、昨日「またね」というだけの短いチャットが届いていた。スタンプも絵文字もない、それだけ。でも、なんだか妙に胸に残る。
アマリエとは朝、昇降口ですれ違っただけ。声はかけてこなかった。でも、手に持っていた本が震えていた気がしたのは──気のせいだろうか。
(俺は……彼女たちをちゃんと見られてるか?)
そんな思いを抱えながら、昼休み、スマホを開くと──メッセージが届いていた。
送り主は、昨日VR内で出会ったあの少女。ハンドルネームは──《エニグマ》。
⸻
《星花ルートが“トゥルーエンド”だと思ってる?》
え?
あまりに唐突な問いに、スマホを持つ手が止まった。
続けて、もう一行。
《ま、気になるなら“影の観測者”の未解放分岐、見てみたら?》
まるで俺のスキルツリーを直接覗いたかのような書き方。いや、それだけじゃない──そのワード、確かに今朝スキルツリーを見た時、確かに新たな枝がうっすらと浮かび上がっていた。
《未解放:影の観測者ルート》
どうやって解放するのかもわからない。だが、今までのどのルートよりも……冷たい雰囲気をまとっていた。
その瞬間、視界にノイズが走った。
一瞬だけ、画面に「禁忌」の赤い警告文字。そして──スキルツリーの底に沈むような漆黒の枝が、一閃、映った。
(今の……なんだ!?)
再びスキルツリーを開いても、それはもう消えていた。ログにも、履歴にも何も残っていない。
ただ、その痕跡だけが胸をざわつかせる。
⸻
午後の授業中、ノートを開いていても頭に入ってこない。
エニグマのあの言葉、そして一瞬だけ映った「禁忌」の分岐。
(星花ルートがトゥルーエンドじゃない? じゃあ、本当の“真実”はどこに──)
心の奥で、何かがゆっくりと軋み始めた。
このゲームのような世界で、俺はまだ──全てを見ていないのかもしれない。
──選ばなかった道。その先に、本当の真実があるのだとしたら。
……知りたい。怖くても。
その時、スマホが微かに振動した。画面には、エニグマからの新たなメッセージが届いていた。
《君の“選択”は、本当に“自由”だったと思う?》
その問いかけは、まるで心を覗くような、静かで──冷たい声だった。
──To Be Continued.




