第19話:運命が交差する刻──想いは、ただひとつじゃない
《現在選択中ルート:天翔星花》
《関係スキルツリーに新たな分岐が表示されました》
《選択肢:昼休みに話しかける/放課後に連絡を入れる/何もしない》
《“何もしない”選択時:好感度変化なし。ただしイベントフラグ未解放》
(選ばなきゃ──想いを伝えるには、行動しかない)
そう思った直後だった。
「桐谷くん」
静かな声が背後から届いた。
振り返ると、金髪の少女──アマリエ・ユスティーナがそっと手紙のような小さなメモを机に置いた。
《放課後、少しだけ話せますか? お茶でも──アマリエ》
文字は整っていたけれど、どこか揺れているようにも見えた。
返事をしようとして、スマホが震える。
《梨璃栖》からのメッセージ。
《星花ちゃんに負けないくらい、私も攻真に会いたいよ──ね?》
この数日で、いくつもの感情が重なり合った。誰かを選ぶということは、誰かを選ばないということ。それが、こんなにも苦しいなんて。
(何もしない、なんて選択は……許されないんだな)
──
昼休み。
教室の隅で星花が本を読んでいる。窓の外へ、時折視線を向けて──何かを待っているようにも見える。
近づこうとして、また通知が走った。
《関係スキルツリーに特異イベントが発生しました》
《三者共有運命イベント“クロスリンク・パス”開始》
《一定時間内に選択:星花/アマリエ/梨璃栖》
《各ルート進行により、それぞれ異なるエンディングへ分岐します》
(っ……!)
ステータス画面に表示されたスキルツリーは、これまで見たどの構造よりも複雑だった。
これまでは薄暗かったアマリエのアイコンも、今は鮮やかな蒼色に輝いている。
星花のアイコンは金に。梨璃栖のアイコンは情熱的な紅。
画面下には、2つの警告アイコンが浮かんでいた。
《スキルポイント発生:確定》
《巻き戻し:無効》
(……選んだら、戻れない)
胸が締めつけられる。
ただの好感度イベントなんかじゃない。これは──“運命”だ。
──
「桐谷くん?」
アマリエが、少しだけ不安そうに覗き込んでくる。彼女は微笑んでみせたが、その瞳の奥は揺れていた。
──そして星花。秘密の場所で俺を待っていてくれた、あの夜。
あの静かな夕暮れの中で見せた涙も、笑顔も、全部覚えてる。
梨璃栖の画面には、新たなメッセージが追加されていた。
《“選んでくれるって、信じてる”》
(……ほんとにズルいな、みんな)
誰も傷つけたくない。選びたくなんてない。
──でも、選ばなければ、何も得られない。
俺は、そういう場所に立たされているんだ。
──
新たな選択肢が、画面の中央に浮かび上がる。
《ルート確定まで:00:01:59》
タイマーが赤く点滅を始めた。まるで、心臓の鼓動をそのまま画面に映したように。
《選択肢:天翔星花/百合栖梨璃栖/アマリエ・ユスティーナ》
指が、震える。
誰か一人を選ぶたびに、誰かの気持ちを遠ざける。
でも。
──もう、逃げない。
“選ばなければ、始まらない”。
俺の視線は、3つの名前のどれかに吸い寄せられていた。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
第19話では、いよいよ「三者共有運命イベント」が本格始動しました。
これまで築いてきたそれぞれのヒロインとの関係が、ついに交差する瞬間。
主人公・桐谷攻真に突きつけられる“選択”は、単なる恋愛ではなく、運命の分岐点として描きました。
特に意識したのは、「選ばなければ始まらない。でも、選ぶことが一番苦しい」という矛盾です。
誰かを思えば、誰かを傷つけてしまう。
それでも前に進むためには、逃げずに選ばなければならない──そんな葛藤を感じ取ってもらえたなら嬉しいです。
そして今回ついに名前が表示された「クロスリンク・パス」──
物語としても、スキルツリーとしても、大きな転機になります。
次回、第20話ではこの“選択”の続きが描かれます。
攻真が選ぶのは誰なのか?
そしてその選択の先に、何が待っているのか──
三者三様の想いが、さらに複雑に、そして深く絡み合っていきます。
次回も、ぜひお楽しみに!




